この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百三十一話「佐伯派」

time 2017/05/23

第二百三十一話「佐伯派」

ピチピチプレミアムの集客の秘訣をひと言で説明すると、インターネットのフル活用だ。ホームページや会員サイトで女の子の出勤情報などを積極的に公開するだけでなく、「写メ日記」というコーナーを設けて女の子のリアルな素顔を配信しているのも受けている。まだオープンから半年も経っていないけど、集客力だけなら雄琴でも随一だと言って良い状況だ。

「こんなに面接の予定が入ってるんですか?」
「そうやで、浩平。」
「フォーナイトでも、月に数件でしたよ。」
「ほんまに?じゃあ、うちって凄いやん。」
「はい、社長、めっちゃ凄いです。」
「そうなんや。もっと褒めて!」

他店と比べれば破格といえる好条件を出しているのに、いまいち女の子の応募が増えず、イライラしていたんだけど、ここ最近、やっと徐々に反応が出始めた。あまりに条件が良すぎて、逆に怪しまれていたのかもしれない。でも、さすがに雄琴でも目立つ存在になってきたから、疑いが晴れてきたんだろう。

「女の子が充実したら、さらにお客様が増えますね。」
「そうやねん。その好循環を生まんとアカンねん。」
「見事に狙い通りですね。」
「やっぱり、俺って凄いやろ。」
「はいはい、凄いです。凄いです。」

店の女の子と、集客っていうのは、いわゆる鶏とタマゴのような関係で、どっちかが伸びないと、もう片方も伸びないから、オープン当初が一番難しい。ここで悪循環に陥った店舗は、お客様を十分に集めることができないから、女の子に対する条件を下げざるを得ず、結果的に女の子の質が下がっていく。俺がピチピチグループに復帰したころのウッチー率いるプリプリが、まさにそういう状態だった。

「やばいですって、田附部長。」
「石川部長、何が?」
「佐伯の血を引くものとしては断固反対すべきです。」
「だから、何なん?」
「北海道の件ですよ。」

俺は目の前で起こっている問題に取り組むことに夢中だから、邪魔しないで欲しい。っていうか、佐伯の血って何やねん。

「佐伯派として、田附部長も反対ですよね?」
「俺、そんな派閥、知らんってば。」
「じゃあ、鮫島派に寝返ったんですか?」
「いやいや、俺、会長派やから。」
「そんな派閥ないですよ!」
「どないやねん。」

石川部長が言いたいのは、俺もメッチャ世話になった佐伯さんの流れであるクリちゃんが追い出されて、突然現れた鮫島部長の部下が、すすきの店の担当になったことに対して、俺が文句を言うべきだということらしい。さらにつけ加えると、自分の店の調子が悪くて発言権が下がっているから、雄琴で調子の良い俺が言うべきだということらしい。

「お手並み拝見ってことで良いんとちゃうの?」
「あ、なるほど。そういうことですか。」
「はぁ?」
「わざとやらせて、失敗させる作戦ですね。」
「いや、違うけど。」

もう、さすがに面倒くさいので、お客様の対応をしなければならないと言い訳をして、電話を切った。実際のところ、さっきから浩平とキョウカさんが神妙な顔つきで話をしているのが気になっていたから、石川部長と話をしている場合じゃないと思った。

「どうしたん?」
「ケイコさんから急に休みたいって電話が来ました。」
「生理ちゃうん?」
「まだ、一週間くらい先のはずです。」
「なんか理由は言うてなかったん?」
「特に。ただ、すみませんって連呼してて。」

風俗嬢に限らず、女の子っていうのは気分屋だから、何となく行きたくなくなったっていうこともあるんだけど、ケイコちゃんに限っては、そういう感じの子ではないし、俺の知る限りではプリプリ時代を含めて、出勤をドタキャンすることなんて初めてのケースかもしれない。

「キョウカさん、明日にでも理由を聞いといて。」
「はい、分かりました。」
「あんまり強い言い方をしたらアカンで。」
「もちろんです。任せておいてください。」

結局、この日から十日間連続で、ケイコちゃんは店に姿を見せていない。ナンバーワンの彼女が休んだことで、予約が混乱しているけど、これに関しては浩平が上手く処理した。そんなことより、彼女の熱烈なファンから「辞めたわけじゃないんですよね?」という電話が何度もかかってきて、休んでいる理由さえ知らない俺たちは、どのように答えれば良いのか対応に困った。

「どうしましょう、社長。」
「まぁ、待つしかないよ。」


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