第二章 京都

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第三十七話「禊」

 社員になって初めての出勤。残念なニュースが、ひとつ。山下さんが、店を辞めた。佐伯店長と、西城マネージャーと、俺の三人の社員ミーティングで、店長から一方的に言われたので、辞めた経緯は分からないけど、昨日付けで辞めたらしい。  アルバイトとし...
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第三十六話「ハルカさん」

  社員になれた喜びも当然ながらあったけど、ハルカさんが俺のことを認識していてくれて、しかも、気軽に話しかけてくれたことが嬉しくて、最初はビビりながらだったけど、少しずつエンジンがかかってきて、浴びるように酒を飲んだ。俺の馴染みの店を何軒か...
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第三十五話「三日坊主」

 オフィスに入ると、確かにいつもとは様子の違う佐伯店長が、二つしかないデスクのうちのひとつに座っている。面接以来の対面なんだけど、既にピラミッドの最末端に組み込まれた俺にとっては、雲の上の存在だ。面接の時よりも緊張する。「おお、田附。そっち...
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第三十四話「金券」

 アルバイト三日目。西城マネージャーの顔を想像するだけで、気分が憂鬱だ。女の子の部屋の清掃をしながらも、いきなり後ろから殴られるんじゃないかと、ビクビクと怯える。入り口の扉が開く度にゾッとするから、女の子が出勤してくる度に、身体が震える。「...
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第三十三話「パシリ」

 アルバイト二日目。昨日と同じく、午前九時半に出勤して、女の子たちの部屋の掃除をする。遅番の人たちが閉店後にも掃除をしてくれているので、目立った汚れはないんだけど、シャワーの周りを念入りに磨いたりして、営業の準備を整える。 それにしても、フ...
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第三十二話「初日」

 アルバイト初日。開店時間の三十分前、九時半に店に入り、女の子たちの部屋を掃除する。全部で七つの部屋の掃除を、女の子たちが出勤して来るまでに済ませたい。部屋の中には無駄な装飾はないから、さほど大した仕事ではない。 営業が始まるとアルバイトは...
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第三十一話「面接」

 テレビ局から芸能プロダクションへと毎日のように果てしなく続く選考過程を経験したのに、なぜだか今日は、とても緊張する。この一ヶ月間で、木屋町のファッションヘルスを全て周り、集められるだけの情報を調べ尽くした結果、ここしかないと選んだのがピチ...
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第三十話「木屋町」

 街の北と東西の三方を山々に囲まれた京都盆地の冬は寒い。まさに凍てつくような寒さだ。まだ日が出ているのに、太陽の温かさが感じられない。百メートルくらいの四条大橋が、いつもより随分と長く感じられる。 綺麗な碁盤の目に描かれた京都の街を東西に貫...
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第二十九話「討ち入り」

 祇園のお茶屋で芸妓さんを呼んで、舞妓さんにお酌してもらいながら、名のある職人の京料理に舌鼓をうつ。これほどの贅沢な時間が、他にあるだろうか。この楽しみが分かるか分からないかが、粋と無粋の境界線かもしれない。「今日は、いつにも増して、綺麗や...
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第二十八話「お酒」

 アイスクリームで口元をベタベタにした子供を、叱りもせず笑顔で見守り、そっとハンカチで拭う父親を見て、俺がまだ小さな小さな子供だった頃のオヤジのことを思い出す。グレーのスーツの上下に身を包んで、山崎の二十五年の水割りを片手に、ホステスたちと...
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