この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百八十話「店舗リスト」

time 2017/02/02

第百八十話「店舗リスト」

 これから伊丹空港を出発するというクリちゃんから「田附部長、すみません。ちょっと買い物を頼んでも良いですか?」と電話があった。どうせ夕方まで暇だし、軽い気持ちで引き受けたら、歩いて十分くらいのところにある大型書店に行くことになった。

「お会計、五千六百円になります。」
「ええ、五千円、超えてるやん。」

 北海道には美人が多くて、本屋のレジの女の子もかわいい。僅かな可能性にも果敢に挑む俺としては、とりあえずデートの誘いをしたいところなんだけど、この五千円を超える雑誌の大半が、いわゆる風俗情報誌だから、さすがにこんなギラギラしたオッサンの誘いに乗って来る女の子なんていないだろうと諦めた。

 すすきののホテルに戻ってくると、フロントに石川部長の姿が見えた。ちょうど良いから、チェックインが終わるのを待って、一緒にエレベーターに乗って、石川部長の部屋に入った。かなり重いのを頑張って持って帰ってきた紙袋を開いて、チープな作りの応接セットのテーブルに並べる。

「風俗雑誌が五種類で、それぞれ二冊ずつ。」
「はい。」
「あと、求人雑誌、タウン情報誌。」
「はい。」
「これは、札幌市内の地図。」
「はい。」
「それから、スポーツ新聞が二紙。」
「はい。」
「で、無料の風俗求人雑誌も、ついでに取ってきた。」
「北海道にも、あるんですね。」

 地方の風俗雑誌って、エロの表現が直接的で、デザインが雑なものが多い印象だったけど、北海道のものは随分と洗練されている。最近では、全国各地で風俗雑誌を作っている会社があって、京都で売っているものと同じ雑誌の北海道版もあった。これは、俺たちが北海道に進出しようとしていることと無関係の話ではない。

「おい、田附。」
「はい、もしもし、会長。おはようございます。」
「お前、いま、どこや?」
「石川部長の部屋です。」
「何号室や?」
「えっと、なな・・・七〇五号室です。」
「分かった。」

 電話が切れてから三十秒も経たずに、部屋の扉がノックされて、会長が入ってきた。石川部長は、俺が雑誌をわざわざ並べていた意味に気付いて、しまったという顔をしているけど、もう遅い。これからの札幌出張の間、幹部会議は石川部長の部屋で行われることが決定した。

「どや?」
「え?」
「だいたい目星はついてるか?」
「え、何ですか?」
「これから行く店の目星や!」
「あ、いや、まだです。」
「ちゃんとピックアップせえや!」
「は、はい。」

 もうすぐ到着する栗橋専務と鮫島部長を待って、すすきのの風俗店の視察をする予定らしい。ほとんど何の情報も聞かされていない俺は、そんな予定を知らなかったんだけど、慌てて風俗雑誌を見比べて、主だった風俗店をピックアップして、行くべき店のページの端を折っていく。それから、携帯電話でインターネットの掲示板をチェックして、それぞれの店の評判や、人気のある女の子の情報を、それぞれの雑誌のページに書き込んだ。

「何店舗ある?」
「最小限に絞って、二十店舗ですね。」
「二十・・・ひとり五店舗か。」
「え、ひとり四店舗じゃないですか?」
「アホ、俺は自分の勘で回るからカウントすんな。」
「わ、分かりました。」

 鮫島部長もホテルに到着したという連絡が来たから、そのまま石川部長の部屋に来てもらって、俺がピックアップした店を中心に、一緒に雑誌を確認しながら、誰がどの店に行くのかの分担をしていく。

「じゃあ自分、この店、行きますよ。」
「俺も行きたいわ、ここ。」
「え?」
「ジャンケンで決めよか。」
「良いですよ。」

 鮫島部長と石川部長が、自分が行きたいピンサロを巡って、ジャンケン三本勝負なんてしている様子が、なんだか微笑ましい。ついこないだまで、石川部長は「鮫島は認められない。」などと文句を言っていたけど、出張先で少し浮かれているのもあるし、幹部同士でいがみ合っているのも変だと気付き始めたのかもしれないし、とにかく仲が良さそうで嬉しい。

「おそくなりました。」
「あ、クリちゃん、お疲れ~!」
「お疲れさまです。」
「これ、クリちゃんの行く店のリスト。」
「あ、ありがとうございます。」
「じゃあ、それぞれ別行動やから。」
「ちょっと、俺、八店舗も行くんですか?」
「そうそう。みんな同じやで。」
「そうなんですね。八店舗、辛いなぁ。」
「ほな、俺ら先に出るから!がんばってや、クリちゃん。」


sponsored link

down

コメントする