この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第九十四話「海綿」

time 2016/03/01

第九十四話「海綿」
 店の慌ただしさを見て、遅番で出勤してきた女の子たちが驚いている。昨日まで、静かだったこの建物に、一気に息が吹き込まれた。夕方が近づくにつれ、来客数は増え続けている。店外に待たせるわけにもいかないので、建物のなかには入ってもらうけど、待合室のソファだけでは間に合わない。キッチンやら、三階のオフィスやらに置いてある椅子を持ってきて、とりあえず座ってもらうけど、それでも足りない。
 
「只今、こちらの女の子ならスグにご案内できます。」
「じゃあ、この子で。」
「サヨリさんですね。かしこまりました。」
「うん。」
「お客さま、爪のご確認をさせてください。」
「あ、はい。」
「申し訳ございませんが、こちらの爪切りで爪のお手入れをお願いします。」

 アルバイトの男の子を一人ずつ、早番と遅番に置いているけど、この数のお客様をさばくには、到底スピードが追い付いていない。だから、俺と山下さんの二人で、とにかく片っ端から対応していく。さすがに山下さんもベテランだから、女の子の名前と特徴をしっかりと頭に入れて、お客さんに対峙している。
 

「この子、今日から初めて風俗で働く女の子なんですけど。」
「へー。」
「こっちは、大阪で働いてた巨乳ちゃん。テクニシャンですよ。」
「ほな、この子で。」
「かしこまりました。こちらの消毒液で、手の消毒をお願いします。」
 
 山下さんのオススメした子は、ミナちゃん。本名はジュンちゃん。山下さんが自分で連れてきた女の子を最初から勧めず、新人の女の子に興味が無いと判断してから、さっと勧めるあたりは、なかなか上手い。
 
「ヒロ兄、買い出しの方は落ち着いたけど・・・。」
「おお、吉江。ありがとうな。」
「次は、何したらええかな。」
「ここで、いらっしゃいませって言うて、ソファに案内してて。」
「よっしゃ、まかせといて。」
 
 遅番の女の子が揃ったから、ここで女の子は入れ替えだ。待機部屋のドアをノックしようとしたら、扉が開いて、泣きそうな顔をしたミヨちゃんが出てきた。出会い系サイトから引っ張った子だけど、やはり風俗で働くことに対して、怖気づいたんだろうか。
 
「どないしたん?ミヨちゃん。」
「店長、ごめんなさい。」
「え?え?なに?」
「ほんまに、ごめんなさい。」
「だから、どないしたん?言うてみ。」
「わたし、こんな日に、生理になってもうた。」
 
 ほら、やっぱり素人とプロっていうのは違うねん。今まで、援助交際を繰り返してきたミヨちゃんは、男の扱いには慣れているのかもしれないけど、生理みたいな月のものだけで、深刻な顔になってる。
 
「具合悪いの?」
「ううん。でも、血が。」
「働けるのは、働けるの?」
「うん。でも。」
「分かった。ちょっと、上のオフィスで待っとき。」
 
 またもや、吉江君の出番だ。買い出しボーイとして、昼間だけでも十回くらいコンビニを往復していたけど、今度はもう少し遠くまで買い物に行ってもらう必要がある。本当は、山下さんに行ってもらう方が、説明する手間が省けるんだけど、この時間帯に俺ひとりで対応するのは、ちょっとしんどい。
 
「資生堂のコーナーの人に言うたら、分かるんやな?」
「そう、絶対分かる。大丈夫や。」
 
 不安そうに店を出る吉江を見送って、改めて待機部屋に入る。早番と遅番の子が入り乱れて、ごちゃごちゃだ。早番の子たちは、何人かの女の子だけを残して、他の子は帰らせる。それから、遅番の子たちに向かって「今日、めっちゃお客様が来るから、めっちゃ頑張ってな。お願いします。」とだけ声を掛けて、続々とお客様が入ってくるエントランスへと戻る。
 
 しばらくして、汗だくの吉江が帰ってきた。まだ桜も咲いてない時期やのに、なんでコイツだけは真夏みたいな感じやねん。まだ不安そうな顔をしている吉江が「これで、ええの?」と言わんばかりに、恐る恐る買ってきたものを取り出した。
 
「そうそう、これこれ、資生堂の海綿。」
「あ、良かった。で、これ、何に使うの?」
「女の子のアソコに突っ込むねん。」 

 

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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 

 


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