この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百六十四話「不信感」

time 2016/12/21

第百六十四話「不信感」

 ミカとのデートも、今日で六回目になる。週に一度の付き合いだけど、自分のことをさらけ出しながら、とても濃い時間を過ごしているから、ミカは他の誰よりも俺のことを知ってくれていると思う。そして、今日のミカは、これまでよりも明らかに口が軽い。

「ミカの両親は、お元気なん?」
「うん、福岡で元気にしてる。」
「あ、ミカの実家って、福岡なんや。」
「そう。」

 もし隣のテーブルに座っている人が、俺たちの会話を聞いたとしても、普通の会話にしか聞こえないかもしれない。でも、俺は一人、心のなかで大喜びしている。ダメ元で聞いた質問に対して、「無理。」以外の答えが返ってくるのが、めっちゃ嬉しい。

「ミカって、何歳?」
「二十三。」
「そしたら、俺より十六も下か。」
「でも、来週、二十四になるから、十五下。」
「え?来週が、ミカの誕生日っていうこと?」
「そう。」
「お祝いせなアカンな!」
「ほんとに?嬉しい。」

 こういう時、普通の大人なら、心のなかだけで喜びを噛みしめながら、表向きは平然とした表情を浮かべられるのかもしれないけど、俺はどうしてもスグに顔に出てしまう。だから、隠し事をするのが苦手なので、思ったことを口に出す。

「今日は、めっちゃ色々と話してくれるやん。」
「だいぶ安心したから。」
「何に?」
「ヒロキに。」
「え、俺に対して不信感を持ってたん?」
「当たり前でしょ。ナンパだったし。風俗だし。顔でかいし。」
「顔の大きさは、関係ないやん!」

 言われてみれば確かに、いきなり自分よりも随分と年上のオッサンからナンパされて、しかも、風俗店の店長をしているって言われたら、警戒するのも当たり前かもしれん。さらに、顔もデカいし。いや、顔がデカいのは関係ないって。

「もう、不信感は払しょくされたってこと?」
「うん。一緒に居て、すごく楽しいし。」
「嬉しいこと言うてくれるやん!」

 俺に対して警戒心を持ちつつも、性的な探求心の方が勝って、俺と会うことにしたという彼女の告白を聞いて、さらにミカのことが好きになった。俺自身も、多少の危険を冒してでも、性的な欲求を満たすために突き進むタイプだから、やっぱり似た者同士だ。

「じゃあ、不安も解消されたし、今日は部屋に行ってもいいの?」
「私のアパートってこと?」
「そう。」
「うん。いいよ。」

 さすがに断られると思ったけど、すんなりと了承してもらえた。謎のベールに包まれた女っていうのも魅力的だけど、色んなことを教えてくれる子の方が、人間味があって俺は好きだ。

「どこに住んでんの?」
「九条。」
「え?九条で、ひとり暮らししてんの?」
「そう。」
「九条のどこ?」
「東寺の近く。」
「あ、そうなんや。」

 お店の勘定を済ませて、一緒のタクシーに乗り込んで、彼女の自宅へと向かう。かなり郊外に住んでいるのだろうと勝手に思い込んでいたけど、意外にも都心で驚いた。東寺と言えば、五重塔で有名なお寺だ。でも、九条って、女の子がひとり暮らしするようなイメージの場所ではないけど。

「なんで、九条なん?」
「会社まで、歩いて行けるから。」
「そうなんや。」
「うん。」
「何の会社で働いてん・・・」
「あ、運転手さん、ここで止めてください。」

 ミカの後ろにくっついてアパートに入っていく。普通の女の子なら「ちょっと片付けるから、外で待ってて。」とか言いそうなものだけど、そんなセリフも無しに迎え入れられた部屋は、想像していた通り、ほとんど無駄なものが置かれていないシンプルな部屋だ。大きなぬいぐるみだとか、アイドルのポスターだとか、いわゆる女の子らしいモノが何もない。これなら、何も片付ける必要がないわな。

「別に面白くない部屋でしょ?」
「ええ感じ。落ち着くやん。」
「そう?」
「うん。なんかええ匂いもするし。」
「これ、使って。」
「あ、バスタオル。ありがとう。」

 午前一時半過ぎ、プレイを終えたあとベッドでまどろみながら、このまま朝まで寝てしまおうかという考えが頭をよぎったものの、寝るときは自宅に帰るというルールを破ってしまうと歯止めが効かなくなりそうなので、重い腰を上げる。

「ありがとう。またな。」
「うん。今日も、ご馳走様でした。」
「ミカ、大好きやで!」
「もう、うるさい。早く帰って。」


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コメント

  • DNA

    by きん €2016年12月21日 11:15 PM

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