この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百八十三話「お土産」

time 2017/02/07

第百八十三話「お土産」

 すすきの視察のあいだ、かなり頻繁にミカとメッセージのやりとりをした。いきなりの出張で気分を害していたけど、どうにか機嫌が直りつつあり、俺が京都に戻ったら真っすぐにミカに会いに行くことを条件に、許してもらえることになった。俺も早くミカに会いたいから、願ったり叶ったりだ。

「ただいま。」
「あ、ヒロキ。おかえり。」
「ほんま、ごめんな。」
「うん、かなりショックだった。」
「会うてくれて、ありがとう。」
「すごい荷物だね。」
「そうやねん。空港から直行で来たから。」
「嬉しい!」

 考えてみれば、俺が自宅でサエコと一緒に居るときに「付き合おう。」って電話をくれた後から、ずっと会えない状態が続いていたから、三週間ぶりの再会だ。グレーのトレーナーに、細めのジーンズだけのシンプルな格好だけど、相変わらずメッチャ可愛いな、ミカは。

「あ、これ、お土産。」
「なになに?」
「開けてみてや。」
「うん。あ、ロイズのチョコレート。」
「そう。」
「ってことは、北海道?」
「そうやねん。」
「行き先は内緒じゃなかったの?」
「ミカには教えてもええと思ったから。」
「嬉しい!」

 実際のところ、すでにピチピチグループの北海道進出の話はまとまっていて、栗橋店長による第一号店のオープン準備に入るわけだから、もう情報を公開しても大丈夫そうだ。だから、秘密を教えてもらえたと喜んでいるミカを見ると、ちょっと後ろめたい気持ちもするけど、喜んでくれているんだから、それはそれで、まぁ良いか。

 そういえば、今日の便で俺たちと一緒に戻る予定だったはずのクリちゃんは、突然の北海道進出隊長の就任によって、あと数日、北海道に居残りになった。会長による半ば強制の居残りだけど、もし俺があの店を任されるとしたら、やっぱりあと数日は札幌に残って、ライバルになるファッションヘルスを周って情報収集をしていたと思う。がんばれ、クリちゃん!すすきので!

「今日は、肉でええかな?」
「北海道帰りで魚は飽きたんでしょ。」
「そうそう。」
「あ、北海道って、あんまり言わない方が良いね。」
「う、うん。」
「ごめんなさい。気を付けます。」

 今晩は、とにかくミカとの関係修復が優先だから、こないだの「付き合おう。」に関する話をすることは避けるけど、こんな風に二人だけの隠し事のようなものがあると、お互いの距離感が縮まって、さらに良い感じになる。

「Hは、どうだった?」
「エッチ?」
「違うよ!ほら、出張先の。」
「ああ、Hな。H。」
「イニシャルトークです。」
「Hは、綺麗な街やったで。」
「私も、Hに行きたいよ。」

 他の人に聞かれたら完全に誤解されるな。一応、個室になっている店だから、周りの目は気にならないけど、天井から五十センチくらいは仕切りがない作りの半個室なので、隣の部屋の人たちが聞き耳を立てて、驚いているかもしれない。ミカの悪いノリが勢いづいて、デカい声で「わたし、H、行きたいよ!」って連発してる。ああ、こういうのも楽しいな。

「このあと、部屋に行ってもええの?」
「お、Hに行きますか!」
「うん、H、行く行く!」

 まだ依然としてセフレの関係である俺たちだから、出会ったからにはエッチをしないといけない。ちょっと期間が空いたから、また興奮しそう。実際、視察が終わって、札幌の空港に着いてからは、ミカとのエッチのことばっかりを考えていたから、もう今すぐにでも飛びつきたい気分だ。

 こういう時、普通なら俺ばかりが興奮して盛り上がってしまう状態になるんだけど、ミカは違う。ミカはミカで、久しぶりのエッチにテンションが上がっているらしく、急いで店を出ようと、俺の荷物を持ってくれたりして、二人で盛り上がっている感じが良い。

「これ、重いね。何が入ってるの?」
「サエコが、カニを買うてこいって言うから。」
「え?」
「うん?」
「奥さんは、北海道って知ってたんだ。」


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