この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百四十話「旅行計画」

time 2017/06/05

第二百四十話「旅行計画」

ケイコがお客様と一緒に個室へと消えていくのを見送りながら、俺はひとり興奮している。乱交パーティで見知らぬオッサンと絡み合っているミカの様子を眺めていたのとは、また別の興奮だ。待合室でケイコの身体を舐めまわすように見ていたお客様が、どんな風にケイコと戯れるのか、俺には見ることが出来ない。だからこそ、妄想が膨らんで、さらに興奮する。

「あのお客様、ケイコさんに夢中ですよね。」
「月イチくらいのペースで来てくれてるもんな。」
「先月は、三回でしたよ。」
「マジで。それ、すごいな。」

ケイコと付き合い始めてから二カ月が過ぎた。どれだけ罵られたり暴力を振るわれても、決して旦那のことを見限らないどころか、なんとか自分の努力で夫婦仲を改善しようと頑張っているケイコを見ていると、週に何度かの密会で気持ちを紛らわすだけではなく、俺が全ての面倒を見てあげた方が良いのではないかという感情がこみ上げてくる。

「あんまり我慢しすぎたらアカンで。」
「はい、でも、わたしの家族ですから。」
「殴ったり蹴られたりしても?」
「乗り越えなきゃいけない試練ですよ。」
「そういうもんかな。」

こんな会話ばかりしていると、思わず「別れたらええやん。」と言いそうになるけど、その後には必ず「俺が全部、面倒見たるから。」と続けなければならないことを考えると、安易に口に出すべきことではないと思い留まる。ただ同時に、サエコとケイコを比較して、俺のことを必要としているのはどっちなのかと、頭のなかで二人を天秤に乗せている自分がいる。

「俺ら、誕生日が一日違いやんな。」
「そうですよね。」
「どこか、一泊二日で旅行に行けへん?」
「え、良いんですか?」
「やっぱり旦那のこともあるし、難しいかな。」

俺に関しては、どうにでもなる。仕事が忙しいから雄琴に泊まるって言っても良いし、新人の面接のために東京に出張するって言っても良い。出資している北海道の店を出張視察しに行くと言うのもアリだ。そういえば、すすきの店は、鮫島部長の部下の与沢が担当することになってから急激に集客力を上げていて、年内には単月黒字まで持って行けることが確実らしい。

そんなことより、問題なのは、ケイコの方だ。夫婦であるのにも関わらず、「電話しただけで怒られる。」とか、「次の日の予定を聞いたら殴られた。」とか、日常的なコミュニケーションさえできない状態の旦那に対して、外泊するなんて伝えることが出来るのだろうか。ケイコは上手く説明するから大丈夫って言ってるけど、あまり無理しないで欲しいとも思う。

「ただいま。」
「あ、嫁の誕生日を忘れてたご主人様、おかえり。」
「ごめんって、サエコ。ずっと言うてるやん。」
「アンタの誕生日も、何もせえへんからな。」
「そや、俺の誕生日やねんけど、出張が入ってもうた。」
「どこに行くん?」
「えっと、あの盛岡。岩手県の盛岡。」

東京って言おうか、札幌って言おうか迷った結果、間を取って思わず盛岡って言うてもうた。東京出張だって言った方が、余計なお土産のことを心配しなくて良かったのに。でもまぁ、サエコは疑っている様子も無いし、俺のミッションは見事にクリアや。ケイコは、ほんま大丈夫かな。

「私も、問題なし。」
「ほんまに?良かったやん。」
「女友達と旅行に行くって言ったら大丈夫でした。」
「殴られたりせんかった?」
「他のことでは殴られましたけど、この件では何も。」

やっぱり殴られてるやんって思ったけど、一泊二日の旅行に出掛けるという俺たち二人のプロジェクトは、なんとか実現できそうで良かった。温泉旅館があるところで、ドライブを楽しめる程度の近場っていう条件で、旅の目的地は和歌山県の白浜にした。

「ふたりの誕生日旅行やで、楽しみやな。」
「来週は娘さんの誕生日だから、忘れないように。」
「あ、そうや。ケイコ、詳しいな。」
「社長のことは、色々と知ってますよ。」
「嬉しいやん。ありがとう。」


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