この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百十三話「ほんまでんがな。」

time 2016/07/01

第百十三話「ほんまでんがな。」

 カオルコが満五歳の誕生日を迎え、すくすくと成長している。元気だけが取り柄のサエコは、さらに元気さを増していて、母親であることに喜びを感じ、日々の生活を送っているようだ。我が子の子育てに悲壮感を出されても困るから、サエコのように楽しそうに頑張ってくれるのは、とても嬉しい。そして、サエコのお腹の中には、もうひとつの命が。

「俺な、ほんまにお前のことを愛してんねん。」
「そうなんや。ありがとう。」
「心からやで。」
「うん、分かったって。ありがとう。」
「ほんま、分かってる?」
「はい、ありがとう。」

 全くモテない高校時代の反発から、とにかく女を追いかけまくった大学時代を経て、風俗店のアルバイト、社員、店長、オーナーと、次々と立場は変わったけど、俺の根本的なところは何も変わらず、女が大好きだ。ほんとうに色んな女とひと晩を共にした。合わせて何人かと聞かれても、そんなの覚えていない。

 でも、今、俺は、俺の目の前に居るこの女が、これまでに愛したどの女よりも好きだ。

「どうせ、他の女にも同じことを言ってるんでしょ。」
「なんで、お前がおるのに、言う訳ないやん。」
「ほんまかいな。」
「ほんまでんがな。」

 リビングに座りながら、こんな些細なやりとりをしているだけでも楽しい。ひと晩限りの付き合いにも、お互いに燃え尽きようとする楽しさがあるけど、こんなまったりとした時間の過ごし方の中には、また別の楽しさがある。この女と出会えて良かった。

「そろそろ、仕事に行く時間と違うの?」
「そやな。」
「はやく準備しなさい。」

 また相変わらず、少し長めの休養期間をとった俺は、再び新しい仕事に就いた。働くことは好きだ。お客さんを楽しませるための作戦を真剣に考えて、アホみたいなことにも真剣に取り組んで、みんなが笑顔で帰って行くのを見送るのが、とにかく楽しい。

「そろそろ、奥さんのところにも帰った方が良いんと違うの?」
「そやな。」
「ええねんって言いなさいよ。」

 そう、さっきから寛いでいるリビングは、俺の自宅ではない。そして、話をしている相手は、妻のサエコではない。初めは週一回くらいだったけど、最近では週に三回ほど、ここに来て、彼女との時間を楽しんでいる。

 四条河原町の交差点を歩いていた時、待ち合わせスポットとしてお馴染の世界地図のモニュメントの前で、ケータイをいじりながら暇そうに立っている女の子を見かけた。あまりに美人で、「あんな子と、話がしたいなぁ。」と思うよりも前に、「ちょっと喫茶店でも、行きませんか?」と声を掛けていた。

「無理。」
「え?」
「友達と待ち合わせしてるから、無理。」
「あ、そっか。」

 服部ミカ、二十四歳。俺よりも十五歳下。俺の誘いを、素っ気なく返した彼女だが、俺の差し出した名刺は受け取ってくれた。俺の携帯電話に、知らない電話番号からの着信があったのは、一週間後のこと。

「もしもし、服部です。」
「あ、ミカちゃん。電話待ってたで。」
「え、覚えてくれてたの?」
「当たり前やん。」
「なんか嬉しい。」

 絶対に電話がかかってくるという確信があった。だから、ミカからの電話に驚くことは無かった。すぐに待ち合わせの時間と場所を決めて、高級ディナーを楽しんで、彼女のアパートに上がり込んで、エッチした。

「俺な、ほんまにお前のことを愛してんねん。」
「分かったって。もう、うるさいなぁ。」

 将来設計という言葉と無縁の俺にとって、これからの人生に何が起こるのかなんて興味がない。いや、ワクワクしてるけど、それだけだ。だから、あの頃の俺には、今の俺のことなんて想像がつかないだろう。

 そう、ピンクデザイアを辞めたあと、俺は・・・


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