この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百六十七話「小寺さん」

time 2017/01/16

第百六十七話「小寺さん」

 美味しいものを食べて、ベッドの上で過ごすだけの関係を「セフレ」だと言うのなら、昼間にどこかでデートすれば良いだろうという我ながら短絡的なアイデアを思いついて、「今度、俺のクルマで、どっか出掛けへん?」と誘ってみた。断られたらどうしようとドキドキとしながら、ミカの口の動きを凝視すること二分くらい。

「いいけど・・・」
「良いけど、何?」
「私の好きなところで良いの?」
「もちろん、ええよ。」
「姫路城。」
「え?」
「姫路城に行こう。」
「う、うん。」

 今日、初めて聞いたけど、彼女は京都の女子大で文学部の史学科、日本史が専攻だったらしく、城とか歴史的な建物を見るのが好きらしい。俺の誘いにスグに答えなかったのは、行くかどうかを迷っていたのではなく、城見物が趣味のオンナなんて気持ち悪いと思われないかと不安に思ったからだそうだ。

「俺、歴史に疎いから、教えてな。」
「うん。任せて!」
「姫路城って、誰の城なん?」
「え?そこから?」
「普通は知らんで、そんなん。」

 ミカは本当に歴史好きらしく、小寺さんとか、黒田さんとか、色んな登場人物のエピソードを話してくれるんだけど、結局、豊臣秀吉くらいしか頭に入ってこなかった。もし俺が、その時代に生きていたとしても、大きな時代の流れとか、権力者とかには全く興味なく、一般の町人として何かの商売をしながら、お茶屋のおねえちゃんを口説いていただろうな。

「あとは、実際に城郭を見ながら、説明するね。」
「あ、うん。その方が、分かりやすい気がするわ。」
「じゃあ、いつにしよっか?」
「来週の土曜日なんか、どう?」
「え?週末って仕事じゃないの?」
「そう。」
「なんだか申し訳ない気がする。」
「でも平日やったら、ミカが仕事やろ?」
「そうだけど。ほんとに休んでも大丈夫なの?」
「ミカとデートできるんやったら、ズル休みぐらいするって。」
「あ、不良社会人を発見しました。」
「不良ちゃうよ、ちょい悪やって。」

 とにかく、無碍に断られることなく、昼間のデートの約束をすることが出来た。そういえば、京都に戻ってきたばかりの頃には、東京で知り合いだった女の子たちに「寂しいから京都に遊びに来てよ。」と言って、毎週のように新しい女の子と京都の街をデートしていた記憶があるけど、それ以来、昼間にぶらぶらと出掛けた記憶がない。いや、サエコとは、どこかに遊びに行ったかな。

 姫路城なんて思いもよらない目的地だから、ちょっと驚いたけど、たまには長距離のドライブも楽しそうだ。京都から姫路は、たぶん百キロちょっと。日帰りにはちょうど良い距離だ。向こうに着いたら、まずは美味しいものを食べてから姫路城に行って、それから帰って来る感じかな。まぁ折角だから、ちょっと大阪のラブホに寄ってから帰って来るのも悪くない。

 やっぱり、ミカとのデートってなると、それなりにお洒落な恰好をして行きたいと思うけど、お城見学には動きやすい服装の方が良いような気もするし、どんな格好が良いかな。普段であれ、何を着ていくべきか迷ったらサエコに相談だけど、さすがに今回は聞かれへんよな。俺の服装よりも、ミカがどんな服を着て来るのか、そっちの方が楽しみやな。

「田附店長、なにをニヤニヤしてるんですか?」
「え、いや、別に。」
「また、女の子のコトでも考えてたんでしょ?」
「違うよ。」
「怪しいなぁ。」
「そんなことより、石川店長、何しに来たん?」
「あ、そうそう。」

 噂好きの石川店長によると、このところ会長が京都を離れていることが多いらしい。たしかに、いきなり夜中に祇園に呼び出されることも無いし、先月の店長会議が無くなったから、もうしばらく会っていない。

「で、京都を離れて、どこに行ってんの?」
「大阪に女が出来たんちゃうかって話ですけど。」
「え?それで女のとこに通い詰めてるってこと?」

 常に仕事のことばかりを考えているイメージがある会長を夢中にさせる女って、どんな子なんやろ。まぁ、俺にはミカがいるから、他には興味が無いけどな。


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