この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百二十八話「まぐれ当たり」

time 2017/05/18

第二百二十八話「まぐれ当たり」

 雄琴のソープランドには、昔のような活気がない。たぶんバブル時期には、それなりに活況だったんだと思うけど、それ以降、ずっと右肩下がりが続いている。あと、経済の好不況とは関係なく、ソープランドのオーナー達の高齢化が進んでいて、時代の流れについていけていないというのも、雄琴没落の大きな要因だ。だからこそ、うちのような新参者にも進出のチャンスがあった。

「浩平、一体どうなんってんの?」
「いや、俺に言われましても。」
「もう無茶苦茶やん。」
「そうですね。」
「次から次に、予約の電話が来るで。」

 お客様からのクレームも少なからずあるけど、とにかくオープンから一か月が経っても、客足が全く衰えない。オープン直後だから初物好きが来てくれるだけで一週間も経てば落ち着くだろうと言ってる間に二週間が経ち、年末だから財布の紐が緩んだお客様たちが来てくれるだけで年が明ければ落ち着くだろうと言ってる間に松が取れた。

「やっぱり、一日十万円の給与保証が効果的ですね。」
「働いてくれる女の子を大切にせんとアカンもん。」
「私もソープ嬢に戻ろうかな。」
「いや、キョウカさんは今のままで大丈夫です。」

 集客が十分に出来ていて、期待以上の利益が上がっているからと言って、それで満足して調子に乗っているやつは馬鹿だ。うちの店のウィークポイントは、高級店として立派な入れ物を作ったのに、それに見合うだけのレベルの女の子を確保しきれていないことにある。女の子に対する条件さえ良くすれば、続々と応募があるんじゃないかと期待したけど、これは甘かった。

「明日は俺、東京に行ってくるから。」
「赤木さんですか?」
「そう。あと、スカウトメールの子も何人か面接してくる。」
「とびきりのスーパーAランクをお願いしますよ。」
「浩平ちゃん、任せといて!」

 威勢の良いことを言って出て来たけど、女の子を発掘する作業は、そんなに簡単ではない。赤木くんの方でも、手持ちの女の子は全て紹介してくれたから、あとは新しい子を見つけたら俺に連絡をくれるような感じで、去年の秋口のような勢いはなくなった。とはいえ、俺が女の子に出している条件が、日本中のソープランドのなかでも別格に好条件らしく、赤木くんのスカウトチームが捕まえたAランクの女の子たちは、まずは俺が最初に面接をさせてもらっている。

「タトゥーの子は勘弁やで。」
「うちもマッパにして調べるわけじゃないんで。」
「まぁ、そうやな。」
「安い店で働いていた子もNGなんですよね?」
「いや、安いままの接客しか出来ない子がアカンだけ。」

 うちの店の女の子に対するクレームなども赤木くんとは共有していて、できるだけ事前に排除するようにしている。例のヨウコちゃんは、それなりに可愛い子だったけど、大衆店で働いていたことを堂々とお客様に話したことを理由に辞めてもらった。そもそも女の子が足りていない状況なので、女の子を見つけてくる係としては正直しんどいけど、女の子のクオリティを保つことが店の生命線だから、あくまでお客様の立場に立って、自分の理想を追求するしかない。

「ヘルスで働いてる子は? NGですか?」
「いや、別にどこで働いてたとか出自は関係ないねん。」
「あ、そうなんですか?」
「だって、今のうちのナンバーワンは元々、ヘルスで働いてた子やし。」

 そうそう、ピチピチプレミアムの現在のナンバーワンは、なんとあのケイコちゃんだ。オープン日にいきなりソープデビューして、本人は不安そうにしていたけど、次々とリピート客を掴んでいて絶好調だ。たまたま電話を掛けてきた子を誘っただけだから、まぐれ当たりのようなものだけど、赤木くんには「俺が発掘する女の子以上の子を頼むで。」と偉そうに注文をつけた。

「あ、もしもし、サエコ?」
「うん、なに?」
「今晩、最終の新幹線で帰るから。」

 東京で夜遊びするのも楽しいと思うけど、明日も朝から雄琴に出勤して、店の改善点について、もう一度、落ち着いて考えたい。働くって楽しいわ。


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