ファッションヘルス

第四章 やはり京都

第百二十三話「始動」

 俺がどれだけヤル気になったところで、出来ることは限られている。風俗店における店長というのは絶対的な存在で、それに抗うことは許されない。店長は雲の上の存在、俺は地面にひれ伏す平社員だ。だから、俺は、ただ、一生懸命に仕事をこなすしかない。「ナ...
第四章 やはり京都

第百二十話「グループ」

 ファッションヘルスの新人の仕事は、トイレ掃除に始まり、精子まみれのタオルの入った袋の運び出し、そして、女の子たちのパシリ。とはいえ、早番で出勤している女の子は、たったの三人しかおらず、来客数もさほど多くないから、運ぶタオルも少ないし、パシ...
第一章 東京

第二十話「十万円」

 「もうちょっと何か俺の自己紹介とかさせてくれても良いのにな。」と思いながら、便器を磨く。数日前に小便をしたトイレを、俺が掃除しているのかと思うと、ついついニヤけてしまう。俺の歌舞伎町の裏の世界の歩みは、トイレ掃除から始まった。ピカピカにし...
第一章 東京

第十九話「裏方」

 大学受験のために来た東京で、初めて訪れた新宿歌舞伎町は、華やかで煌めいていて、でもアンダーグランドの匂いがして、怖い街だった。もう何度目かなんて分からないけど、いまだに威圧感を感じなくはない。行き交う人たちを見ながら「あのオッサン、ヤクザ...
第一章 東京

第十八話「米」

 失恋のショックなんて何ひとつ無かった。俺は日々、新しい女の子と出会い、ひと晩を共にする生活を続けている。週に三回はファッションへルスに通い、週一回はメタル専門のライブハウスに出入りし、週末には克己と一緒に競馬場に出掛ける。 失恋のショック...
第一章 東京

第七話「大丈夫。」

「アキコちゃんって、めっちゃ綺麗やねん。」「思い切って告白したら、どう?」「絶対に彼氏おるわ。おらんかっても俺なんか無理やわ。」「いないかもしれないでしょ。」「そら、そうやけど。」「ヒロくん、話がおもしろいし、優しいし、大丈夫だってば。」「...
序章 上京

第五話「マイ」

 服を脱ぎながら俺は「今、受験のために東京に来てて、ちょっと息抜きで遊びに来た。明日も早稲田の社会科学部の試験があるから。」と、聞かれてもないのに、自分が今置かれている状況を説明した。「しっかり疲れをとって、明日のテストも頑張ってね」と元気...
序章 上京

第四話「出会い」

 ソファー席に俺ひとりになってしまった。ふと、東京という初めての土地に来て、ひとりになっている自分に寂しさを感じる。大学入試のために東京に出てきて、明日も朝から試験だというのに、俺はいったい何をやっているんだろう。本当に今、俺はここに居て良...
序章 上京

第三話「ワンダラー」

 少し小走りで次の曲がり角まで向かい、左側の通りを覗き込んだ。思っていたよりも細い路地だけど、この通りで間違いなさそうだ。道幅2メートルくらいの薄暗い路地には海鮮料理屋が立ち並んでいて、エビや魚を焼いている煙がモクモクと充満しているその先に...
序章 上京

第二話「老け顔」

 ニキビ面でオッサンみたいな老け顔の自分が、好きじゃない。 俺の顔は母親に似ていると親戚からは言われるが、母親に似ていてオッサン顔というのが一体どういうことなのか、俺には理解できない。ラグビー部の主将であることを前面に押し出して、なんとか付...
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