この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百四十四話「子供みたいな」

time 2017/06/09

第二百四十四話「子供みたいな」

俺の最近の楽しみは、仕事帰りのケイコを助手席に乗せてドライブしながら、その日にケイコが相手をしたお客様とのプレイ内容を詳細に聞くことだ。待合室で見送ってから先の、俺が直接見ることができない時間に、どんなことが行われているのかを聞いて、俺はめっちゃ興奮する。あまりにも興奮して我慢できないときには、薄暗い道路脇にクルマを停めて、そのまま車内で行為に及ぶこともある。ホテル「ベンツ」が、大活躍だ。

「たぶん旦那は、他所に別の女がいるんだと思います。」
「なんで、そう思うん?」
「あまり私を束縛しなくなったので。」
「でも、ケイコの稼ぎで遊んでるってことやろ?」
「自分でも何かするって言ってますけど。」

俺たちが付き合い始めた当初は、ケイコにとって気晴らし程度の関係だったように思うけど、数カ月が経った今、俺との関係がなければ彼女の心のバランスが崩れてしまうんじゃないかというほどになっている。外に男がいなければ維持できないような夫婦関係って、どう考えてもおかしい。

「それでも別れへんねんな。」
「このままで離婚なんてしたら私、バカみたいですから。」
「そうかもしれんけど。」
「別れたら、社長が引き取ってくれますか?」
「いや別に、ケイコは自立できる女やん。」
「自立、できないと思います、私。」

人生の後先を考えずに惚れた女に夢中になるのが俺らしい生き方なんだと思うけど、軽々しく「引き取ったるから大丈夫や。」なんて言えない。これは別に、俺が分別のある大人になったというわけではなくて、俺のひと言によってケイコをさらに傷つけるようなことになって欲しくないからだ。ケイコのことを愛しているからこそ、安易な言葉は慎むべきだと思う。

「ただいま。帰ったで。」
「あ、帰ってきた。」
「だから、ここは俺の自宅やから帰ってくるって。」
「そうなんや。」
「いやいや、なんやねん。」
「別に。」

ちょっと寄り道したとは言え、これが仕事から帰ってきた旦那を迎え入れる態度なのか。結婚生活が八年になるから、付き合い始めのようなラブラブの関係がずっと続くはずはないけど、敢えてギスギスとした状態にする必要もないと思う。

「昼間、電話をしたんやけど。」
「あ、ごめん。俺のケータイが壊れてんねん。」
「なにその子供みたいな言い訳。」
「ほんまやねんって。」
「誰が信じるねん、そんな分かりきった嘘。」
「いや、これを見てや。俺も困ってんねん。」

数日前から画面が急に暗くなってしまったり、勝手に誰かに発信してしまっていたり、これまで一度もなかったような問題が多発していたんだけど、今日の昼間、気づいたら電源が落ちていて、再起動してみても画面が真っ白のままで何も確認できない。こういうことは浩平が詳しいから見てもらったけど、素人がイジって直せるような状態ではないらしい。

「ほんまに壊れてるやん。」
「だから、何回も言うてるやろ、壊れたんやって。」
「あんたの言葉は、全部疑ってかからんと。」
「いやいや、たまに本当のことも言うねん。」
「なにを偉そうに言ってんの。」
「今回はホンマやったやろ。」
「そやな、ごめん。」

なんだか納得のいかない会話だけど、一応は俺のことを疑ったことを反省したのか、サエコが一台の可愛らしい携帯電話を持ってきて、「それが治るまで、これを使ったら。」と言ってくれた。それはカオルコに持たせようと買ってきた子供用の携帯電話で、ほとんど機能が付いていない簡易端末なんだけど、とりあえず電話が出来るから、これは助かる。

「ありがとう、サエコ。」
「カオルコのやから、カオルコに礼を言って。」
「分かった。明日、言うわ。」
「カオルコが使ったらアカンって拒否るかもよ。」
「なんでやねん。」
「不潔なパパには貸したくないって。」
「そんなん言われたらショックやわ。」


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