この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百二十二話「俺のプラン」

time 2017/05/10

第二百二十二話「俺のプラン」

 講習の時間をうまく調整してもらえたから、午後四時過ぎには雄琴を出ることができた。今年に入ってからでも軽く百回以上は往復している道を、京都へと向かう。決して明るく楽しい話にはならないだろうし、雄琴で働いてもらう流れになるように話し込みたいから、落ち着いた雰囲気の喫茶店で会うことにした。

「店長、お久しぶりです。」
「あ、ケイコちゃん。ひさしぶり。」
「わざわざ、ありがとうございます。」
「そんな改まらんでも良いって。」
「は、はい。」

 二年半ぶりに会うケイコちゃんは、髪の毛を少し短くしているせいか、俺が覚えている雰囲気とは違う。たぶん、前よりも体重が減っていて、健康的というよりは、少し貧相な顔立ちになっている。幸せそうに寿退社していったけど、結婚生活がうまくいっていないんだろうな。

「旦那とは上手くいってんの?」
「はい。」
「あ、そうなんや。」
「真っすぐ家に帰ってきてくれますから。」
「それは安心やな。」

 予想とは違う返事だった。旦那が真っすぐに家に帰ってくるのが、夫婦が上手くいっている証明になるのかどうかは別として、ケイコちゃんの表情を見ていても、夫婦関係がこじれているわけではないらしい。じゃあ、どうしてまた風俗で働きたいと思ったんだろう。

「夫婦仲は良いんですけどね。」
「それは良いことやん。」
「浮気とかしない真面目な人ですし。」
「そっか。」
「風俗も行ってないはずですから。」

 思わず、俺は浮気が見つかって家庭が大変なことになっているという話を披露しそうになったけど、まずはケイコちゃんの話を聞こうと思って、やめた。

「でも、借金があるのが分かって。」
「あ、そうなん?」
「将来のために使ったとしか言ってくれなくて。」
「いくらぐらいの借金なん?」
「五百万です。」

 送別会の席でも、旦那さんのことは詳しく聞かなったし、ましてやどんな職業の人なのかは聞いていないから、あくまで一般論でしかないけど、男が言う「社会勉強のため」とか「将来のため」なんていうのは、ロクな使い道でないことは確かだ。元々、ケイコちゃんを目当てにプリプリに通い詰めていたお客さんだから、もしかしたら風俗に使ったのかもしれない。

「それで、風俗に戻ろうと思ったんや。」
「はい、私にできることは、それだけなんで。」
「旦那さんのために稼いであげるんや。」
「夫婦ふたりの問題ですから。」
「そうやんな。」

 改めて思うけど、風俗で働く女の子っていうのは、本当に心の優しい子が多い。もちろん、自分の贅沢のために働いている子もいるけど、ケイコちゃんのように誰かのために金が必要だからと言って、風俗で働いている子の方が、多いような気がする。最近は特に、ヘルスではなくソープで働く子の面接をしているから、その傾向を強く感じる。

「俺、今な、雄琴に店を作ってんねんけどな。」
「ピチピチグループから独立されたんですか?」
「違うよ、グループの店。」
「店長が、店長をするんですか?」
「あ、俺はもう店長と違うねん。」

 お金が必要なのだと分かれば話が早い。まずは俺の二年半について簡単に説明をして、俺がグループの部長になったこと、ソープランドの運営会社の社長になったことを分かってもらった。それから、俺がケイコちゃんのために用意したプランを提示した。

「短期間で稼ぐならソープで働けへん?」
「その雄琴の店ですか?」
「そうそう。」
「ヘルスじゃなくてソープなんですよね。」
「うん、早く借金を返すなら、ソープの方がええと思うで。」
「でも、すぐにでも働きたいから。」
「じゃあ、ソープが開く前は、プリプリで働いててもええよ。」
「ほんとですか。」
「うん。」
「ひと晩、考えさせてもらっても良いですか?」
「そやな。しっかり考えてから、連絡ちょうだい。」

 酒を飲みに行く雰囲気でもないから、そのまま喫茶店で別れることになったけど、凍てつくような寒さの中を歩いていくケイコちゃんの後姿を見ながら、俺は確信した。彼女はきっと明日、ソープランドで働くことを決意して、俺に電話をかけてくる。

 少しやつれているのが気になるけど、もう少し元気になったら、彼女は間違いなく人気の嬢になるはずだ。


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