この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百九十二話「出張予定」

time 2017/02/20

第百九十二話「出張予定」

 店長候補として入店してから一カ月が経った和臣は、女の子たちからの信頼を勝ち取り、二人のマネージャーを従えて、俺の期待以上のスピードで成長している。プリプリが自分の手から離れてしまうような気がして少し寂しくもあるけど、俺自身が好きなように動き回れる状態になったことが嬉しい。別に大した仕事はしてないとは言え、煩わしい日常の業務から離れることが出来れば、自由に出張にも行ける。

「今度、どっか出張に行こか?」
「出張?」
「うん、三泊四日くらいで。」
「いいね、行こう!出張!」
「どこがいいかな?」
「わたしの地元とか、どう?」
「ミカの地元って、福岡?」
「そう。」

 ここ最近、ミカの部屋で朝を迎えることが多くなった。ミカと思い通りに会うことが出来なかった時期も、ずっと飲み歩いて朝帰りをしていたから、明け方に帰ってくる俺に対して、サエコから特に文句を言われることはない。逆に、亭主元気で留守がいいってくらいに思ってるんじゃないかな。

「来月の最初の週末あたりなら、行けるかも。」
「再来週やな。」
「木曜と金曜を休んで、三泊四日とか。」
「ちょうどええかもな。」
「今日、休みの申請をしてみるね。」

 来週末の土日は、本物の出張が入っている。まだ「視察に行くから週末の予定を空けとけ!」という電話がかかってきただけだから、どこに行くのかさえ知らないけど、二週連続で視察なんてことはないから、再来週の木曜日からなら大丈夫そうだ。また急に仕事の予定が入ったりして、ミカの機嫌を損なうのが心底怖い。

 個人的に、今のバランスが気に入っている。仕事では好きなように思い通りのことが出来るし、大体のことが上手く進む。自宅にはサエコがいて、二人の娘もいて、たまに家族の真似ごとのようなことをして、とても安定した暮らしがある。そして、ミカとは一緒に非日常的な楽しみを徹底的に追い求めることができるけど、常に適度な緊張感がある。他人から見れば、おかしな日々かもしれないけど、俺にとっては、これが楽しい。

「ただいま。」
「おかえり、ご苦労様。」
「うん。カオルコ、もう起きてるやん。」
「もうすぐ幼稚園の年長さんになるから。」
「うそ?」
「ほんまやん。来年からは小学生やで。」
「あ、そうなんか。」

 帰宅した直後は、まだ気持ちを自宅モードに切り替えられてないから、どこか他人事のような気がするけど、いつの間にかカオルコも成長していた。サエコが、エスカレーター式の有名校に入れたいと言って張り切ってるから、俺もそろそろ面接の練習とかをしなければならないのかも。

 今日は夕方から店の全体ミーティングがあるから、午後から出勤すれば良いと思って、パジャマに着替えて寝る準備をしていたら、クリちゃんからの着信が入った。どうせ札幌の愚痴だろうと思って無視していたら、何度も何度も繰り返し着信が入るので、面倒くさいけど電話に出た。

「もしもし、栗橋店長、おはようございます。」
「ああ、田附部長。おはようございます。」
「なに?なんかあったん?」
「次、雄琴らしいですよ。」
「オゴト?」
「はい、琵琶湖の雄琴です。」
「まじで?ソープやん。」

 クリちゃんの話によると、来週末の視察の目的地は、滋賀県の雄琴らしい。雄琴と言えば、日本国内の風俗街の中でも極めて特殊な地域のひとつで、ファッションヘルスやピンクサロンなどとは一線を画する風俗業界の最高峰であるソープランドという営業が認められている場所だ。

 さらに、クリちゃんの話によると、すでに雄琴でソープランドの買収話が具体的に進んでいるようで、会長が「田附にやらせる。」と言っているらしい。昨晩、すすきののニュークラで飲みながら、クリちゃんが直接聞いた話だそうだから、かなり信憑性は高そうだ。

「来週末からの出張、長引くかもしれん。」
「大きい仕事やねんね。」
「サエコ、俺、ビビるくらいデカい仕事するかも。」


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