この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百十九話「世間話」

time 2017/05/05

第二百十九話「世間話」

 今日からお前が社長だ、お前に全てを任せると言われて、素直に喜べるほど俺はもう若くない。ピチピチグループが買収したソープランドを運営する法人の社長になると言うことは、この法人が行っている事業で発生したトラブルの全責任を、俺が負わされるということだ。

「田附社長!おめでとうございます!」
「ああ、石川部長。」
「ご活躍を遠く松山の地から願っております!」

 やけにテンションの高い石川部長からの電話は、ある意味で予想通りだから特に何の感情もなく受け流したけど、クリちゃんが「ご愁傷様です。俺たち仲間ですね。」みたいな感じの電話をしてきて、ちょっとイラっとした。ただ、鮫島部長だけは、俺のことを気遣ってくれて「ホンマに引き受けて大丈夫ですか?」とか、「誰か名義だけテキトーなやつを選ぶことも可能と思いますけど。」などと言ってくれて、嬉しかった。

「俺、社長になったで。」
「はぁ、何の?」
「雄琴のソープランドの。」
「ふーん、そうなんや。良かったね。」
「あ、うん。」

 ミカの騒動があってから、サエコが俺のことで大袈裟に喜んでくれることは無くなった。子供たちのことがあるから、全く会話がないわけじゃないけど、俺に対しては何も期待していませんという態度だけは、一貫している。俺のことを全面的に認めて、無条件に褒めてくれるサエコは、もう遠い昔の幻影でしかない。

「来週は、また東京出張やから。」
「あっそう。」
「一泊やで。」
「別に聞いてへんし。」

 一応、雄琴や東京で泊りの予定がある時には、サエコに報告するようにしているんだけど、どうやら出張のことを俺が話すたびに、サエコの頭のなかではミカのことが思い出されるようで、あの日のミカの部屋で見せたのと同じ表情で、俺のことを蔑んだ目で見つめる。俺、あの目がメッチャ苦手やねん。

「田附さんって結婚してるんですか?」
「してるって言えば、してるよ。」
「何すか、その女子高生みたいな答え。」
「赤木くん、大人っていうのは色々とあんねん。」
「俺、色々とある奴しか周りにいないんで分かりますよ。」

 紹介してくれる女の子たちの到着を待っている間、くだらない世間話をしていたんだけど、どうして赤木くんがスカウトチームを率いて、女の子たちを自在に動かすことが出来るのか、ちょっとだけ分かったような気がした。見た目とか話し方はチャラいけど、優しさが滲み出ているというか、とにかくエエ奴だ。

「どれくらい稼げるんですか?」
「今以上に絶対に稼げるよ。」
「でも、私、東京が好きやし。」
「ハルエちゃん、お金を貯めたいんとちゃうの?」
「そう。何千万か貯めて、風俗やめて、カフェがやりたいの。」
「それやったら、絶対に雄琴の方がええって。」
「どうして?」
「使うところがないから金が貯まるねん、雄琴は。」
「そうなの?」
「ホストも無いし、ブランド物を売ってる店もないし、何も無いから。」

 ソープの女の子の面接を何度も繰り返して、最近、少しずつ効果的なフレーズが分かってきた。特に、雄琴には何もないから無駄遣いせずに金が貯まるっていう話は、かなりの効き目がある。俺とハルエちゃんの会話を隣で黙って聞いていた赤木くんも、女の子が帰ったあとで「雄琴には何もないって話、良いですね、アレ。」と言って褒めてくれた。

 我ながら単純だと思うけど、俺は褒められると伸びるタイプだから、その後の面接もノリノリで女の子と話をすることができた。

「田附さん、どうでしたか?」
「めっちゃええ感じやん。」
「良かったです。」
「今日だけで二人は決まりとちゃうかな。」
「また次も期待しておいてください。」

 今日の一連の面接の様子を見て、俺が欲しいと思っている女の子を把握して、さらに厳選した女の子を紹介してくれるらしい。いわゆるAランクの綺麗な女の子ばかり、どうやって捕まえて来るのか知らないけど、赤木くん、めっちゃ頼もしいわ。


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