この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百九十八話「フォーナイト」

time 2017/02/28

第百九十八話「フォーナイト」

 雄琴の街をひと通り見て回ってから、事前に予約してあった湯元屋という温泉旅館にチェックインした。まずはフォーナイトを見てみたいから、さっき電話して、午後イチで迎えのクルマに来てもらうように手配した。

「田附、そのジーパン、履き替えろよ。」
「え?」
「あの店は、ジーパンはNGや。」
「ほんまですか。」
「あと、ジャケットも忘れんなよ。」

 時間通りに到着した送迎車両は、ピカピカに磨き上げられた黒光りしたセンチュリーだった。フォーナイトは二時間程度で十万円弱を支払う超高級店だ。決して安い遊びではない。わざわざドレスコードを設定するのも、高級車での送迎サービスを用意するのも、お客様の満足度を高める効果があるのだろう。

「佐伯さん、フォーナイトは何回目ですか?」
「そんなん覚えてないわ、アホ。」
「やっぱり女の子のレベルは高いですか?佐伯さん。」
「当たり前やろ。日本一やぞ、アホ。」
「佐伯さんが、そういうくらいだから、相当・・・」
「佐伯、佐伯、うるさいねん。アホ!」

 フォーナイトは会員制システムになっている。登録料は、たったの一万円だから、大した会員ではないけど、これによってお客様の側が勝手に特別感を抱く。なぜか会長は、フォーナイトの会員登録を「佐伯」の名前でしているらしく、しばらくは会長のことを「佐伯さん」って呼ばないといけない。久しぶりに会長から「佐伯」って名前を聞いて、楽しくなって名前を連呼してしまったけど、ちょっと悪ノリが過ぎたようだ。店に到着するまでの間、会長は一切無言で、窓の外を眺めていた。

「いらっしゃいませ、佐伯さま。」
「おう。」
「ご案内させていただきます。こちらへどうぞ。」

 外観だけを見れば、本当に営業していないかのような静けさだったフォーナイトだけど、店内には黒服のスタッフが大勢いて、待合室にも三組のお客がおり、賑わっている。待合室と言っても、ファッションヘルスのような雑然とした感じではなく、ホテルのラウンジのような雰囲気で、バーカウンターまである。

「田附さまは、当店は初めてのご来店ですね。」
「はい。」
「写真付きの身分証明書を、お出しください。」
「え?はい。」
「こちら安全上の理由で、コピーを取らせていただきます。」
「えっと。」
「よろしいでしょうか?」
「は、はい。」

 会長、いや、佐伯さんから二人分の代金を受け取ったスタッフは、アンケート用紙を俺たちに差し出してから、清算のために現金を持って姿を消した。十項目くらいのアンケートには、プレイ内容を事細かに指定する質問が並んでいて、客の性癖を丸裸にする。面白い。

「二回戦と三回戦、どっちが良いですかね?」
「そんなもん、好きにせえや。」
「濃厚な二回か、質より量の三回か、悩みますね。」
「お前、今日の目的、分かってるんやろな。」
「当たり前ですよ。やっぱり三回ですね。」

 先ほどのスタッフが戻って来て、アンケート用紙に目を通しながら、さらに細かな内容を口頭で確認してくる。ふと、道後温泉の歯抜けのオッサンの接客を思い出して、同じ風俗業界とは思えない圧倒的なサービスに感心した。ただ、いちいち俺の横に膝まづいて接客されるのは、やはり高級感を表すための演出なんだろうけど、俺には居心地が悪く感じた。

「お待たせいたしました。本日のキャストです。」
「おお。めっちゃ可愛いやん。」
「では、アイコさん。こちらのお客様です。」

 佐伯さんについた女の子は、ファッション雑誌の表紙を飾ってもおかしくないようなモデル体型のスレンダーな女の子で、日本一のソープランドの実力を思い知らされた。一方、俺についたのは、ヨシエちゃんっていう女の子なんだけど、なんていうか佐伯さんの女の子と比べると、二段階くらいレベルが下がっているような気がする。

「ヨシエです。」
「ヒロキです。よろしく。」
「キスしても良いですか?」
「え、いいよ。」

 まだ、待合室のソファーから立ち上がる前に、いきなりペロッと舌を入れられた。容姿も重要だけど、サービス精神が旺盛な女の子が好きだという俺のことを、完全に見透かされてるやん。やっぱり、さすがフォーナイト、日本一のソープランドやわ。


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