この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百十六話「赤木くん」

time 2017/05/02

第二百十六話「赤木くん」

 会長から夜通しの説教を受けてから三週間くらいが経った。ピチピチプレミアムで働いてくれる女の子を集めようと、必死で頑張っているけど、確保できたのは今のところ三人だけ。このペースだと、どう考えても間に合わない。

「こんなに要らんってくらい集めときたいねん。」
「そうですよね。分かります。」
「一か月前には、キョウカさんの講習を始めんとアカンし。」
「そう考えると、残り三か月ですね。」
「今の三人とのやりとりは、浩平ちゃんに任せるから。」
「はい。分かりました。」
「ほな、俺、東京に行ってくるから。」

 下の階に降りて、少しだけプリプリの様子を見て、和臣から「いってらっしゃいまっせ!」と見送られて、京都駅へと向かった。夏休みということもあって、駅には他県から来たのであろう観光客の姿が目立つ。

「すみません、あのぅ。」
「なんですか?」
「銀閣寺って、どうやって行けば良いですか?」
「えっと、銀閣寺やったら、バスか、タクシーやね。」
「あの、バス亭は、どこですか?」
「あっちの出口から出たら、バス停ですよ。」
「ありがとうございます。」

 どういう訳か、京都の街を歩いていると、頻繁に道を聞かれる。見るからに京都人って感じの外見なのか、一応は小奇麗な恰好をしてて安心感があるのか、理由は自分でも良く分からない。もしかしたら、顔がデカいから目立つだけかもしれんけど。それにしても、さっき俺に道を聞いて来た女の子、めっちゃ可愛かったなぁ。電話番号くらい聞いておけば良かった。

「もしもし、石川です。」
「石川部長、お疲れさまです。」
「お、田附社長。」
「え、なに?どないしたん?」
「社長、お元気かなと思いまして。」
「はぁ?」

 最近は道後温泉の店に行ってることが多くて、あまり京都にいない石川部長だけど、いよいよ四国で頭がおかしくなってしまったのかと思った。以前から、いきなり店を訪ねて来ては、グループ内の噂話ばかりして、ひと通り話をしたら満足して帰っていく謎の人物ではあったけど。

「社長、今日は、どちらですか?」
「今、新幹線に乗り込んだところです。」
「ご出張ですか。」
「はぁ?まぁ。石川部長は京都ですか?」
「いや、道後温泉ですよ。」

 大した用件があるわけでも無さそうだから、周りの乗客に迷惑になるからという口実で、電話を切った。それにしても、一体、何のために電話を掛けて来たんだろうか。札幌の店を担当しているクリちゃんも、常に頭がボーっとした状態になってしまっているし、やっぱり地方の店に行くと、ちょっと精神的に追い詰められるのかもしれない。俺も気を付けないと。

 今回、俺がわざわざ東京まで来たのは、ミカと密会するためだ。京都ではサエコに見つかるリスクがあるから、東京で会うことになった。いや、違う。もう、あれ以来、ミカとは連絡を取っていない。電話を掛けてみようかとは何度か思ったけど、もう会わない方が良いと自分に言い聞かせ、我慢している。今日、俺が東京で会うのは、赤木さんという人だ。

「ちわっす。赤木です。」
「え、あ、田附です。」

 赤木さんとは初対面なんだけど、三十代半ばから四十代をイメージしていたのに、二十代前半のチャラい男が来たから、かなり驚いた。何て言うか、“赤木さん”じゃなくて、“赤木くん”だった。夏の暑い中をスーツ姿で来た自分が情けなくなるような、Tシャツとジーパンの上下の赤木くんと、歌舞伎町の喫茶店で向かい合って座った。

「早速ですけど、ソープの嬢集めですよね。」
「うん、十二月に雄琴でソープを始めることになってて。」
「良いですね、ソープ。俺も自分でやりたいですよ。」
「でも、自分でやるのは大変やで。」
「だから、儲かるんじゃないですか。」
「まぁ、そやけど。」
「で、どんな感じの店で、どんな感じの子が必要ですか?」

 東京都内では有数のスカウトグループを抱えている赤木くんは、さすがに話が早い。俺がイメージしている店の雰囲気などをひと通り説明したら、「とりあえず、うちで持ってる子から、当たってみますわ。」と、一体どういう仕組みなのか分からないけど、お抱えの女の子の中からピチピチプレミアムに合いそうな条件の子を見繕ってくれることになった。

「田附さんは、たまに東京には来るんっすか?」
「うん、ちょいちょい来てるで。」
「じゃあ、次のタイミングで女の子と会えば良いですね。」
「来週やけど、大丈夫?」
「べつに明日でも良いですよ、何人かなら。」

 赤木くんとの打ち合わせの後は、インターネットのスカウトメールで捕まえた女の子ら数人と、新宿東口で会うことになっている。まだまだ確実とは言えないけど、何となく女の子の確保に関しては、大丈夫そうな気がしてきた。とりあえず、ひと安心やわ。


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