この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百七十三話「四天王」

time 2017/01/24

第百七十三話「四天王」

 今月もまた、店長会議がキャンセルになったと、クリちゃんから連絡があった。石川店長から、会長が大阪のオンナに夢中になっていて、あまり京都に戻ってきていないという情報を得ているから、あまり心配はしていないけど、さすがに二カ月連続で店長会議がなくなるとは予想だにしなかった。

「店長、ちょっとコレ、見てください。」
「なんやねん、前田。」
「これ、掲示板って言うホームページなんですけど。」
「色々と好き勝手なことを書かれてるとこやろ?」
「そうです、そうです。」
「で、その掲示板がどないしたん?」
「コレ、見てくださいよ。」

 前田が指をさしているパソコンのところまで行って、画面を覗き込んでみると、俺がいつもチェックしているSM情報の掲示板と似たような画面が表示されている。前田によると、このホームページは、日本ので最も影響力のある風俗情報専門の掲示板らしい。

「コレ、うちの店のことを書いてるページです。」
「スレッドやろ?」
「そうです。詳しいですね。」
「で、なに?悪口が書かれてんの?」
「いや、プリプリ四天王が、めっちゃ評判です!」
「四天王?」
「プリプリを代表する四人の女の子って意味です。」
「へー、四天王って、誰なん?」

 どうやら、四天王と言うものの、三人が固定メンバーで、残りの一人は時々によって変わるらしい。固定の三人というのは、イツキちゃん、アイミちゃん、マインちゃん。あとの一人は、早番のヨウカちゃんだったり、遅番のイチゴちゃんだったり、わりと古株の女の子の名前が入ることが多いようだ。

「この四人目が誰かって話題が、すごく盛り上がってるんですよ。」
「おもろいな。」
「はい、自分が好きな子を、四天王に入れたいみたいです。」
「その気持ちは分かるわ。」
「逆に、四天王の悪口を書くと、山ほど反論コメントが来ます。」
「親衛隊みたいなのが居るんやな。」
「そうですね。熱狂的なファンがいます。」

 これまでの風俗業界では、雑誌やスポーツ新聞を中心として、店側から発信する情報が中心だった。風俗に行ったことを大っぴらに話す男性客は少ないから、口コミの効果は、ごく限られた友達同士でしか広まらなかった。でも、こういうインターネットのページだと、誰が書いたのか分からないから、日常生活では言えないようなことを堂々と発言できる。もちろん、悪口も数多く書かれるけど、こうやって自分の店の女の子が褒められていると、めっちゃ嬉しい。

「そこ、悪口ばっかりでしょ?」
「たまに褒められてますよ。」
「うちは、女の子の悪口ばっかりで困ってますよ。」
「そうなんですか。」
「女の子のなかには、そこをチェックしてる子もいるし。」
「自分の悪口を書かれてたら、嫌やもんな。」
「かなり気が滅入ってる子もいます。」
「って、え?石川店長、いつ来たん?」
「おはようございます。田附店長。」

 パソコンの画面に夢中になっていて、石川店長が入ってきたのに気付かなかった。相変わらず、石川店長の話題と言えば、会長の愛人の話で、ほとんど京都を留守にしていて、本社にも出社して来ない状態について、グループ全体の士気に関わるから問題だと熱弁している。

「会長の好きにしてたら、ええやん。」
「あきませんよ。」
「なんで?」
「とにかく、あかんでしょ。」

 石川店長は、たぶん俺なんかよりも頭が良いはずなんだけど、何かしら問題を見つけては、それの文句ばかりを言っている。個人的には、店の売り上げを伸ばしていくことが俺の仕事だから、会長が京都にいてもいなくても、あまり関係がないと思っている。急に祇園のクラブに呼び出されたりしない分、自由に時間が使えるから、今の状態も悪くない。

「鮫島店長のとこにも顔出してきたら?」
「いや、あのひと、忙しそうなんで。」
「あ、俺はどうせ暇人やからな。」
「ああ、いや、田附店長、ちがうんです。」
「もう頼むから、さっさと帰って。」


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