この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百二十六話「報酬」

time 2016/07/20

第百二十六話「報酬」

 プリプリ改造作戦を始めてから、昼間の仕事と、夜のミーティングで、ほとんどの時間を費やしてしまっている。だから、家に帰っても、ほとんど寝るだけ。愛しのカオルコちゃんとも一緒に遊ぶ時間がとれない。それでもサエコは、俺のプリプリ就職を、喜んでくれているようだ。

「やっぱり安定収入は、ええなぁ。」
「収入は下がってんねんで。」
「家計を預かる身としては、毎月決まったお金が入ってくるのは安心できるから。」
「そうなんや。」

 もちろん、自分で自分の店を回している方が、儲かるときは儲かる。でも、やっぱり月ごとの浮き沈みはあるから、サエコにとっては、それが不安だったんだろう。俺にしてみれば、早く自分の実力を見せつけて昇給しないと、あまりの薄給で、給料日がぜんぜん楽しくないんだけど。

「ほら、田附、トイレ掃除の報酬や。」
「ありがとうございます、店長。」
「来月は、ちゃんと仕事してくれよ。」
「はい、頑張ります。」

 給料ぐらい普通にくれたら良いのに、どうしてこんな嫌味なことばかり言うんだろう。従業員が気持ちよく働ける環境を作るのが、店長の一番の仕事だと思っている俺とは、全く違う考えの人間のようだ。二回目の給料日も、三回目の給料日も、似たような嫌味を言われ、不愉快な気分になった。

 でも、月を追うごとに、女の子たちの給料は、確実に増えていった。もっと稼ぎたいと俺に相談してきたナミエちゃんも、しっかりと常連客を掴んで、指名の予約が入るようになってきている。自分の企画が当たったと思い込んでいる店長が、早番を一人増員して、四人体制にしたけど、それでも、それぞれの女の子の実入りは増えている。

「いらっしゃいまーせー。」
「いらっしゃいませ!」
「そちらに座ってお待ちください。」
「はい、こちらへどうぞ!」

 吉田は相変わらず頑なに、お客さんをつけあがらせない接客とやらを実践している。もう既に、俺に対して小言を言うのには飽きたらしく、何も言ってこないけど、心中穏やかではないんだろう。でも、そんなん知らんわ。

「タズヤン、今日はシノブちゃん、おる?」
「はい、出勤しております。シノブさんご指名でよろしいですね?」
「うん、60分コースで。」
「かしこまりました。」

 俺のことをタズヤンと呼んで可愛がってくれるお客様が増えてきた。目当ての女の子が接客中でも、俺がオススメした別の女の子を選んでくれるお客様も増えてきた。女の子たちとの関係づくりが上手くいってくると、俺も自信を持って、それぞれの女の子をオススメできる。女の子たちも俺のことを信頼してくれているから、一生懸命に接客してくれる。女の子とお客様、どちらも大切。絶対に蔑んだり、対応をおろそかにしてはいけない存在だ。

「田附、今日も暇そうやな。」
「いや、たまたま時間が空いただけで・・・」
「時間が空いたら、仕事を探せよ。」
「はい、すみません。」
「吉田、お前、ちゃんと指導しろよ。」
「すみません、店長!」

 また、毎月恒例の店長会議前の八つ当たりだ。店長会議の憂鬱さだけは、俺も気持ちが分かるから、ほんの少し、内藤店長に同情するところがある。せめてもの優しさの表現として「いってらっしゃいませ!」と、元気に店長を見送ってあげる。

「田附さん!」
「はい、吉田さん。何ですか?」
「店長から電話です。」
「え?俺に?」
「はい、そうです。」
「今、店長会議中ちゃうの?」
「ちょっと急いで出てください!」

 一時間ほど前に出て行ったばかりの内藤店長からの電話だ。何の用件だろう。そもそも、店長からの電話なんて珍しい。いや、電話で話すのは初めてかも。俺は一応、店長の携帯電話の番号を登録してあるけど、たぶん俺の番号を、店長は知らない。だから、吉田の携帯に電話をしてきたんだろう。

「もしもし、田附です。」
「おい、お前、すぐ来い!」
「はぁ?」
「お前、日本語、分からんのか?すぐ来い!」
「え、あの、はい。分かりました。」

 めっちゃビビった。内藤店長だと聞いて電話に出たら、受話器から聞こえてきたのは、会長の声だった。完全に怒ってたし。

「なんか呼ばれたから、行ってくるわ。」
「え、どこにですか?」
「店長会議・・・。」
「え、田附さん、何をやらかしたんですか?」
「いや、全く分からん。怖いわぁ。」


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コメント

  • めっちゃ気になりますー( ;´Д`)

    by 京都人 €2016年7月20日 10:26 PM