この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百三十二話「バーカウンター」

time 2017/05/24

第二百三十二話「バーカウンター」

北海道から引き揚げてきたクリちゃんを慰めてあげようと思って、何度か電話をしているんだけど、そもそも電源が切れているようで繋がらない。京都での業務が特にないなら、雄琴を手伝ってもらいたいんだけど、本人と話が出来ないから、このことを会長に提案することさえ出来ない。

「お客様、いかがでしたでしょうか?」
「前の子と比べたら、段違いに良かったわ。」
「ありがとうございます。」
「男のスタッフも、きびきび動いてて気持ちい良いし。」
「そんなことまで、褒めていただいて。」
「素直に思ったことを言うてるだけやで。」
「ありがとうございます!」

厳しい意見よりも、明らかに褒めていただけることの方が増えてきたことで、俺がやっていることが間違っていないことが確認できる。待合室の一角にバーカウンターがある方が高級感があって良いというのは会長のアイデアだけど、うまく使いこなしているのは俺だ。普通にバーとして営業できるレベルのしっかりしたカウンターだから、有効活用しなければ勿体ない。

「そんなに頻繁に来られへんけど、また来るわ。」
「はい、お待ちいたしております。」
「ほな。ありがとう。」
「お気をつけて、お帰り下さい。」

ソープランドが好きすぎて雄琴に住んでいるなんて話を聞いたことがないから、限りなく百パーセントのお客様が、雄琴から離れた場所から来店いただいている。わざわざ長距離を自分で運転して来たり、電車を乗り継いだりして来られるお客様だから、満足して帰ってもらわないと困る。集客が安定している今、リピーターを増やしていく努力が必要だ。

「社長!社長!」
「なに?キョウカさん。」
「ケイコさんから連絡がありました。」
「で、なんて言うてたん?」
「明日から出勤だそうです。」
「ホンマに?良かったわ。」

さすがに、二週間近くも連続で欠勤だったから、もう戦力としてアテには出来ないと感じていた。ケイコちゃんらしくない行動だから、よっぽどの理由があったんだと思うけど、本人が自分で口を開くまでは、理由を問い詰めないということで浩平とキョウカさんと意見が一致した。

ただ、慌ててケイコちゃんの常連となっているお客様に連絡しようとする浩平に対して俺は、とりあえず明日の様子を見てからにしようと言った。お客様に対して良い知らせをイチ早く伝えたいという気持ちは分かるけど、なんとなく嫌な予感がした。

「それはそうと、さっきのお客様、大満足やったで。」
「どの方ですか?」
「チハルちゃんがついたお客様。」
「あの子、頑張ってるから良かったです。」
「うん、次回は指名するって。」

風俗業界って、お金を稼ぎだすのは女の子たちだけど、基本的には男だらけの職場だから、これまで女性スタッフと一緒に働いたことがなかったけど、キョウカさんのように女の子と一緒に喜んだり悲しんだりしてくれるひとがいることは、女の子たちにとっては何でも話ができるお姉さん的な存在として安心できるだろうし、俺にとっても女の子たちの管理には欠かせない存在になっている。

「浩平、キョウカさんって前からあんな感じ?」
「うーん、わりと文句の多い人でしたよ。」
「どういう文句?」
「男性スタッフに覇気がないとか。」
「そうなんや。」

自分がソープ嬢でいる間は、どれだけ店側に対して文句を言ったところで、解決されないまま放置されている問題が数多くあったんだろう。だから、今の立場になって、自分が不満に感じていたことを自分で解決することができるのが、楽しいのかもしれない。

「社長、チハルちゃんが泣いてました。」
「え?なんで?」
「さっきのお客様のことです。」
「なんで泣いてんの?」
「初めてお客様から褒められたって。」
「なんや嬉し泣きか。びっくりしたわ。」


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