アキコ

第四章 やはり京都

第百六十話「ストラップ」

 京都の人間なら誰でも知っている割烹料理屋のカウンター席を予約しておいた。白いシャツに、流行りのローライズのパンツを合わせたミカは、いつもより大人びて見える。ミカなら、どんな店に連れて行っても恥ずかしくない。「今日も、綺麗やな。」「ありがと...
第四章 やはり京都

第百十四話「汚れ」

 京都の老舗映画館「八千代館」には、定期的に通っている。新京極と裏寺町通を繋ぐ細い小道にある、知る人ぞ知るこの映画館は、いわゆるハッテン場と呼ばれる場所になっている。男性との出会いを求める男性が集まる夜の社交場と言えば、分かってもらえるだろ...
第二章 京都

第七十七話「別れ」

 あの日以来、シズエには会っていない。同じ病院のなかで別の個室に移っただけだから、その気になれば、俺のことを見つけ出すのは容易だったはずだ。それでも、シズエが俺の前に現れないのは、全てを察したからだと思う。シズエと俺は、一緒にいることによっ...
第一章 東京

第十八話「米」

 失恋のショックなんて何ひとつ無かった。俺は日々、新しい女の子と出会い、ひと晩を共にする生活を続けている。週に三回はファッションへルスに通い、週一回はメタル専門のライブハウスに出入りし、週末には克己と一緒に競馬場に出掛ける。 失恋のショック...
第一章 東京

第十七話「すっぽん」

 咄嗟に「違うねん。」と言った。でも、窓の外にいるアキコの耳には届くわけがない。急いで窓を開けようとしたとき、アキコが「サイテイ」と言った。もちろん、アキコの声は聞こえないんだけど、間違いなくアキコは“最低”と言った。「誰?だれ?」と何度も...
第一章 東京

第十六話「肩越し」

 ひとりの女は熟睡していて、もうひとりの女は電話で俺と話している。つまり、二人とも俺の姿は見えていないし、俺を挟んで両側に対峙していることには気づいていない。とにかく気持ちを落ち着けよう。焦ったら負けだ。「ねーねー、ヒロくん。聞こえてる?」...
第一章 東京

第十五話「ツイてる男」

 完全に飲み過ぎた。昼過ぎに渋谷の駅前で待ち合わせて、男だらけで飲み始めた。「昼から飲むビールは最高やな。」なんて言いながら、ビールをガブガブと飲み続けた。スタートが早いから、ほどほどで切り上げようと思っていたけど、夕方を過ぎた頃から、高校...
第一章 東京

第十四話「大株主」

 俺が京都へ帰ると、オヤジは俺を連れて、祇園の高級クラブに行きたがる。俺にクラブでの遊び方を教えてくれたのはオヤジで、最初のころは大人の世界を垣間見れると大喜びで連れて行かれたんだけど、このところ、ちょっと遠慮したいと思い始めている。「ヒロ...
第一章 東京

第十三話「ええねん。」

 新幹線を降りて京都の空気を吸うと、安心感を覚える。中学一年生で四国・松山の学生寮に入って以来ずっと、実家を離れて生活しているけど、やっぱり自分の心のどこか奥底には、京都の人間だという記憶が残っているようだ。いや、離れて暮らしているからこそ...
第一章 東京

第十二話「玉突き」

 ハリウッド映画『ハスラー2』が劇場公開されてから2年が経つ。この2年間で東京や横浜の繁華街には、ビリヤード台を置いたプールバーが次々とオープンした。まるで自分がトム・クルーズが演じたビンセントになったかのように、猫も杓子もビリヤードに夢中...
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