この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百二十六話「タトゥー」

time 2017/05/16

第二百二十六話「タトゥー」

 まずはオープンできたことだけで満足して終わる一日かと思っていたのに、次々と予約の電話が入って、今日は閉店時間まで、ほぼギッシリと予定が詰まってしまった。明日と明後日も同じような状態、さらに来週、再来週の予約までもが入り始めた。大袈裟ではなく本当に、受話器を置くとすぐに次の電話が掛かってくるような状況だ。

「お電話ありがとうございます。ピチピチプレミアムでございます。」
「あ、やっと繋がった。」
「申し訳ございません。電話が混雑しておりまして。」
「予約なんですけど。」
「はい、私が承ります。」

 大学を卒業してからは、少しの間だけ芸能プロダクションで働いたものの、ほぼ風俗ひと筋でやってきた俺だから、これまでに予約の電話を何千本と受けてきた。どれだけ電話がかかってきたところで、余裕で対応できる。そう、思っていた。でも、ソープでは、お客様の送迎も含めて手配しなければならず、ちょっと難しい。

「ご来店予定日時はいつのご予定でしょうか?」
「今日の夕方五時がええねんけど。」
「お越しになるのは何名様でしょうか?」
「俺と、もうひとりやから、二人やね。」
「お車でのご来店ですか?それとも電車でお越しですか?」
「京都からJRで行こうと思ってる。」
「かしこまりました。あいにく夕方の五時の枠はご予約でいっぱいですが、六時半からですとご案内が可能でございます。」

 女の子の空き状況と、車両の稼働状況を見ながら、なんとか調整できるのが、午後六時半からの時間だけだ。この時間さえ埋まれば、今日はまさに正真正銘の満員御礼だ。何としても、このお客様には来店していただきたい。とはいえ、来るもの拒まずでお客様を受け入れていては、超高級店としてのピチピチプレミアムの名が廃る。

「どのような女の子が、お好みでしょうか?」
「えっと、あんまり歳がいってるのはアカンな。」
「二十二、三くらいの子で宜しいですか?」
「そうやね。それくらい。」
「性格的には、明るい子、おとなしい子、どちらがお好みですか?」
「あんまり静かな子は嫌やわ。根っからのエロい感じの子がええな。」
「もうひとりのお客様は、いかがでしょうか?」
「あ、ちょっと待ってな。」
「はい。」
「二十五前後のおとなしい子やって。」
「かしこまりました。」

 なんとなく見事にハマりそうな気がしてきた。二十五歳前後のおとなしい子と言えば、本日がソープデビューのケイコちゃんでいけそうだし、もう少し若い方は、東北から来た色白美人のミナさんであれば、お客様のご希望に添えるはずだ。ミナさんは、赤木くんのスカウトチームから紹介された女の子で、ノリが良くてキャピキャピしているところも丁度いいはず。ただ、そうそう、ミナさんには、どうしても伝えておかなければならない欠点がある。

「お客様、あの若い子の方なんですが。」
「うん。俺に付く子?」
「はい、そうです。」
「どないしたん?」
「この子は、タトゥーが少し入ってるんですが、大丈夫でしょうか?」
「え?タトゥーって、入れ墨のこと?」
「今時のデザインなんで入れ墨というよりは、タトゥーなんですが。」
「それは俺、萎えてまうから、別の子で。」
「かしこまりました。」

 このお客様に限らず、女の子の身体にタトゥーが入っていることに抵抗を示す方は、少なからずいる。できれば、タトゥーを入れているような子は採用したくないんだけど、これに関しては妥協した部分もあり、浩平店長との話し合いの結果、電話予約の段階でしっかりとお客様に伝えて、タトゥーが入っていることに問題がないかを確認することにした。

「お客様、ひとつだけ歳が上なんですけど、二十四歳の子はダメでしょうか?」
「まぁ、一歳くらいは変わらへんから、ええよ。」
「ありがとうございます。若く見える子なんで、大丈夫だと思います。」
「分かった、分かった。ありがとう。」
「では、JR比叡山坂本駅に十七時半、エルグランドでお迎えにあがります。」
「はい、はい。」

 よし、これで今日はもう満杯や。これ以上は絶対に無理。はじめて会長から雄琴に進出することを聞かされてから、ほぼ二年が経ったけど、最高の出だしを切ることが出来た。俺、めっちゃ頑張ったわ。


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