この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百四十五話「アイミ」

time 2016/08/16

第百四十五話「アイミ」

 改めて、アイミちゃんとの店外デートの約束をとりつけた。一緒に居るだけで、元気を貰えるような女の子って、実は希少な存在だ。かわいいとか綺麗とか表面的なものも重要だけど、もっと奥の方にある輝きとか温かさとかが、世の男たちを元気にしてくれるんだと思う。

「ほんまに、こんなに貰えるの?」
「ウソをつく意味ないやん。」
「そうやけど。」
「今よりも二割ぐらい多いやろ?」
「え?なんで知ってんの?」
「俺、一応、プロやから。」
「タズヤン、かっこいい!」
「惚れたらアカンで。」

 ライバル関係にあるレッドポイントグループの店に、俺がわざわざ足繁く通っている理由は、あくまで女の子の引き抜きのためだ。アイミちゃんは、レッドポイント本店のナンバースリーくらいの女の子なんだけど、今のプリプリならナンバーワンになってもおかしくない逸材だ。

「でも、レッドの人から怒られへんかな?」
「そら、良い気はせえへんけど。」
「そやろ?」
「いま、レッドにカンナっておるやん?」
「うん。」
「あの子、前は、うちの系列におったんやで。」
「え、そうなん?」
「大きいグループ同士、お互い様やねん。」
「元々レッドに居た子って、おる?」
「先月から、ミカちゃんがうちで働いてるで。」
「ミカ?」
「あ、そっちでは、サチコやったかな?」
「うそ!サっちゃん!」
「あ、仲良かったん?」
「うん、休憩所とかで割と話してたし。」
「ほな、ちょうどええやん。」

 はい、一丁あがり。アイミちゃんは来月、十二月の一日から、うちで働くことになった。女の子の給料や待遇は、明らかにピチピチグループの方が上だから、レッドポイントからの引き抜きは、さほど難しくない。まぁ、こんなことがバレたら、思いっきりシバかれるけど、売れ筋の女の子の確保は、風俗店の店長の重要な仕事のひとつだから、やるしかない。

「あの子って、この子ですよね?」
「はぁ?」
「ほら、この雑誌に載ってるこの子ですよね?」
「そやな。わりと有名な子やで。」
「めっちゃ有名ですよ!」
「う、うん。」
「店長、いつから知り合いなんですか?」
「え、三か月くらい前かな。」
「俺、しっかりお客様にオススメします!」
「うん、頼むで。」

 前田は、自分の好みの女の子ばかりをお客様にオススメする傾向があった。いや、自分の好きな子に関しては熱心にアピールできるけど、自分の好みと合わない女の子を薦めることが苦手だった。でも最近は、お客様ごとに女の子の趣味が違うことを、ここで働きながら感覚的に掴んだようで、女の子をオススメすることに限っては、この店で一番の実力者になっている。こういう奴が、女の子からの信頼を得るねん。頑張れよ、前田。

 さっき前田が持ってきた風俗雑誌のレッドポイントグループの一面広告を見ると、三人の女の子が満面の笑みで写っていて、その真ん中がアイミちゃんだ。アイミちゃんが、うちで働いてくれることになって、めちゃくちゃ嬉しいけど、実はもう一人、雑誌に写真を載せるのはNGだけど、とびきり可愛くて性格の良いレッドポイントの大看板の女の子の引き抜きを狙っている。まぁ、年が明けたら、本気で動こう。

「店長に、来客です!」
「え、だれ?」
「なんかイカつい感じの男性ふたりです。」
「ええ、そんなん嫌や。」
「でも、店長いますかって。」

 年末の風物詩と言えば良いのか、いわゆる縁起物を携えた強面の営業マンたちの来店が増えるのも、この時期だ。うちはグループ本社の方で対応してもらっているから、個別に店舗で購入することはないんだけど、なかには強気な営業マンがいて、「会長さんに確認してみてください。」と言う。仕方ないから、会長に電話する。

「おお、それ、買うたってくれ。」
「ええ?」
「古くからのよしみやからな。」
「そ、そうですか。」
「田附、頼んだで!(ガチャ)」
「あっ、会長!」

 そんなこんなで、あっと言う間に、年末は過ぎて行った。十二月の女の子の売り上げランキングは、超大型新人のアイミちゃんも健闘したけど第二位で、あのイツキちゃんがナンバーワンだった。世の中、何があるか分からないもんだ。


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