この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第二百二話「キョウカさん」

time 2017/03/21

第二百二話「キョウカさん」

 いわゆる“中の人”から、雄琴に関する情報を聞くことが出来るのは、とても嬉しい。とにかく色んなことを聞きたいんだけど、いきなり細々としたことを聞いても仕方がないから、まずはキョウカさん自身が、どうして雄琴で働くことになったのかという経緯に照準を絞ることにした。なぜなら、店で働いてくれる女の子がいなければ、営業することが出来ない業態だから、どのようにして女の子を集めれば良いのかについて、少しでもヒントが欲しいと思ったから。

「いきなり、二十歳で借金が一千万以上あったん?」
「はい、そうなんです。」
「なんで?」
「それは、ちょっと。」
「だって、自分の借金じゃないでしょ?」
「うん。違います。」
「おとこ?」

 キョウカさんからは明確な返事はないけど、おそらくは付き合っていた男が抱えた借金を返済するために、風俗で働くことになったんだろう。もしかしたら、交際相手ではなく、父親や親族なのかもしれないけど、話したくないことを無理やり聞き出すつもりはないので、あまり深入りしない。

「それで、ソープランドで働くことにしたん?」
「ううん。最初は、ヘルス。」
「うちみたいなファッションヘルス?」
「はい。福原の。」
「それから?」
「その店でナンバーワンになったけど、全く足りなくて。」

 神戸の福原の風俗なら、それなりに稼げそうな気もするけど、それでも一千万もの借金を返そうと思うと、やはり不十分なんだろう。おそらく借金をしている相手は、銀行のような真っ当な金融機関ではないから、働いても働いても、利子の返済ばかりしているような状況だったのかもしれない。

「で、そこから雄琴?」
「はい、その店の店長さんからの紹介です。」
「グループ企業なん?」
「たぶん、そうだと思いますけど。」
「まぁ、詳しいことは分からんか。」
「はい、すみません。」
「いや、知ってることだけ教えてくれたら、ええよ。」

 自分の店に置き換えた場合、どういう条件なら、雄琴のソープランドに女の子を紹介するだろう。ナンバーワンの女の子がいなくなるっていうことは、単純にその子の売り上げが無くなるだけでなく、その子を目的にして来店したけど他の子をオススメしたお客さんの売り上げにも影響する。だから、ざっと計算してみても、ナンバーワンの女の子の二倍くらいのダメージを負うことになる。だから、おそらくはフォーナイトの系列グループのヘルスが神戸にあると考えないと理屈が合わない。

「あの、タ・・タ・・・」
「え?なに?キョウカさん。」
「お名前は、何でしたっけ?」
「さっき、俺の名刺を渡したやん。」
「あ、そっか。タフさんですね。」
「タフ、違うわ!」
「あ、タフゥさん、ですか?」
「タフゥって、語尾を上げても違うわ!」
「えっと、タフーさんですか?」
「タフーって、伸ばしても違うっちゅうねん!」

 俺の名前を、タフーって読み間違えたのは、あの西城のオッサンに続いて二人目だ。オッサンの場合は、機嫌が悪い時に、わざわざタフーって呼んで俺を馬鹿にしたりしたけど、キョウカさんは大真面目に間違えているようだ。

「あ、タヅケさんって、部長さんなんですか?」
「そうやで。」
「下の店の店長さんじゃないんですか?」
「そう、下の店を担当してるけど、役職は部長。」
「へー、すごーい。」
「あ、ありがとう。」

 部長っていう肩書きを聞いただけで、これだけ目をキラキラさせて「すごーい」って言ってもらえると、素直に嬉しい。こういう少し天然ボケなところは、お客さんに可愛がって貰えそうだ。多額の借金を負わされたという事情があるにせよ、やはりフォーナイトのような超一流のソープランドで働く女の子には、天性の才能のようなものがあるように思う。

「どうして、雄琴に興味があるんですか?」
「え?」
「色々と質問をされるんで。」
「いや、あの、うちのグループで店を出すねん。」
「雄琴にですか?」
「うん、そう。だから聞いてんねんで。」
「へー、すごーい。」
「今まで、なんで聞かれてると思ってたんや!」

 俺にとってはソープランドに関する貴重な内部事情を聞いているんだけど、キョウカさんにとっては自分の体験談を話しているだけだから、その情報の価値を分かっていないのだろう。客として雄琴のソープに行っても、女の子から聞ける情報は断片的だから、こうしてじっくりと話を聞けるのは、本当にありがたい。

「あの、関係ないかもしれないですけど。」
「え?なに?」
「私、フォーナイトの店長と仲良しで。」
「うん。」
「もし必要なら、今でも連絡取れますけど。」
「あ、そうなんや。」
「私が誘ったら、あっちを辞めて来るかも。」
「あ、そうなんや。って、えーー!!ホンマに?」


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