この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百九十九話「ヨカナイト」

time 2017/03/01

第百九十九話「ヨカナイト」

 俺のお相手のヨシエちゃんは、ジャケットを脱がす前にズボンをおろし、さらにパンツを脱がせて、いきなりプレイを開始した。壁三面が鏡張りのバスタブ付きワンルームでの二時間の戦いは、予定通りの三回戦で終了した。

 フォーナイトでの戦いに全力を出し過ぎたから、もう他の店に出掛ける元気は無く、「時間があるときに通って、雄琴のことを調べ上げます。」と会長に言って、今回の視察を終えた。あれだけのサービスを受けた後だと、どんな店に行ってもガッカリするだろうというのが正直なところだ。ほんま、ヨシエちゃん最高やったな。

「ちょっと、何をヘラヘラしてるの?」
「え?」
「気持ち悪いから、笑わないで。」
「笑うなって、それ、酷すぎやろ。」

 乱交パーティに参加してから、道後温泉の視察、そして、自宅には戻らずにミカの部屋で一泊して、雄琴に日帰り視察、さらにミカの部屋で一泊して、そして今、ミカの故郷である福岡へと到着した。当初の予定とは全く違う流れになっているけど、俺らしいエロ三昧の日々は、めちゃくちゃ楽しい。

「天神っていうのが、一番大きい街やろ?」
「そう。だいたい何でも天神。」
「夜の街って言ったら、中洲?」
「そういうのは私、詳しくない。」
「そっか。」

 いきなり北海道や四国に店を出すことを決めた会長のことだから、今度は九州だと、福岡の出店計画を言い出しても不思議ではない。俺には雄琴のソープランドという大仕事が割り当てられているから、福岡に店を出すとしても、担当を任されることは無いだろうけど、せっかくだから福岡の街については、少しくらい勉強しておきたい。

「福岡は、ご飯が美味しいし、最高だよ。」
「ラーメンやろ?」
「別に、とんこつラーメンだけじゃないし。」
「他に何があるんの?」
「イカとか、サバとか、もつ鍋とか。」
「へー、楽しみやな。」

 ミカ自身、大学から京都に出て来ているので、あまり福岡のことには詳しくなくて頼りない部分もあるけど、ガイドブックを見ながら色々と計画を立ててくれているようだから、とりあえず付いていくことにする。地元に帰って来て、活き活きとしているミカを見ているだけで嬉しい。

「大宰府って近いん?」
「電車に乗って、一時間くらいかな。」
「わりと近いんや。」
「行っても何も無いよ?」
「中高の同級生で、大学も同じだった奴が店をやってんねん。」
「へー、なんの店?」
「梅の、うめの、なんやったっけ?」
「梅ヶ枝餅?」
「そうそう、ウメガエモチ!」

 ミカが高校時代に頻繁に来ていたというラーメン屋さんのカウンターに横並びで座って、ちょっと濃すぎるとんこつラーメンを食べながら、福岡近辺の観光地について質問するけど、だいたい「行っても何もない。」と言われて、結局、ミカの学生時代の思い出の場所を巡るツアーみたいになった。小汚い喫茶店とか、目がチカチカするようなカラフルな雑貨屋とか、まだ大人びた雰囲気を醸し出す前のミカの生活を垣間見て、楽しいと言えば楽しいんだけど、日中の観光と言えば、頼み込んで連れていってもらった太宰府だけだった。

 中高そして大学まで同じだった竹井の店は、大宰府の境内の一等地にあって、ほんの冷やかしで行ったつもりが、とても落ち着く店だったので、ついつい長居してしまった。竹井も喜んでくれたし、行って良かった。ホテルに戻ってガイドブックを見たら、ちゃんと竹井の店「中神茶屋」が写真入りで大きく掲載されていて驚いた。まぁ、福岡で観光地らしい観光地に行ったのは、ほんとにここだけ。

 それでも、福岡の街は本当に食べ物が美味しいし、しかも安いから、かなり満足した。京都みたいに昼間に行ける観光地が少ないのが残念だけど、その分、夜に行くべきところは大量にある。なんだか不思議な街だ。もし雄琴のあとに他の地域の店を任されるなら、北海道よりも、福岡の方が良いな。雪が降るような寒い所より、温かい南の方が、俺は好きやし。

「福岡、気に入った。めっちゃエエわ。」
「そうやろ、ヨカやろ。」
「ミカ、博多弁になってるやん。」
「地元だから。」
「がばいヨカやね。」
「“がばい”って佐賀だから。」

 福岡旅行も最終日、博多駅の構内にある巨大なお土産物コーナーで、福岡名物のお菓子とか、明太子とかを大量に買い込んだ。まさに、福岡に行ってきましたっていう感じの定番のものは、だいたい買ったはず。あまりに大量のお土産を買うことに呆れた表情のミカが呟いた。

「福岡に来とるの、奥さんは知っとっと?」
「ああ、知らん!言うてないねん!」
「福岡の土産を買って帰ってヨカと?」
「ヨカないと!アカンやん!」


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