ワンダラー

第一章 東京

第九話「バラの花束」

 彼女が来たら、第一声は何と言えば良いのだろうか。カッコつける必要はないから、俺らしく自然体で良いんだと言い聞かせてみても、その自然体というものが何なのかさえ分からなくなってくる。早く来て欲しいという気持ちが半分と、まだ来て欲しくないという...
第一章 東京

第八話「アキコちゃん」

 小学校四年生の夏休み、オヤジが俺と弟を呼んで話を始めた。母親と離婚したという話だった。数年前から自宅には母親はいなかったんだけど、離婚したという事実をオヤジから打ち明けられて、子供ながらに驚いた。悲しみというよりも、驚きのほうが強かったよ...
第一章 東京

第七話「大丈夫。」

「アキコちゃんって、めっちゃ綺麗やねん。」「思い切って告白したら、どう?」「絶対に彼氏おるわ。おらんかっても俺なんか無理やわ。」「いないかもしれないでしょ。」「そら、そうやけど。」「ヒロくん、話がおもしろいし、優しいし、大丈夫だってば。」「...
序章 上京

第五話「マイ」

 服を脱ぎながら俺は「今、受験のために東京に来てて、ちょっと息抜きで遊びに来た。明日も早稲田の社会科学部の試験があるから。」と、聞かれてもないのに、自分が今置かれている状況を説明した。「しっかり疲れをとって、明日のテストも頑張ってね」と元気...
序章 上京

第四話「出会い」

 ソファー席に俺ひとりになってしまった。ふと、東京という初めての土地に来て、ひとりになっている自分に寂しさを感じる。大学入試のために東京に出てきて、明日も朝から試験だというのに、俺はいったい何をやっているんだろう。本当に今、俺はここに居て良...
序章 上京

第三話「ワンダラー」

 少し小走りで次の曲がり角まで向かい、左側の通りを覗き込んだ。思っていたよりも細い路地だけど、この通りで間違いなさそうだ。道幅2メートルくらいの薄暗い路地には海鮮料理屋が立ち並んでいて、エビや魚を焼いている煙がモクモクと充満しているその先に...
序章 上京

第二話「老け顔」

 ニキビ面でオッサンみたいな老け顔の自分が、好きじゃない。 俺の顔は母親に似ていると親戚からは言われるが、母親に似ていてオッサン顔というのが一体どういうことなのか、俺には理解できない。ラグビー部の主将であることを前面に押し出して、なんとか付...
タイトルとURLをコピーしました