この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第九十五話「エース」

time 2016/03/02

第九十五話「エース」
 海綿の使い方を説明したら、ミヨちゃんが「ほんまにプロは凄いわ。」と感心しきりだ。風俗関係者の常識は、世間の非常識だ。生理の血が流れ出すのを止めるために、資生堂の商品が活躍しているなんて、知っている人の方が少ないやろな。ピンサロに遊びに来てるお客様でも、気づいている人なんか、ほとんどおらんはず。
 
「どう、できた?」
「うーん、どうなんやろ。」
「指の第二関節まで入れても、触れんくらい奥まで入れや。」
「もう、店長、ちょっと見てみて。」
「だから、最初から言うてるやん。」
 
 木屋町の超人気ファッションヘルスで講習を担当していた俺は、もう数えきれないほどの女の子の裸を見てきた。職場に裸の女の子がいるなんてのも、風俗関係者くらいだろうな。これも世間の非常識。なんかミヨちゃんは、事務机に座って恥ずかしそうに股を広げてるけど、俺、べつに何とも思えへんから、普通にしててくれたら、ええで。
 
「店長、ありがとう。」
「これも仕事やから。」
「めっちゃ恥ずかしかったわ。」
「ミヨちゃんは、うちのエースやねんから頑張ってや。」
「え?ほんまに?わたしがエースか。」
 
 一階に戻って、山下さんに「ミヨちゃん、オッケー。」と耳打ちしてから、俺もお客様の応対をする。すでに一時間待ち。遅番は、女の子が十七人いるから人数には余裕があるんだけど、フラットシート十一席が埋まってしまっていて、これ以上は、どう頑張っても接客が出来ない。
 
 ヤヨイちゃんのところのお客様が出てきた。次のお客様のスタンバイを山下さんに頼んで、フラットシートの清掃を急ぐ。初営業で動きが慣れていないアルバイトの長谷川君に任せてられへん。雑巾を持って二階へ、次はシズカちゃんところが終わったから地下へ、こんなに店内を動き回るのは、三年ぶりくらいやわ。
 
 日が変わって午前一時半、最後のお客様をサツキちゃんが接客中だけど、着替えを済ませた女の子たちが散り散りと帰っていく。漏れの無いように、全員の女の子に「ありがとう。お疲れ。」と声を掛ける。今日が風俗初日の子もおるのに、みんな、ほんまに良く頑張ってくれた。こんなにお客様がいっぱい来たのに、女の子に対するクレームは、一本もなかったで。
 
 受付では、山下さんが長谷川君に「今日みたいなのは特別やから、あと二日、がんばりや。」と、相変わらずの面倒見の良さを発揮している。長谷川君も、山下さんには話しやすいようで、細かな仕事の質問をしている。ここは、俺がおらん方がええかもしれんな。二人の邪魔にならないように、売り上げの帳簿だけを持って、三階のオフィスに上がる。
 
 今日の一番人気は、カヨコちゃん。プロフィール写真が笑顔で、かわいく写ってるからかな。ずっとフリーターをしてきたオシャベリ上手な子だから、多くのお客様を接客して、常連をいっぱい掴んでくれたら嬉しいな。あとは、ミナちゃんとヤヨイちゃん、あとサツキちゃんの三人、山下さんが連れてきた大阪組が頑張ってくれたな。
 
 あかん、今日はもう疲れたわ。まだ、ウダウダと仕事の話を続けている山下さんと長谷川君に「早よ帰ろ。」と言って、追い出すように店外に出して、シャッターを下ろした。タクシーの運転手さんに「お客さん、着きましたよ。」と膝頭を叩かれて、身体を震わせながら目が覚めた。いつの間にか、自宅前だ。
 
 ひとりもお客様が来なかったらどうしようという不安と、山ほど来るかもしれないという期待で、ここ数日、なかなか寝付けない日が続いたけど、結果が良い方に転んで良かった。あと二日間は、オープン記念特価キャンペーン期間やし、明日明後日は週末だから、まだまだ忙しくなりそうだ。
 
「ただいま。」
「あ、おかえりなさい。」
「あれ?まだ起きてたん?サエコ。」

 

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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 

 


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