この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百九話「反省」

time 2017/03/30

第二百九話「反省」

 シズエのように包丁を持ち出して追い回されるようなことは無かったけど、それでも身体のあちこちをグーで殴られたり、枕で頭を叩かれたりと、完全なサンドバック状態のまま、俺は謝り続けた。とにかく「もうしません!」と「許してください!」を繰り返すだけの悲惨な状況であったということを必死で説明したら、ミカが頭をなでて慰めてくれた。

「今日は自宅に帰るの?」
「朝方には帰るつもりやけど。」
「大丈夫なの?」
「俺の心はズタボロやで。」
「それは大変だ!まずはエッチを処方します!」

 さすがの俺でも、今回の一件には、かなり反省した。もう、同じことを繰り返してはならない。だから、ミカには新しい携帯電話を買い与えて、俺の方には「西城さん」という名前で登録した。会いたいと思った時には「ミーティングしたいです。」、ご飯に誘う時には「会食しませんか?」、ミカの部屋に行くときには「近距離の出張です。」という風に、仕事を装ったメッセージをやりとりすることに決めた。

「本日は、ご出張でしょうか?」
「近距離の出張の後、明朝には帰宅の予定です。」
「懸念事項はありませんか?」
「かなり気分が落ちておりますので。」
「それは大変ですね。まずは、えっと・・・」

 ほとんどのやりとりに関しては、仕事っぽい言葉でもやりとりできそうだけど、「エッチ」などの具体的なことに関しては、言葉を置き換えようがない。いや、そういう内容についてメッセージをやりとりすると証拠が残るから、どうしても置き換え不能な言葉を伝えたいときには、電話をするということにした。

 あと、これはミカとは直接関係がないけど、自分の身の回りの物を他人に覗き見られたり、盗まれたりする危険性について考えてみた。そして、これまで店のオフィスに置きっぱなしになっていた通帳や実印、役所関係の書類などを、常に自分の目の届く範囲で管理するために、カバンに入れて持ち歩くことにした。ミカと会う時には、そもそもカバンを持って行かないことも多かったけど、これからは仕事でもプライベートでも、カバンは肌身離さずに持って歩くことにする。

「ほんまに、反省してるんやろな。」
「ちゃんと反省してます。サエコさま。」
「口だけやったら、許さんからな。」
「日々、自分の行いを反省して、できることから実行します。」
「例えば、なに?」
「えっ?」
「なにを実行してるの?って聞いてるの!」
「あの、あれ、サエコから貰ったバッグを常に持ち歩いたり・・・」
「なにそれ?」
「どこでもサエコのことを意識して、変なことはしないように・・・」

 苦し紛れに発した言葉に、なぜかサエコは満足そうな表情を浮かべ、「このバッグのことを私だと思って、いつでもどこでも監視されてると思って、しっかりと行動するんやで!」と、ほとんど俺が言った内容と同じことを、まるで自分で考えたかのように俺に言った。とはいえ、浮気発覚から一週間も経っていないのに、こんな感じで普通に接してくれる能天気な嫁には、心から感謝している。

 去年の今頃は、ちょうどミカとの関係がギクシャクしていて、年末までに一度は完全に関係が消滅してしまった。そして、今年は、今回の一件があった。俺ってもしかして冬になると女性トラブルが起こる体質なのかもしれない。いや、ちょっと待て。ということは、もしかして俺が、常夏のビーチリゾートのようなところに行けば、ずっとモテモテっていうことか。

「もしもし、西城さん。どうされましたか?」
「あ、今、奥さんと一緒なのね?」
「はい、もう目前なんですよ。」
「じゃあ、また機会を改めます。」
「かしこまりました。あ、明日は私、出張ですので!」


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