この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百九十六話「アウトロー」

time 2017/02/24

第百九十六話「アウトロー」

 職員室に併設されている会議スペースのようなところに座って、ファッション業界ではなく、ファッションヘルスであることを説明して、まずは誤解を正した。それから、高校を卒業して大学に入り、芸能プロダクションに入社して、オヤジが死んで、風俗業界に入った経緯を話していたら、すぐに小一時間が経った。

「俺には良く分からん世界やけど、元気そうで良かったよ。」
「先生も、おかわりなくお元気で、嬉しかったです。」
「また、たまには顔出せよ。」
「先生も、道後温泉に行くときは是非・・・」
「シャラップ!そんなことデカい声で言うなよ、アホ。」

 松山に来ることが決まったときから楽しみにしていた西村先生との再会が果たせたから、次は、藤枝先生に会いに行かなければならない。先生と言っても、俺の同級生で、二年前に東京から戻ってきて親の病院を引き継いだ院長先生だ。

「えらい立派な病院やん。」
「久しぶりやな、田附。」
「先生、めっちゃ儲かってるんとちゃうの。」
「田附先生ほどではございませんよ。」
「またまた、先生。ご謙遜を。」

 高校時代に仲の良かった奴らは、ほとんどが医者になっている。元々、西日本各地の開業医の息子たちが集まるような高校なので、産まれたときから医者になるために育てられたような超エリートたちだ。もちろん、官僚になったやつとか、大手企業に入社してバリバリやってるやつもいるけど、俺みたいなアウトローは他には聞いたことがない。

「今度、道後温泉でヘルスをやるねん。」
「お前が?」
「まぁ、俺は出資者って感じやな。」
「すごいやん。」
「店の子が性病になった時とか、よろしく頼むで。」
「アホ、俺は小児科や。性病は知らん。」

 大した話をするわけでもないけど、同級生と一緒に話をしていると楽しいものだ。学生時代の藤枝は、ずっと机に向かって勉強しているというイメージの固い人間だったけど、今では病院の看護婦さんたちに下ネタを連発したりして、随分と軟派な男になっていた。同級生と会うと、こういう当時と今とのギャップが面白い。

 あと何人か、この近くで開業医をしている友人にも会いに行きたいんだけど、もうそろそろ道後温泉に向かわないと集合時間に間に合いそうにない。気分的に少し落ち込んでいたけど、西村先生と、藤枝に会えて、少し元気になった。ほんとは女の子に優しく元気づけてもらう方が良いけど、たまにはオッサンと話をするのも良いもんだ。

「田附、どうやった?」
「え?会長、何がですか?」
「お前、地元の人間に聞き込みに行ったんとちゃうんか?」
「あ、そうです。あの、道後温泉は観光客が多いって言うてました。」
「そんなことぐらい、俺でも知ってるわ!アホ!」

 今日は、色んな人から「アホ」って言われる日やな。でも、高校時代の恩師と旧友に会って話している時に思ったけど、俺は別に偉くなりたいとは思わないから、みんなに「アホ」って言われてるくらいが快適で、楽しいわ。だって、エリートの中で育ったアウトローやもん。

「石川だけ居残りで、他は明日の朝、帰ろか。」
「はい。」
「石川、頼んだで。」
「はい、会長。京都に戻り次第、ご報告に伺います。」
「鮫島、お前はどうする?」
「明日の朝イチで、飛行機を取ってます。」
「そうか、分かった。栗橋は?」
「明日は京都に帰って、水曜からすすきのです。」
「よっしゃ、ほな、メシ食ってから、飲みに出よ。」

 いやいや、なんで俺には聞いてくれへんの。馬鹿にされるのは良いけど、無視されるのは寂しい気持ちになるからアカンねん。もうそろそろ長い付き合いなんだから、会長もそれくらい理解しておいて欲しいわ。

「田附、ちょっとコッチ来い。」
「は、はい。会長。」
「お前、次の火曜日、空いてるな?」
「は、はい。」
「他の奴らには、まだ黙っとけよ。」
「え?はい。」
「二人で、雄琴のソープを視察に行くぞ。」


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