この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百四十八話「第二回」

time 2017/06/15

第二百四十八話「第二回」

ほんの数か月前に二号店の話をしていたかと思ったら、もう既に三号店の話まで進んでいる。北海道の勢いは本物のようだ。少額とは言え出資者のひとりである俺としては吉報なんだけど、なんだか俺の隣で、めっちゃ落ち込んでいるやつが居る。

「タイミングって、あるから。」
「いや、俺の力不足ですよ。」
「そんなことないって。」
「次も上手く行かない気がします。」
「やめとけ。そんなん言うなや。」

これから雄琴の二号店をオープンさせるために先頭に立って頑張らないといけないのに、クリちゃんの士気は全く上がらず、北海道惨敗を引きずって放心状態のままだ。とりあえず、俺が知っていることを伝授しようと、クルマで雄琴の街を巡りながら話をしているものの、しっかりと伝わっている気がしない。

「さびれてますね、雄琴って。」
「そうやろ。だから、チャンスやねん。」
「歩いてるのは、ソープの黒服だけですよ。」
「そうそう。面白い街やろ。」
「わざわざ、風俗のために、ここまで来ますかね。」

失敗したところで殺されるわけでもないんだから、与えられたチャンスに対して精一杯の努力をすれば良いっていう類のアドバイスをするべきなのかもしれないけど、なんだか面倒くさいので、特に何も言わず、沈黙のままでプレミアムに戻ってきた。

「買収が決まったら、一気に忙しくなるからな。」
「はい、よろしくお願いします。」
「ソープのことやったら、何でも聞いてくれて良いから。」
「ありがとうございます。」
「うちの店の見学とかも、いつでも大歓迎やから。」
「はい。」

打てども打てども響かない。もし俺なら、しばらくはプレミアムで働かせて欲しいと頼み込んで、出来る限りのノウハウを盗み取ろうとすると思うけど、クリちゃんは全くそんな素振りも見せずに、そのまま京都へと帰って行った。北海道で受けたショックの大きさは理解できなくもないけど、気持ちを切り替えれないとアカンかもしれん。

「あの人のネガティブな感じ、苦手ですわ。」
「そんなこと言うたらんといてや、浩平。」
「でも、貧乏神みたいな臭いが。」
「いやいやいや、それは言い過ぎやって。」
「ゴッド・オブ・プアー・臭。」
「はいはい、略してGPSって言いたいんやろ。」
「さすが社長、鋭い。」

もう一か月以上も前の話なのに、浩平は飽きもせずに、隙あらばGPSネタを差し込んでくる。結局、サエコには浮気がバレず、無事に済んだから良かったものの、最悪の事態になりかねない大ピンチだったことを思うと、こんなネタで笑ってられるのも平和の証だ。

「また、乱交パーティに行きたいなぁ。」
「そんなに頻繁にあるんですか?」
「行こうと思えば、毎週末あるで。」
「いや、毎週は行きたくないですけど。」
「俺は毎日でも、ええねんけど。」

子供ケータイ事件から数日間は、ケイコが気兼ねしているような様子で「奥さんは大丈夫ですか?」なんて聞いてきたけど、最近では二人の会話にサエコは登場しない。せっかくケイコとの楽しい時間を過ごしているのに、サエコの顔が思い浮かんだら台無しやん。

「ほな、来週の土曜で調整してみるから。」
「はい、旦那には適当に理由を言いますから大丈夫です。」
「よっしゃ、ケイコと行く第二回乱交パーティや!」
「分かりました。じゃあ、また、明日。」
「お疲れさま。また明日。」

あのケイコが、乱交パーティに行くことに対して、それなりに乗り気になっているのが面白い。俺が薦めたことに興味を持ってくれて、一緒に楽しめるなんて最高やん。やっぱり、ああいう素直な女の子って、一緒にいて楽しいよな。

「ただいま。」
「おかえりなさい、ご主人様。」
「どないしたん?随分と機嫌が良いやん。」
「そうかなぁ?」
「うん、なんかニコニコしてるで。」
「そうそう、そういえば。あのな。」
「うん。なになに?」
「アンタ、浮気してるやろ?」


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