この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百三十九話「昨晩のこと」

time 2017/06/02

第二百三十九話「昨晩のこと」

昨晩のことを反省しながら、雄琴へと向かう。相変わらず、ゴールデンウィークの渋滞が酷くて、思うように進まない状態だけど、今日はこれくらいが丁度いい。ケイコちゃんとのことを考えながら、ゆっくりと時間をかけて店に行きたい気分だから。

それにしても、あまりに軽はずみな行動に、我ながら呆れる。人生は無計画の方が楽しいとは思っているけど、さすがに店の女の子に手を出すのはダメだ。この世界に入って最初に働いたピチピチハウスでも、当時のナンバーワンであるハルカさんと付き合った。あの頃と比べれば、随分と成長したつもりでいたけど、やってることは何も変わっていない。

「おはようございます、社長。」
「あ、ケイコちゃん。おはよう。」
「昨日は、ありがとうございました。」
「う、うん。こちらこそ。」
「今日も張り切って、働きますから。」

オフィスに入ろうとしたところで、いきなりケイコちゃんと出くわして、驚いた。どうして彼女から「ありがとう」ってお礼を言われているのか良く分からないけど、それに対して俺が「こちらこそ」って返してるのも、なんだか変な気がする。明らかに心の動揺の表れだ。

「社長、昨日の件なんですけど。」
「え?なに?」
「女の子のことですよ。」
「なになに?なんのこと?」
「シフトの変更の件ですけど、言いましたよね?」

そういえば、昨日、キョウカさんから女の子のシフトについて相談されていた。いきなり「昨日の件」なんて言われたから、もしかしてケイコちゃんとのことがバレたのではないかと、余計な心配をしてしまった。キョウカさんや浩平などを含めたスタッフサイドにも、もちろん店で働いている女の子達にも、絶対にバレてはならない。

「社長、バーカウンターなんですけど。」
「うん。」
「もう少し、お酒を充実させても良いですか?」
「そやな。」
「分かりました。そうします。」

もし俺がいなかったら、ケイコちゃんは誰にも悩みを打ち明けられずに、ひとりで問題を抱え込んでしまっていたかもしれない。だから、俺が助けてあげなきゃいけないと思う。それなりに仕事をこなしながらも、頭のなかではケイコちゃんのことばかりを考えている。なんとか自分のやったことを正当化したいだけなのかもしれないけど。

「はい、こちら、ケイコさんです。」
「ケイコです、よろしくお願いします。」
「では、ごゆっくりお楽しみくださいませ。」

朝イチで会った時には、お互いに少し気まずい感じだったものの、仕事となれば話は別だ。俺も、ケイコちゃんも、どちらも普段通りにプロとして仕事に徹しているから、プライベートのことを表情に出したりはしない。彼女がペラペラと余計なことを言いふらすこともないし、誰かが俺たちの様子を見ていて昨日のことに気付くことなんて、ありえない。だから、絶対にバレることはないだろう。

俺も、もうすぐ四十二歳になる大の大人だから、やって良いことと悪いことくらいは判断できる。風俗業界において店で働いている女の子と男女の関係になることは、絶対に御法度だ。既にグループの幹部になっているんだから、俺自身がやってはいけないのは当然のこととして、もし浩平や和臣が店の女の子に手を出したことが判明したら、怒らなければならない立場だ。だから、ふたりの関係は、絶対にバレたらアカンねん。

「私たちの関係を知ったら、みんなビックリするでしょうね。」
「見事にバレてないもんな。」
「本当は、毎日一緒がいいですけど、我慢してますから。」
「俺も同じやで、ケイコ。」
「ほんとですか?」

絶対にダメだ、絶対にダメだと自分自身に言い聞かせれば言い聞かせるほど、興奮してきてしまうのが俺だ。タブーこそが、俺の燃料やねん。あれ以来、週に一、二回くらいは帰りがけにラブホテルに寄るような関係になって、既に一か月が過ぎた。職場の同僚との禁断の恋、お互いに夫婦関係を持つダブル不倫、この昼ドラみたいなシチュエーションが、たまらんわ。

「あ、そういえば今日、サエコの誕生日や!」
「え、大丈夫なんですか?」
「ケイコと一緒におる方が楽しいから、ええよ。」
「それは嬉しいですけど。」
「大丈夫、大丈夫。もう、めでたい歳でもないやろ。」


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