この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百三十三話「ミツコちゃん」

time 2017/05/25

第二百三十三話「ミツコちゃん」

スカウトメールでやりとりをしていた女の子と、大阪の喫茶店で待ち合わせをしているんだけど、約束の時間を三十分も過ぎているのに来ない。電話をしてみたけど出てくれないし、わざわざ大阪まで来たのに無駄足だったのかもしれない。もう諦めて帰ろうとしたところに、全体的にピンク色をしたフワフワした感じの女の子が入ってきた。

「すみません、私、高知の出身で、大阪に来るのが二回目で、梅田には来たことがあるんですけど、駅のこっち側には来たことがなくて、だから、ほんと遅れたらダメだと思って、かなり早めには家を出て来たんですが、申し訳ございません。」
「あ、うん。とりあえず、座ってや。」
「はい、あの、私、まだ面接してもらえますか?やる気だけは十分にあるので、すぐにでも働きたいと思っているのですが、あの遅刻したのは、違いますから。その、道が分からなくって、曾根崎警察署を目指していたのに、違う警察署に辿り着いてしまって、申し訳ございません。」
「大丈夫やから、落ち着いて。」
「はい、落ち着いてます。」

やはりインターネット上でのやりとりだけでは、どういう女の子なのかを判断することは難しい。いわゆるIT系の人たちは、外にも出ないでインターネットで会議をして、パソコンを使って仕事をして、請求書もメールで送って、銀行にお金を送ってもらえば仕事が出来るのかもしれないけど、俺たち風俗業界の人間は、人と人、肌と肌の触れ合いを商売にしているんだから、インターネットに頼り過ぎてはいけない。

「ミツコちゃん、だよね?」
「はい。あのですね、私は、父親がですね、私がもっと小さい頃に死んで、あ、えっと、亡くなられてしまわれたので、母親とお姉ちゃんと三人暮らしなんですけど、お姉ちゃんが病気で入院してしまって、どうしてもお金が必要だってことで、お母さんが、いや、母親が頑張って働いてくれるんですけど、私も自分で稼いでですね、少しでも助けたりしたいと思いまして。」

この子、なんも聞いてないのに、めっちゃ喋ってるやん。ところどころ理解不能なところもあるけど、とにかくお金を稼ぐ必要があって、やる気もあることだけは分かった。さらに事細かに家庭の事情を話そうとするから、「もうそれ以上は大丈夫やから。」と言って止めた。あんまり深く立ち入りすぎるのも良くない。このサジ加減を間違うと、思いもよらない問題に発展することがあるから。

それにしても、こんなに採用されたくて必死な子って珍しい。まぁ、こういう感じで一方的に話をする子って、うちでは働いて貰いたくないから不合格なんだけど、ここでスグに結果を伝えてしまうと思いもよらない行動を起こされる可能性があるから、できるだけ丁寧に店のシステムを説明して、とりあえず面接だけは終わらせることにした。

「ほな、うちに帰って、もう一回、考えてから連絡くれる?」
「うちって言うのは、高知の実家ってことですか?」
「まぁ、そやな。」
「あの、私、帰るための電車賃を持ってなくて。」

帰りの電車賃もないのに、良く大阪まで来たなぁと思いつつも、仕方がないから往復の電車賃として一万円をあげた。フワフワしたピンクの女の子が「オジサンとお話ししただけで一万円貰えるなんて、援交みたいですね。」と言って、笑顔で帰っていった。たしかに、あの年齢の子から見たら、俺ってもうオジサンかもしれん。とはいえ、プレミアムの面接に合格する女の子は、絶対に俺のことを“オジサン”なんて呼び方をせえへんけどな。

「もしもし、社長、おはようございます。」
「おう、浩平ちゃん。どないしたん?」
「ケイコちゃん、普通に出勤してきました。」
「あ、ほんまに。」
「特に変わった様子もないです。」

なんだか変わった子の面接をして、かなり疲れた。今日は雄琴に行かずに、プリプリに顔を出して終わりにしようかとも思ったけど、ケイコちゃんの様子を確認しておいた方が良いような気がする。

「はい、もしもし、お疲れさまでっす。」
「あのさ、今日は雄琴に行くことにしたわ。」
「そうなんでっすか。」
「別に、俺が行かなアカン用事って無いやんな?」
「そうでっすね、特には。」
「和臣、そんなアッサリ言わんといてや。」
「え?」
「嘘でもええから、来て欲しいって言うてや。」


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