この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百八話「パーティ」

time 2017/03/29

第二百八話「パーティ」

 部下と一緒に楽しく酒を飲んで、そのままベッドに倒れ込んで、朝まで寝てしまった。あまり寝付きの良い方ではないから、酔っぱらったままの勢いで寝た方が、しっかりと深い眠りに入れて、翌朝も気持ちよく目覚められる。昨晩は、うちに帰ってきたらサエコが起きていて、何か話をしたような記憶があるんだけど、定かではない。

「で、誰なん?」
「いや、店の女の子やって。」
「店の女の子に、“愛してる?”って聞くん?」
「お客さんのことを愛してる?って意味で聞いたんやって。」
「ホンマに?っていうか、それで納得すると思ってるん?」

 本来なら、気持ちよく目覚められたはずの朝だけど、今日はちょっと様子がおかしい。そもそも、自分から自然に起きたわけではなく、腹に激しい痛みを感じて、飛び起きた。そして、まだ半分くらい頭が寝ている状態のままで「ミカちゃんって可愛いの?」というサエコからの尋問が始まって、現在に至る。

「ケータイをお風呂に持って入るって、店の子が。」
「ええ、どういうこと?」
「自分のケータイを見たらええやん。」
「え?」
「昨日の夜のやりとり、自分で見いや。」
「は、はい。」
「分かった?で、誰なん?」

 もう何の言い訳も効かない状況であることは理解できた。だから、下手にサエコからの詰問に対して抗うべきではないことも分かった。問題は、サエコがどこまで過去のメッセージを読んだのかということだ。まずは、それを把握することが重要だ。

「ほんま、店の子やねんって。」
「じゃあ、店の子と浮気してるってことやな。」
「いや、浮気って・・・そんなアホな。」
「“もちろん、愛してるよ!”とか、“もう寝たのかな?ヒロキ君”って、店の子とする会話と違うやろ?アホ!」
「そうやねんけど。あの、いや・・・」

 ベッドで寝転がりながらメッセージのやりとりをしていて、そのまま眠ってしまったんだろう。どうして自宅の方に帰って来たのかさえ、あまり記憶が鮮明ではないけど、とにかく帰って来てベッドに入った。そして、ミカとやりとりをしていたら、こんなことになってしまったようだ。俺、目覚めてからずっと、ベッドの上に正座したままやねん。ほんま最悪や。

「早く、認めて謝りや。」
「許してくれんの?」
「何を?」
「え、いや。」
「なんか許してもらわなアカンことしたん?」
「えっと・・・」
「タヅケヒロキくん、どうしましたかー?」

 もしかしたら、過去のメッセージを全て読まれたわけじゃないのかもしれない。いや、サエコの性格からして、他人のケータイを覗き見る行為に対して抵抗があるだろうから、画面に表示されている部分のみを見て、怒っているのかもしれない。うん、たぶん、そうだ。

「女の子を扱う商売やねんから、色々あんねん!」
「え?」
「風俗で働いてんねん、俺は。」
「だから、店の子とセックスして、写真を撮るんや。」
「え?」
「ミカちゃん、綺麗な子やねぇ。」

 これは、どっちだ。実際にケータイをいじったのか。いや、サエコとは長い付き合いだから、俺がやりそうなことを予想して、カマをかけているだけかもしれない。結婚する前だけど、サエコにハメ撮りしても良いかって聞いたことがあるから、それを思い出して探りを入れいている可能性が高い。

 だから、明らかにサエコが写真を見たということが確認できるまでは、俺の方から余計なことを話さない方が良い。謝った途端に、この勝負は終わりや。サエコなんかの心理作戦に騙されて、ホイホイと罪を認めるわけにはいかない。これまでの人生で踏んできた場数が違うねん!

「福岡にも一緒に行ったんやね。」
「あ、ごめんなさい。」
「なに?聞こえへん。」
「浮気しました。ごめんなさい。」
「はぁ?」
「俺が悪かったです。二度としません。」
「もっとハッキリと大きい声で言えや、アホ!」

 長期戦になることを覚悟したけど、サエコの口から「福岡」っていう言葉が出た時点で、もう全てを見られてしまったことを確信し、諦めた。俺の完敗で、試合終了だ。手をついて深々と下げた頭に、かなり激しい衝撃がきたけど、ここはもう耐えるしかない。

「なんか、お城の写真もあったねぇ。」
「は、はい。」
「大宰府、私、行ったことないわ、福岡。」
「はい。」
「パーティ、一緒に行ったんや。」
「は?」
「ミカちゃんが、またパーティに行きたいって言うてたわ。」
「め、メッセージで、ですか?」
「そうや、今度は私も連れて行ってよ。」
「あ、はい。」
「パーティって、どんな服を着て行ったら良いんかな?」
「えっと、どうですかね。」
「買うてくれるよね?新しい服。」

 どうせスグに全員が裸になるパーティだから、誰も服装なんか気にしてないって反論しそうになったけど、今の俺には発言権は認められていない。どないしよ、ミカと別れなアカンのかな。嫌やなぁ。ミカと別れるなんて、寂しい、寂しい、寂しい。


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