この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百五十七話「ミカ」

time 2016/12/12

第百五十七話「ミカ」

 水色のキャミソールに、白の短パン姿で、すらりと伸びた足がめっちゃ綺麗だ。もう口に出して伝えたけど、ほんとうに綺麗やわ、ミカちゃん。なんて言うか、「クールビューティ」という言葉が、一番しっくりくるように思う。

「なんで俺に電話くれたん?」
「昨日、彼氏と別れたから。」
「え、そうなんや。」
「そう。」
「どんな男やったん?」
「大阪の男。」
「何年くらい付き合ってたん?」
「ううん。二回会っただけ。」

彼女なりに少しは心を開いてくれているようで、ナンパした時よりも表情が明るい。まぁ、さっき軽い気持ちで「どこに住んでるの?」って聞いたら、本日最初の「無理。」をいただいたけど。

 それにしても、昨日、彼氏と別れたばかりの女と、第二子が産まれたばかりの男が、こうして高級フレンチを一緒に食べているなんて、妙なシチュエーションだ。ミカちゃんの不思議な世界観と相まって、夢のような気分になっている。

「なんで別れたん?」
「満たしてくれないから。」
「え?なにを?」
「エッチ。」

 詳しく話を聞いてみると、彼女が求める理想の彼氏の第一条件は、性的に満たしてくれることらしい。プライベートな情報に関しては、「無理。」と言って何も教えてくれないのに、こんなディープなことは開けっぴろげに話す。ほんと、不思議な子だ。

「うわぁぁ!」
「え?どないしたん?」
「私、フォアグラが大好物なの!」

 ずっと落ち着いた雰囲気で話していたのに、急に大きな声を出すから驚いた。フォアグラのポアレを持ってきたスタッフの女の子も、俺と同じように驚いているから、軽く会釈をして、「驚かせて、すみません。」という視線を送った。

「もう若い男の子は、ダメかもって思った。」
「それで、オジサンに電話くれたんや。」
「そんなに言うほどオジサンじゃないでしょ?」
「再来週が誕生日で、もう三十九やもん。」
「あ、ごめん。」
「なに?」
「もうちょっと上かと思ってた。」
「なんやねん。酷いなぁ。」
「ごめんなさい。」
「ナンパした時にも、歳、言うたで。」
「そんなん覚えてないわ。」

 まだ、ミカちゃんの年齢を教えてもらえてないから、実際の年の差は分からないけど、おそらく十五歳前後は離れている彼女との話が、めっちゃ面白い。無理やりプライベートなことを聞かなければ、会話は弾む。

「風俗って、その道のプロでしょ?」
「うん、まぁ、そうかな。」
「お上手ですか?」
「え?そら、試してみんと分からんやん。」
「まぁ、そっか。」

 まだほとんどシラフの状態でさえ、こんな調子のエロトークだから、赤ワインのボトルを二本開けるまで、延々とエロに関することだけを話し続けた。こんな綺麗な子と、真剣にエロについて語り合えるって、ほんま幸せ。ボルドーのサンジュリアンが、いつもよりも格別に美味しく感じる。

「俺、普通のことで興奮でけへんねん。」
「アブノーマルってこと?」
「そう。」
「例えば、どんな?」
「大勢でやったり、スワップしたり。」
「楽しそう。」
「え?」
「私、興味があるでございます。」
「ほんまかいな!」

 お会計を済ませて、店の外に出ると、ミカちゃんは俺の左腕を抱え込むように寄り添って「では、そろそろ行きますか!」と言った。普段なら、俺が一方的に口説いて、なんとかベッドに連れ込もうと頑張っている時間なんだけど、今日は違う。いつの間にか二人で合意していて、一緒に楽しもうという流れになっている。

「で、どこに住んでんの?」
「無理。」

 これだけ親密な雰囲気になっているから、彼女の部屋に押しかけるつもりでいたけど、どうやらそれは違うらしい。

「ええ、そしたら、どこでやるの?」
「ホテル?」
「まぁ、そうしよか。」
「京都のラブホ、詳しいでしょ?」
「まかしといてや、ミカちゃん!」


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