この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百五十八話「ダブルヘッダー」

time 2016/12/13

第百五十八話「ダブルヘッダー」

 ミカちゃんと俺は、エッチに関する考え方だけではなく、その他のモノの見方だとか考え方も、かなり似ている。ブランド品のようなもので自分を着飾るよりも、贅沢な食事や、美味しいワイン、そして、お互いを知るための会話など、そのシチュエーションを存分に楽しみたいという意見で一致した。

「あ、良い雰囲気。すてき。」
「そうやろ?」
「うん、ラブホじゃないみたい!」
「落ち着いた感じの方が、ええんちゃうかなって思ってん。」

 予想通り、ミカちゃんは気に入ってくれたようだ。ゴテゴテとした派手な部屋とか、子供っぽいポップな部屋のラブホもあるけど、彼女との夜には似つかわしくないように感じた。ここを選んで正解だった。

「じゃあ、私が先にシャワー浴びるね。」
「うん、分かった。」

 めちゃくちゃ心地が良い。まるで昔からお互いのことを知っているかのような、遠慮や気遣いが必要ない距離感が、たまらない。シャワーから出てきたバスタオル姿の彼女を抱きかかえて、かなり激しいディープな口づけをしてから、次は俺がシャワーを浴びる。

「よろしくお願いします。」

 ベッドの上で正座をして待ち構えていたミカちゃんは、三つ指をついて俺を迎え入れた。俺が産まれてから三十九年、これまでで最も幸せな時間ではないかと思った。ミカちゃんとのエッチは、それくらい気持ちが良くて、とても濃厚なものだった。裸で絡み合いながら、お互いを確かめ合っている感覚が、めっちゃ良い。

「比べものにならないわ。」
「ミカちゃん、なに?」
「ヒロキくんの方が、断然いい。」
「誰と比べてんの?」

 どうやら、俺は合格したらしい。エッチが満たされないという理由で、あっさりと若い男を見限って、俺に連絡してきてくれたミカちゃんの期待に応えられて、素直に嬉しい。

「昼間の男と比べて。」
「え?昨日、別れた男やろ?」
「違う、それは大阪。」
「昼間の男って、誰?」
「神戸の男。」
「はぁ?」
「もう一人、口説いてくれる男がいたから、昼間に会ってきたの。」

 あかん。随分と年下の女の子だからって、ミカちゃんのことを甘く見ていたのかもしれない。昨日、俺に電話をしてきて会う約束をしていたのに、昼間に別の男とエッチして、相性を確かめてから、俺との待ち合わせに来たのか。もしかしたら、俺なんかよりも上手かもしれんな。

「次、月曜日とかどう?」
「え、ええよ。仕事を早めに終わらせるわ。」
「お寿司がいいな。」
「分かった。ええとこ連れて行ったるで。」

 タクシーで家まで送ると言ったけど、あっさりと断られたから、ホテルの前で解散した。俺も明日、朝から病院に行かないといけないから好都合なんだけど、こんなにあっさりと別れると、彼女の余韻で頭の中がいっぱいのままだ。

「まさか、ダブルヘッダーとはな。」
「はい?なんですか?」
「いやいや、何でもないです。運転手さん。」

 誰もいない家の玄関を開けて、リビングの電気もつけずに暗い廊下を歩いて、真っすぐに寝室に入る。もうシャワーも浴びたから、幸せな気分のままで、すぐにベッドに入る。明日は九時に病院に行くかなければならない。目覚ましを八時にセットして、目を閉じた。

「多少やましいことがある方が、ええ旦那やねん。」

 大きな声で独り言を口に出したあとで、サエコが隣から睨み付けているような視線を感じて、ハっと目が覚めた。もう朝だった。

 ミカちゃんのダブルヘッダーには驚いたけど、俺は俺で、第二子が産まれた翌日に、ナンパした若い女の子とエッチしてるって、ほんまにメチャクチャやな。この非日常な感じが、最高に興奮するわ。まぁ、今から気持ちを切り替えて、日常に戻らんとアカンけどな。

「サクラコちゃん、待っててや。パパが今から行くからな!」


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