オヤジ

第四章 やはり京都

第百十五話「一文無し」

 俺がさっさとピンクデザイアを閉めたから、「赤字続きで、儲かって無かったんだろう。」とか、「もう、アイツは一文無しやで。」などとウワサになっているらしい。俺に直接言って来ないから、わざわざ訂正して回る必要もないけど、それなりに儲かっている店...
第二章 京都

第七十七話「別れ」

 あの日以来、シズエには会っていない。同じ病院のなかで別の個室に移っただけだから、その気になれば、俺のことを見つけ出すのは容易だったはずだ。それでも、シズエが俺の前に現れないのは、全てを察したからだと思う。シズエと俺は、一緒にいることによっ...
第一章 東京

第二十五話「お立ち台」

 地獄の坂を駆け上がった最後の馬が、いよいよゴールした。よく頑張った、精一杯に走り切りよった。すごいぞ。俺ひとり、両手をあげて拍手を送る。右手には、あの馬の単勝馬券を握り締めたままで。お前の最高の走りを見せてくれてありがとう。 良く見たら、...
第一章 東京

第二十四話「デビュー」

 年が明けて、正月は京都で過ごした。家族三人で、初詣は伏見稲荷大社に行き、おせちはオヤジが祇園の料亭でこしらえてもらったものを食べた。今年から、いよいよ社会人としての生活がスタートする俺は、身の引き締まる思いで、三が日を堪能した。  本来で...
第一章 東京

第二十二話「ダート」

 スターターが赤い旗を上げ、ファンファーレが響き渡り、各馬がゲートへと収まる。興奮で武者震いをする馬、場内の雰囲気に飲まれている馬、人気とは裏腹に気合の入ってなさそうな馬、様々な表情を見せる馬たちが、ゲートが開くと同時に、一斉にダートコース...
第一章 東京

第二十一話「先生」

 ベッドの上で胡座をかいたオヤジは「迎えに行かれへんかって、ごめんな。」と言う。自宅で倒れているところを、たまたま回覧板を持ってきた近所の人に発見されて、病院に搬送されたと聞いて、朝一番の新幹線で飛んできたのに、なんだか元気そうだ。「起きて...
第一章 東京

第二十話「十万円」

 「もうちょっと何か俺の自己紹介とかさせてくれても良いのにな。」と思いながら、便器を磨く。数日前に小便をしたトイレを、俺が掃除しているのかと思うと、ついついニヤけてしまう。俺の歌舞伎町の裏の世界の歩みは、トイレ掃除から始まった。ピカピカにし...
第一章 東京

第十四話「大株主」

 俺が京都へ帰ると、オヤジは俺を連れて、祇園の高級クラブに行きたがる。俺にクラブでの遊び方を教えてくれたのはオヤジで、最初のころは大人の世界を垣間見れると大喜びで連れて行かれたんだけど、このところ、ちょっと遠慮したいと思い始めている。「ヒロ...
第一章 東京

第十三話「ええねん。」

 新幹線を降りて京都の空気を吸うと、安心感を覚える。中学一年生で四国・松山の学生寮に入って以来ずっと、実家を離れて生活しているけど、やっぱり自分の心のどこか奥底には、京都の人間だという記憶が残っているようだ。いや、離れて暮らしているからこそ...
第一章 東京

第十二話「玉突き」

 ハリウッド映画『ハスラー2』が劇場公開されてから2年が経つ。この2年間で東京や横浜の繁華街には、ビリヤード台を置いたプールバーが次々とオープンした。まるで自分がトム・クルーズが演じたビンセントになったかのように、猫も杓子もビリヤードに夢中...
タイトルとURLをコピーしました