この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百六話「ハードとソフト」

time 2017/03/27

第二百六話「ハードとソフト」

 ピチピチグループを代表する最高の店舗を作らなければならない。これまで会長から褒められたことなんて数えるほどしかないけど、雄琴のソープランド開業プロジェクトを任せてもらえたということは、俺のことを認めてくれている証拠だ。これは絶対に失敗できない。必ず成功させなければならない。こんな風に気持ちだけは昂ぶっているんだけど、開業までの道のりは遠い。

「これ何ですか?めっちゃ高いですけど。」
「耐震工事ですわ。柱を補強するんです。」
「これをしないと危ないんですか?」
「大きい地震があったら、バッシャーンですわ。」
「ええ、バッシャーンは嫌ですね。」
「そうでっしゃろ?」

 会長が連れてきた建設会社のオッサンと連日のように打ち合わせをしているんだけど、日を追うごとに金額が積み上がっていくので、正直、ビビっている。これまでファッションヘルスしか関わったことがない俺にとって、いわゆる待合室となる空間に対して、一千万円以上の金を注ぎ込むなんて、正気の沙汰じゃない。でも、会長が強気だから、俺はそれを信じるしかない。

「お前の責任は、ソフトの方や。分かるな?」
「ソフトの方?」
「ハードが入れ物で、ソフトが中身や。」
「あ、それは任せてください。」
「よっしゃ。数時間で十万円弱を払っていただくためのソフトやぞ。」
「分かってます。」

 さすが会長だ。俺がビビっていることを察知してくれている。そして、会長が言う「ソフト」に関しては、俺が自信を持っていることを理解してくれている。俺にとっての風俗と言うのは、もちろん入れ物も重要かもしれないけど、圧倒的に中身の方を重視している。

 立派な入れ物に入った偽物のダイヤよりも、汚い入れ物に入った本物のダイヤモンドの方が、みんな嬉しいに決まってるもん。

「お前、ここの待合室は、待合室と思うなよ。」
「え?どういうことですか、会長。」
「待つための場所と違う。寛ぐための場所や。」
「あ、だから、バーカウンターまで作るんですね。」
「そうや。ここだけでも高級ラウンジとして成立するようなイメージや。」
「分かりました。」

 会長が目指しているのは、ただの高級店ではなく、フォーナイトと並ぶような超高級店だ。だからこそ、入れ物も中身も、どちらも最上級のものでなければならない。エントランスを入ってから、サービスを受けて、店から出られるまでの時間を全て、満足してもらえるような場所にしなければならない。でも、あまり仕事にばかり夢中になっていたら頭がおかしくなるから、しっかりと息抜きもしなければならない。

「ごめん、ミカ。遅なった!」
「良かった。今日も会えないのかと思った。」
「俺もミカに会いたいから、必死で仕事を終わらせてきたで。」
「ありがとう。」
「ほな、行こか。」

 カオルコのお受験のこともあり、しばらく自宅に帰ることが多かったから、ミカと会うのは五日ぶりになる。相変わらず、ミカは本当に美しくて、一緒の時間を過ごしているだけで楽しい。しかも、最近のミカは、俺のことを愛してくれているようで、以前よりも情熱的な交際になっている。最高のパートナーだ。

「最近、パーティにも行けてないね。」
「たまには乱交したいな。」
「主催で、お馴染の人たちで集まるのも良いかも。」
「たまにはホストも、ええなぁ?」
「うん。忙しいかな?」

 関西の乱交やスワップ愛好家たちの間では、俺たち二人は、それなりに有名人になってきている。はじめはミカの美貌にばかり注目が集まっていたけど、何度か遭遇した人々からは、ミカの性への探究心の方が評価されている。そう、俺たちは、性行為の限界を目指すためのパートナーでもあるんだ。

「今週末やったら、大丈夫やで。」
「じゃあ、それで決まり。」
「男女半々で良いんかな?」
「えーっと、男五人と私で、お願いします!」
「一対五ですね。かしこまりました!」


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