この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百八十二話「ニュークラ」

time 2017/02/06

第百八十二話「ニュークラ」

 ファッションヘルス巡りに疲れ果てた俺たちは、若い女の子と楽しく酒が飲めたら良いということでキャバクラに行ったんだけど、なぜかノリが良すぎる店で困惑していた。店に入った時から、女の子の服がスケスケであることに違和感を感じていたけど、座って十分ほど経ったら、俺の横に座っている女の子は上半身が裸だし、石川店長は顔を女の子の胸にうずめている。

「この店、キャバクラちゃうの?」
「うん、キャバクラだよ。」
「なんで脱いでんの?」
「これが、すすきのスタイルのキャバクラだから!」
「そうなんや。」

 一軒だけでは本当かどうか分からないということで、もう一軒、キャバクラと名乗る店に行ってみたんだけど、やっぱり同じ。いや、もっと激しくて、ほとんど真っ裸に近い女の子が踊り狂っていたりする。俺の局部はずっと女の子に鷲掴みにされてるし、どないなってんねん。

「もうちょっと落ち着いた店ないの?」
「うちの店よりも落ち着く店なんてないよ。」
「そんなアホな。」
「うお、関西弁でんがな、まんがな。」
「もう、そんなんええねん。」
「お客さん、ニュークラがええでっせ。」
「はぁ?」
「ニュークラって、東京でいうキャバクラのことでんねん。」
「あ、そうなんや。」
「そうでっせ。ほんまでんがな。」
「もうエセ関西弁やめて。」
「あっちのお客さんは、喜んでくれたよ。」

 女の子が指を差す方のボックスを見ると、明らかにガラの悪そうなピンストライプの背広を着た男たちが「色白でキレイやわ!」とか「ええ乳してるやん!」とか「お前も早よ脱がんかい、ゴラァ!」とか、関西弁丸出しで騒いでいる。BGMのボリュームが大きいのに、こっちまで聞こえて来るって、どんだけデカい声で喋ってんねん。ハシャいでるけど、全く目が笑っていない。あれは金融屋か何かやな。こわい、こわい。

 女の子から聞いた情報をそのまま会長に伝えると、すぐにニュークラに移動しようという流れになり、宮殿みたいな豪華な内装の店に入って、オーパスワンを開けたところまでは覚えているけど、昨晩の記憶はここで途切れてしまっている。めちゃくちゃ綺麗な女の子に興奮して、とにかく酒を飲みまくって、クリちゃんが会長に怒鳴られまくってて、そういえば、会計のときに会長が「えらい高いな!」って声を上げていたような、上げていなかったような。

「クリちゃん、おはよう。」
「あ、田附部長、酷いですよ。」
「え?何が?」
「途中で逃げたでしょ。」
「ごめん、全く記憶がないねん。」
「俺だけひとり、朝まで会長と一緒だったんですよ。」
「ええなぁ。羨ましいわ。」
「酷い、酷すぎます。」
「あ、そうそう、昨日のニュークラって会計いくらやったか覚えてる?」
「八十万ちょっとですよ。」
「うわ、高っ!」

 朝まで飲んでいた疲れを一切感じさせない凛々しい姿で登場した会長に「おはようございます。昨日は、ごちそうさまでした!」と、いつもより大きな声で挨拶をする。今日の午後の便で京都に戻ることになったから、あまり時間は無いんだけど、今回の視察の最後のミッションとして、すすきの進出にあたって会長が既に目をつけている居抜きの物件を、全員で見に行く。

 すすきのの街に詳しくない俺たちが見ても、その物件の良し悪しが分かるのかどうか不安だけど、会長の後ろをついていくと、昨日のヘルス巡りで何度も前を通りかかったロビンソン百貨店のスグ裏の雑居ビルだった。

「田附、どや?」
「立地的には申し分ないですね。」
「そうやな。」
「家賃も、安いんですよね。」
「でも、客の単価も安いから相応やろな。」
「そうですね。」

「栗橋、どや?」
「いいと思います。さすが会長です。」
「ええか?」
「はい、めちゃくちゃ良いです!」
「ほんまに、ええと思うか?」
「え?はい、ほんまに良いと思います。」
「よっしゃ、ほな栗橋、お前に任すで。」
「え、ええ。」
「お前はもう一回、現場に戻らんなアカンねん!」


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