この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百八十一話「超豪華ラインナップ」

time 2017/02/03

第百八十一話「超豪華ラインナップ」

 風俗の仕事をしているけど、どちらかというと風俗で遊ぶ方が好きだ。石川部長や、鮫島部長よりも、俺の方が風俗で遊んでいる回数が圧倒的に多いから、風俗雑誌の広告や記事では良さそうに見えるけど、実は別に大したことがない店を見抜く力がある。表面を装っても、俺の目には全てお見通しやねん。

 あの二人がジャンケンまでして取り合っていた店は、たしかに札幌を代表する人気店のひとつだけど絶対にハズレだ。残り物から選ぶから好きなのを先に取ってくれたら良いと、大人の対応を見せつつも、目当ての四店舗を上手く確保できた。視察とは言え、好き好んでハズレくじを引く奴はアホや。さぁ、タズヤン厳選の四本立て超豪華すすきのラインナップを思いっきり楽しんだるからな。

「はい、終わりです。」
「え?」
「ありがとうございました。」

 いや、俺、全くお見通せてなかった。ぜんぜん楽しまれへんかった。この業界が長くなって、ちょっと調子に乗っていたのかもしれない。どこが超豪華ラインナップやねん。いや、実際のところ、店の内装に関しては、京都のヘルスなんかよりも遥かに金が掛かっていて豪華やねんけど、仏作って魂入れずっていうんかな。とにかく、中身がアカンねん、サービス精神がないねん。

 昨日の夜に行った店は、まだ一軒目だから仕方がないと諦めたけど、店員には全く覇気がなくて女の子も仕事のために嫌々やってますって顔に書いてあるし、今日の午前中に行った二軒目ではプロフィール写真と全く違う妖怪のようなオバハンに圧倒されてる間に終わってもうたし、三軒目ではプレイが始まる前にミカからのメッセージが入っていないかと携帯電話を取り出した途端に「盗撮は止めてください!」と頭ごなしに言われてムカついた記憶しかないし、何とか一矢を報いたいと思って入った四軒目では七十分コースのはずなのに三十分くらいでタイマーが鳴って「はい、終わりです。」と終了を告げられたし、ほんまになんやねん、すすきのって。

「もしもし、クリちゃん?」
「はい。」
「まだ行けてない店、ひとつ俺に譲って。」
「え?良いんですか?」
「うん。ええよ。」
「激安ヘルス・しまむらっていうのがありますけど。」
「うーん、他の無いかな?」
「あとは、メルセデス・ヘルスっていうのが・・・」
「もう笑わせる気しか無いやん!」

 まだ燃え尽きるわけにはいかないから、泣きのもう一軒だ。ボクシング漫画のタイトルを文字った「明日の尿」っていう店名が面白いという理由だけで選んだ店に向かう。エントランスを入るとスグに、いかにもエロそうな男性スタッフが突っ立っていて、おかしな抑揚をつけた「いらっしゃいませ」で、俺を出迎えてくれた。なんとなく期待できる。店内は決して綺麗ではないし、女の子のプロフィール写真の撮り方も下手だし、女の子を選んでからも随分と待たされるし、店名のネーミングセンスがヤバいし、悪条件が揃ってるけど、俺の第六感が「この店は当たりや!」と何かを感じ取っている。

「はじめまして、ノリコです。」
「ノリちゃん、よろしく。」
「どちらから来られましたか?」
「きょ・・・あ、関西。」
「えー、いいな。行ってみたい、大阪。」
「いや、大阪だけが関西とちゃうから。」

 ノリコちゃんは、まだ入店から三週間くらいの新人で、一応は北海道なんだけど俺が聞いたことがない地名のド田舎から札幌に出て来ているらしい。たぶん二十代半ばくらいなんだけど、話の受け答えが上手だし、サービスの方もネチネチと攻めてくる感じが最高に良い。昨日と今日で五軒目、やっと俺が求めていたものに辿り着けた。 

 店を出て、集合場所になっている喫茶店へ向かう途中、最後に入った店の情報をインターネットの掲示板で確認してみると、やっぱり店が汚いとか、男性スタッフが気持ち悪いなどのコメントに交じって、観光客がほとんど行かないから女の子がスレていないとか、未経験の女の子を丁寧に育ててるとか、風俗通っぽい人たちからの高い評価が多く見られる。

「俺、五軒行って、まともなのは一軒でした。」
「ここの店は、東京でも通じるレベルでしたよ。」
「男性スタッフがだらだら働いている店が多くて・・・」

 会長に対して、俺、石川部長、鮫島部長と、それぞれが自分の行った店の感想について報告する。入店後の流れとか、料金体系とか、女の子の部屋の設備とか、店内のレイアウトとか、会長からの細かい質問が矢継ぎ早に飛んでくるけど、これに答えられないような面子ではない。

「おそくなりました。」
「あ、クリちゃん、お疲れ~!」
「お疲れさまです。」
「おう、栗橋、どうやった?」
「気持ちよかったです、会長。」
「はぁ?」
「一軒だけ、最後の店、行けませんでした。」
「はぁ?」
「一日に何軒も周るの大変ですね。」
「それが俺らの仕事やろが!」
「え、は、はい。すみません。」
「お前、現場を離れてボケてるんとちゃうか?」


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