この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百五十三話「プレミアム一周年」

time 2017/06/22

第二百五十三話「プレミアム一周年」

キョウカさんがフォーナイトの浩平を引き抜いて来るというハプニングがあったり、内装工事がギリギリまで終わらなかったりと、慌ただしい状態のままでオープンしたピチピチプレミアムが、早くも一周年を迎えた。常連のお客様が何人も、わざわざ周年に合わせてご来店いただき、お祝いのメッセージをくれた。あと、思いがけない人からも、お祝いの電話があった。

「もしもし、どうしたん?」
「今日で一周年やろ?」
「うん、そう。」
「よく頑張ったなぁ。お疲れさん。」
「あ、うん。ありがとう。」

サエコからだった。もう夫婦という関係は解消してしまったけど、俺たち二人の関係は続いている。娘たちがいるからという理由だけではなく、お互いに夫婦という形にこだわらなければ、気の合う二人だから、これからは別々に暮らしながら、なんとなく気楽に付き合っていけたら良いなと思う。そういえば、この店のソファとかテーブルの大半は、サエコが選んでくれたものやったな。

「社長、一年間、お疲れさまでした。」
「浩平こそ、お疲れさん。」
「これからも、よろしくお願いします。」
「おう、頑張ろな。」

この浩平がいなかったら、どれだけ大変な思いをしたのだろうかと想像すると、心から感謝せざるを得ない。どれだけ業界のプロだからと言っても、業態が違えば、外から見ているだけでは分からないことも数多くある。ソープランドの第一線で活躍していた浩平が、俺たちの仲間に加わってくれたことは、とても力強かった。

「キョウカさん、一年間、ありがとう。」
「いえいえ、ありがとうとざいました。社長。」
「年末年始も忙しいけど、よろしくな。」
「はい、できるかぎり頑張ります。」

女性同士だから気軽に話が出来て、しかも親身になって相談に乗ってくれるから、女の子たちにとってキョウカさんは、心強い存在だったに違いない。俺や浩平も、風俗で働く女の子たちのことは理解しているつもりだし、それなりにアドバイスをしてあげることが出来るけど、やっぱりキョウカさんと比べれば雲泥の差だと思う。

「社長は、年末年始は、どうされるんですか?」
「え?特に何も考えてないけど。」
「やっぱり、クリスマスとか正月は、ご家族と・・・」
「はぁ?」
「あ、すみません。もう、ご家族はいませんでしたね。」
「ちょっと!キョウカさんまで、そんな意地悪なことを。」

俺たち三人の仲が良いことが、店全体の雰囲気を良くしているように思う。女の子のことについてはキョウカさんが、店の運営のことでは浩平が、俺に対して忌憚なく意見を出してくれるから、常に改善を繰り返しながら、これまでの一年を乗り切ることができた。浮気とか離婚に関することでは、ちょっとイジられ過ぎているような気もするけど、トップに立っている人間は、これくらいが丁度良いと思う。

「ケイコの緊急ソープデビューから、一年やな。」
「あの時は、緊張しました。」
「そうなん?そうは見えへんかったけど。」
「いきなりのことで、緊張を隠すのに必死でした。」
「急に代打で呼び出したんやもんな。」
「はい、でも、あれで良かったのかもしれません。」

ケイコと男女の関係になったのはゴールデンウィークだったから、既に付き合いは半年を過ぎた。当初は、ケイコの夫婦間のトラブルについて相談に乗っていたはずなのに、なぜか俺の方が離婚することになってしまったけど、二人の関係に変わりはない。もちろん、ケイコが離婚すれば話は別だけど、今のままの関係が続けば、それはそれで良いような気もする。

「ケイコは、年末年始はどうすんの?」
「たぶん、旦那と一緒に過ごします。」
「そうなんや。」
「私は仕事もありますから、遠出できないですし。」
「そうやな。俺も仕事やな。」
「あれ?社長は、ご家族と一緒に過ごすんじゃ・・・」
「いやいや。」
「あ、すみません。もう、ご家族はいないんでしたね。」
「なんでケイコまで、そんなこと言うん。もうやめて!」


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