この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百十五話「無限ループ」

time 2017/04/07

第二百十五話「無限ループ」

 やはり予想通りの展開で、クラブ「椿」についた途端に、会長からの説教が始まって、結局、朝まで延々と美味しくない酒を飲んで、夜を明かした。とにかくデカい声で、休むことなく罵倒され続けるのは辛いんだけど、今の家庭の事情と考えると、なにもなく真っすぐに自宅に帰るのに比べれば、こっちの方が楽な気もする。

 ソープランドの買収に長い時間を要し、さらに工事が大規模化したために工期が伸びた。このため、開業準備が整った段階で、すぐにでも本格的な営業を開始したいと会長は考えている。それに対して、女の子の勧誘状況や、システムの詳細、告知方法など、俺が担当であるソフト部分の準備が不十分で、会長の求めるレベルに達していないというのが、怒りの原因だった。

「お前がやるんやで、分かってんのか?」
「はい、分かってます。」
「真剣に取り組んで、これか?」
「え、あ、いや・・・」
「お前がやるんやで、分かってるか?」

 とにかく、こんな感じの無限ループだった。もちろん、俺自身もただ遊んでいるだけではなく、出来る限りのことには取り組んでいるから、会長からの指摘に対して意見をすることもあるんだけど、「それはええ。でもな、田附・・・お前。」という一文を挟んで、また再び、無限ループへと戻っていく。下手に意見をすると、さらに燃料を注ぐことになり、会長の怒りが増幅していく。

「働く女の子が、風俗の中心や。どうするねん!」
「あの、グループ各店に協力を求めています。」
「それはええ。でもな、田附・・・お前。」
「はい。」
「で、何人が紹介されてきてん?」
「まだ、ひとりもいません。」
「働く女の子が、風俗の中心や。分かってるんか!」

 実際のところ、女の子の募集に関しては、最近流行っているスカウトメールというものを使っている。風俗で働きたい女の子たちがプロフィールや写真を公開していて、それを閲覧した風俗店のスタッフが、店で働いて欲しいと思う女の子に声を掛けるという画期的な仕組みだ。ただ、スグにお金が欲しいという訳アリの女の子たちにとっては、いつオープンするのか分からない店舗からの誘いには興味を示さず、営業中の店舗には太刀打ちできない状況が続いていた。今後は、オープン時期が確定するので、徐々に女の子を確保していけるはずだ。とはいえ、現状においては、獲得人数がゼロだから、この件についても会長に報告できる段階にはない。

「よっしゃ、帰ろ。」
「はい。ごちそうさまでした。」

 会長から解放されたのは、午前六時半。いつもにも増して、長かった。きっと会長自身も、ソープランド開業には気合が入っているから、その分、説教も力強くなったんだろう。それにしても会長は、四捨五入すれば五十歳になる年齢なのに、相変わらず元気すぎる。四十を過ぎたら丸くなるのかもしれないと期待していたのに、全然、勢いが衰えてないやん。

「浩平ちゃん、ちょっと教えて。」
「なんですか?田附部長。」
「あのな、女の子の募集の件やねん。」
「はい。」
「そろそろ本気で集めて行く時期やねんけど。」
「そうですね。」

 ピチピチグループが買収したソープランド「宝石」のすぐ隣にある日本一のソープランド「フォーナイト」で店長をしていた田村浩平は、新店舗の店長をやってもらうことになった。会長がどこの誰と交渉したのか、もしくは誰とも交渉せずに単に腹を括ったただけなのかは不明だけど、「あの元フォーナイトのやつを店長にしろ。」というお達しにより、店長就任が決まった。

 ちなみに、新店舗の名前は「ピチピチプレミアム」で決まっており、俺が担当役員で、浩平が店長という体制で、グランドオープンを迎えることになる。また、フォーナイトで働いていた元ソープ嬢のキョウカさんも、女の子への講習員として、プレミアムで働くことになっている。

「たぶん、十二月中旬にはオープンになるで。」
「あと五カ月ですね。」
「まだ五カ月もあるもんな。」
「いや、色んな準備を考えたら、五カ月しかないですよ。」
「そ、そうなんや。頑張ろな、浩平ちゃん。」


sponsored link

down

コメントする