この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第九十二話「公安」

time 2016/02/26

第九十二話「公安」
 山崎先生が、公安のひとを連れて来た。見るからにボスの風格を漂わせた五十過ぎくらいのオッサンと、その部下が二人。先生は、ボスと顔なじみのようで、図面と照らし合わせながら、テーブルの高さや、照明の数と明るさ、通路の幅などを計測している脇に立って、「私の仕事でっから、間違いは、おまへん。」と自信たっぷりの笑顔を浮かべている。
 
「田附さん、いよいよオープンですね。」
「そやな、ほんま長かったわ。」
「俺も、しっかり頑張るから。」
「はい、期待してますよ、山下さん。」

 公安様ご一行が、先生と一緒に帰って行った。全て問題なし。四人の後ろ姿を見送りながら、風俗雑誌とスポーツ新聞の広告の営業マンに電話をかけて、「予定通り、来週金曜日のオープンで行くから、よろしく。」と、既に広告枠を確保して、レイアウトも完成している広告の掲載にゴーを出す。さぁ、器は出来たから、あとは中身やな。

 今のところ、面接で採用した女の子が十五人。あと、一番最初に面接したトモコちゃんが、もう一度、話がしたいと電話してきたから、たぶん採用するので十六人。それから、山下さんの紹介のジュンちゃんとメイちゃんを入れて、十八人。そやそや、出会い系サイトで捕まえた子が、イクエちゃんと、あと昨日のワカコちゃんで、二十人。やっぱり、あと十人は欲しいな。とりあえず、今日も面接やな。
 四十三人目は、ヨシエちゃん。ヨシエと聞いたら、吉江のことを思い出すんだけど、体型も吉江と似ていて、デカい。ぽっちゃり系の需要はあるから、体型だけで判断するわけじゃないんだけど、めちゃくちゃ汗かきで、店内の暖房が暑い暑いと言って、ダラダラと汗を流しているから、肌と肌の接客があるピンサロには不向きそうだ。不採用。ぽっちゃり担当は既にイズミちゃんが、おるし。
 四十四人目は、チャンファちゃん。中国人の留学生。日本語能力試験という資格で、四級を持ってるらしいけど、簡単な日本語のやりとりも困難なレベル。そもそも、中国人を雇ったら、余計な問題がいろいろと出て来そうなので、不採用。これからは日本人だけを面接に呼んでくれるようにと山下さんに伝える。山下さんは「俺、中国の子も、かわいいと思うけどな。」と不満げにしている。
 四十五人目は、タエちゃん。苗字が江田さんだから「エダタエって、おもしろい名前やなぁ。」って何気なく言ったら、めっちゃ怒って帰って行った。なんか地雷を踏んでもうた。ごめん。不採用。 
 四十六人目は、サトミちゃん。さっきの中国人の留学生よりも、この子の方が中国人っぽいなぁと思いつつ話をしていたら、大学で中国語を勉強したらしく、ある程度の会話は出来るらしい。さっきまで、ここに中国人の女の子が居たと言ったら、やたら残念そうに顔を歪めている。こういうリアクションの大きい子って、お客さんから好かれるねん。俺も好きやし。採用。
 四十七人目は、マユミちゃん。なんか前にも、マユミって子がおらんかったっけ。こんだけ続けて女の子に会ってたら、頭が混乱してきた。今はアパレル関連のアルバイトをしているけど、いつでも辞めて来ますと、やる気十分だ。ただ、アパレル業界の仕事が辛いのは分かるんやけど、俺、あんまり自分の職場の悪口をガンガン言う女の子は、好きちゃうねん。不採用。
 四十八人目は、モトミちゃん。ピンサロ経験者、でも大分県のピンサロ。本当は大阪の風俗で働こうと思ったけど、なんとなく恐そうな気がして、京都の求人を探したそうだ。新聞の折り込み求人には、いくつも募集広告を掲載しているんだけど、モトミちゃんが見た“京都ワクワーク情報”からは初めての応募だ。そろそろ、折り込み広告の担当者を呼び出して「お前とこ、全然来えへんで。」と文句を言おうと思ってたけど、いい子が来て良かった。採用。他の子には内緒やけど、この子には最低保証で一日三万円をつけた。どうしても採りたかってん、この子。
 ピチピチホームだと、昼勤で四万円、夜勤で五万円というのが最低保証の相場だったけど、うちはピンサロだから、さすがに同じ金額は無理。だから、モトミちゃんに対しても、夜勤を条件として三万円という数字を出した。客が来ても来なくても、確実に三万円貰えるのは確かに女の子にとっては嬉しいかもしれないけど、実際のところ、本当に稼げる女の子は、最低保証なんか関係ないくらいに稼ぐから、こんなん必要ないねんけどな。
 四十九人目は、ジュンコちゃん。山下さんのメモには「ハナエちゃんの友達。」と書いてある。ハナエちゃんって誰やねんと思ったけど、あの不採用にしたリョウコちゃんの友達で、自分も興味があると面接に申し込んできて、さらに友達を紹介すると言ってた子だ。なんか、ややこしいな。そんなハナエちゃんの友達のジュンコちゃんは、大阪のミナミでキャバ嬢をしていて、ハナエちゃんと一緒ならピンサロで働いても良いと言っている。普通に話が出来て面白いし、わりと美形の整った顔をしてるから、オッケー。採用。ハナエちゃん、まだ紹介したい友達がいるらしい。
 五十人目からは、面接を山下さんにやってもらって、俺は採用を決めた女の子たちを一人ずつ呼び出して、源氏名を一緒に考えたり、プロフィール写真を撮影したり、新人講習をしたりと、オープン時のサービスのレベルを向上することに専念した。初めての風俗に緊張している女の子には、相変わらずだけど、新宿歌舞伎町ワンダラーのマイの話をした。
「こんな看板つけて、ええの?」
「なんか言われたら外すわ。」
「絶対、すぐに役所の人間が飛んで来よるで。」
「その時は、その時やん。」
「ヒロ兄、能天気やなぁ。」
 オープン前日、発注していたピンクデザイアの大型看板が、やっと届いた。吉江が心配している通り、大きくて目立つ風俗の看板は、京都の役所に目をつけられるかもしれないけど、新参者として木屋町で勝負するには、これくらいの派手なものを付けておかないとダメだ。とにかく、開店だけは思いっきり盛大にやらんなアカンねん。
「女の子は、ちゃんと揃ったん?」
「足りんかった、二十九人。」
「あと一人やん。」
「そうやねん。」
「でも、こんだけ集めるヒロ兄は凄いわ。」
「いや、吉江のおかげやで。」
「はぁ?」
 吉江には言ってないけど、出会い系サイトを通じて知り合ってから、店で働くように勧誘した女の子を合わせて五人、採用した。あとは、ジュンちゃんとメイちゃんの友達が三人と、ハナエちゃんの友達が一人。かなり無理やりな感じはするけど、なんとか間に合わせた。
 風俗雑誌には、「オープン記念特価!全時間帯二千五百円(三十分)怒涛の三日間!」と大きな赤い文字が目立つ広告を載せた。俺の店、ピンクデザイア、明日オープンです!

風俗で働いたら人生変わったwww (コア新書)
水嶋 かおりん
コアマガジン
売り上げランキング: 73,104

※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 


sponsored link