この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百四十五話「子供ケータイ」

time 2017/06/12

第二百四十五話「子供ケータイ」

会長から「雄琴二号店について考えておけ」と言われた件について、浩平の考えを聞いてみた。あまりにも突拍子もない話に、きっと浩平も驚くかと思ったけど、意外にも「さすが会長ですね。やるべきです。」という肯定的な反応が返ってきた。浩平と出会ってから丸一年が経つんだけど、コイツってこんな奴だったっけ。

「社長、そのおもちゃみたいなケータイは何ですか?」
「自分のやつを修理に出してるから。」
「でも、わざわざ子供ケータイじゃなくても良いでしょ。」
「うちの嫁が、これを使ったら?って優しく出してくれてん。」
「社長、奥さんに浮気を疑われてますよ。」
「え?なんで。」
「子供ケータイって、迷子防止のためにGPS付いてますから。」

機能が制限されているから子供に持たせても安心だというのが子供ケータイの特徴だと思っていたら、まさか特別な機能が付いているとは。しかも、俺の天敵であるGPS機能が搭載されているなんて、想像もしなかった。今でも定期的にカバンやクルマの中をチェックしてGPSが仕込まれていないかチェックしているんだけど、まさか自ら受け取って持ち歩いているなんて、馬鹿にも程がある。

「もうバレましたね。」
「いや、なんも後ろめたいこと、やってないから。」
「ホンマですか?それなら良いですね。」

実際、この携帯電話を持たされてからの一週間は、幸いにもケイコが生理休暇で休んでいたため、自宅と店の間の往復だけの日々だった。ちょうど今日からケイコが復帰していて、帰宅のタイミングを合わせようとしていたところだから、この子供ケータイに監視されていた期間に関して言えば「なんも後ろめたいことを、やってない」というのが、事実だ。

「浩平、ありがとう。」
「寿司が食べたいんですよね、最近。」
「奢ったるから、任せといて。」
「回るやつはダメですよ。」
「俺を誰やと思ってんねん。回らんやつや。」
「社長様、かっこいいです。」

それにしてもサエコのやつ、あんなに自然な感じでGPS付きの携帯電話を差し出すとは恐ろしい。また、ミカの時と同じように、ケイコとの修羅場になった可能性があったのかと思うと、身震いがする。怒り狂うサエコと対面したら、ケイコなんて怖気づいてしまって、ひと言も発することが出来なかっただろう。

「ケイコ、ごめんな。」
「いえいえ。」
「そんな事情やから、今日は駅までしか送られへん。」
「奥さまに監視されていたら仕方がないですよ。」
「そうやねん。」
「週末までに気が付いて良かったですね。」

そうそう、今週末、初めてケイコを連れて乱交パーティに参加することになっている。浩平からの指摘がなければ、GPSをポケットに入れたままで、大阪のホテルに行くところだった。しかも、ケイコが旦那から外泊の許可をとったから、そのまま大阪で一泊する予定にしており、サエコには東京出張だと説明していたから、まさに最悪の事態に発展しかねない状況だ。

「サエコ、これ、ありがとう。」
「もうええの?」
「明日の朝、修理から返って来るから。」
「あ、そうなんや。」

平静を装っているけど、きっと内心では悔しさを感じているに違いない。サエコよ、残念ながらお前の旦那は、そんな幼稚な作戦に引っかかるほどアホとちゃうねん。いや、実際のところは全く気付いていなかったから、アホみたいに見事に引っかかる可能性があったけど、俺の強運が勝った。

「じゃあ、七千円。」
「はぁ?」
「携帯電話のレンタル料、一日千円になります。」
「なんでやねん。」
「ええやんか、それくらい。」

俺の悪事を暴くことが出来なかった腹いせに、レンタル料を請求してくるなんて、どんな嫁やねん。聞いたことが無いわ。

「ほな、一万円からで。」
「お釣りは、結構ですね?」
「そんなアホな。」


sponsored link

down

コメントする