ピチピチホーム

第四章 やはり京都

第百三十六話「人生」

 奥田さんから俺あてに電話がかかってきたのは、それから一カ月くらい経った頃だった。前田の件とは関係なく、昔話でもしながら飲もうというのが誘い文句なんだけど、なんだか怖い。闇金みたいな怖い職業のひとと飲むのなんて初めての経験だ。断ろうかとも思...
第四章 やはり京都

第百三十一話「イツキ」

 店を良くするために頑張ってくれるスタッフには、俺も精一杯の感謝と愛情を持って接するけど、辞めたいという奴がいたら、それはそれで仕方がない。だから、いきなり最初のミーティングから俺に対する敵意を見せていた西谷が「辞めさせてもらいます。」と言...
第四章 やはり京都

第百十九話「ウッチー」

 京都・祇園の切り通し、ほんの二百メートル足らずの小道には、石畳の通りに古くからの町家が立ち並び、これぞ京都という風情がある。昼間は観光客が途絶えることなく、舞妓さんが姿を見せれば小さな歓声が沸く。日が暮れて、町家の提灯に火が灯り始めると、...
第三章 さらに京都

第百話「最後」

 ミナミの男に思いっきり殴られて顔面が二倍くらいに腫れている山下さんを表の接客係りにするわけにもいかないので、一週間ほどは俺が受付に立った。とはいえ、アルバイトも増員して、オープニングスタッフの松木君と長谷川君が先頭に立って頑張ってくれてる...
第三章 さらに京都

第九十二話「公安」

 山崎先生が、公安のひとを連れて来た。見るからにボスの風格を漂わせた五十過ぎくらいのオッサンと、その部下が二人。先生は、ボスと顔なじみのようで、図面と照らし合わせながら、テーブルの高さや、照明の数と明るさ、通路の幅などを計測している脇に立っ...
第二章 京都

第七十七話「別れ」

 あの日以来、シズエには会っていない。同じ病院のなかで別の個室に移っただけだから、その気になれば、俺のことを見つけ出すのは容易だったはずだ。それでも、シズエが俺の前に現れないのは、全てを察したからだと思う。シズエと俺は、一緒にいることによっ...
第二章 京都

第七十五話「まぶた」

 公衆電話を抱きかかえて泣き崩れている俺を、ナースセンターから飛び出してきた看護婦さんたちが病室まで運んでくれた。ベッドに横になったあとも、俺が落ち着くまで、しばらく見守ってくれていたと思う。何人かの看護婦さんの優しい視線に見守られながら、...
第二章 京都

第三十五話「三日坊主」

 オフィスに入ると、確かにいつもとは様子の違う佐伯店長が、二つしかないデスクのうちのひとつに座っている。面接以来の対面なんだけど、既にピラミッドの最末端に組み込まれた俺にとっては、雲の上の存在だ。面接の時よりも緊張する。「おお、田附。そっち...
第二章 京都

第三十四話「金券」

 アルバイト三日目。西城マネージャーの顔を想像するだけで、気分が憂鬱だ。女の子の部屋の清掃をしながらも、いきなり後ろから殴られるんじゃないかと、ビクビクと怯える。入り口の扉が開く度にゾッとするから、女の子が出勤してくる度に、身体が震える。「...
第二章 京都

第三十二話「初日」

 アルバイト初日。開店時間の三十分前、九時半に店に入り、女の子たちの部屋を掃除する。全部で七つの部屋の掃除を、女の子たちが出勤して来るまでに済ませたい。部屋の中には無駄な装飾はないから、さほど大した仕事ではない。 営業が始まるとアルバイトは...
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