この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第九十話「ミーティング」

time 2016/02/24

第九十話「ミーティング」
 朝、山下さんにも新オフィスの方に来てもらって、ピンクデザイアの初めてのミーティングらしいミーティングをする。もう三年ほど前だけど、同じ店で働いていたから、なにかと話が早い。席数を減らして、フラットシートで寝転がって接客できるピンサロというコンセプトにも、山下さんは「それ、すごいやん。」と理解を示してくれる。
「それから、山下さん、出会い系って知ってます?」
「出会い系って、出会い系サイトのこと?」
「そうそう、それそれ。」
「名前は聞いたことあるけど、使ったことは無いわ。」
「じゃあ、使い方を教えますから。」
「え?田附さん、いきなり何の話なん?」

昨日の晩も、出会い系サイトで出会った女の子と遊んでいた俺は、イクエちゃんっていうその女の子と話しながら、面白いことを思いついた。イクエちゃんは、出会い系サイトを使って、日々、新しい男を捕まえては援助交際をしている女の子だった。まるでセミプロの風俗嬢のようなイクエちゃんを見て、こういう子たちを口説いて、うちで働いて貰えないかと思った。

 風俗店で働けば自分で客を探す手間が省けるし、変な男に付きまとわれるような危険も回避できるし、そもそも一応は法律の範囲内の仕事になるから、逮捕されて前科者になるリスクもない。あと、プロにはプロのやり方があるから、そういうのも教えてあげられるし。実際にイクエちゃんに対して、こんなことを並べ立てて、思いつくままに勧誘したら、うちの店で働いてくれることになった。あの子、舌の使い方が、めっちゃ上手いし、即戦力になるわ。
ほとんど出会い系サイトの使い方の話だけだったけど、ピンクデザイアの第一回ミーティングを終えて、山下さんにはアルバイトの応募の電話対応をしつつ、出会い系の書き込みをチェックしつつ、営業に必要そうな備品のリストアップをしてもらうことにした。そして、俺は引き続き、女の子の面接。今日からは、うちのオフィスで面接だ。
三十三人目は、ヨシミちゃん。どこから声が出ているんだろうと不思議になるようなアニメ声の女の子。身長は、百四十八センチ。ハンドクリームを売る会社をやっていたけど失敗して、手っ取り早く稼げる仕事を探しているという感じ。ひと通り給料形態を説明したら「やっぱり、ピンサロやったら足らんか。」と言うので、「ヘルスの方が稼げるで。」と言ってリリースした。不採用。
三十四人目は、イズミちゃん。まるまるとした樽のような体型で、おかっぱ頭の女の子。まぁ、見た目だけで言えば赤点なんだけど、自分のことをネタにして笑いが取れるのが良い。まだ二十二歳だと本人は言ってるけど、どうみても三十路か、それ以上。かなりの変化球やけど、こんな子がひとりくらい居ても良いのかな。俺が「フラットシートの上で、男の人とふたりで寝そべって・・・」と説明をしたら、顔を真っ赤にしてる。かわいいやん。思い切って、採用。
三十五人目は、インテリ女子のチズエちゃん。黒縁の大きなメガネをかけていて、見るからにインテリっぽいけど、国立大学の大学院で研究しているという本物。富山県から進学で京都に来て、そのまま、ひとり暮らししてるらしい。彼氏がいるけど、バレなければ大丈夫と言っている。もう覚悟を決めている感じが伝わってくる。採用。
三十六人目は、ミサトちゃん。本人曰く、モデル事務所に所属していて、たまにファッション雑誌の仕事をしたり、ファッションショーに出たりしているらしい。たしかに華奢な身体をしていて、脚も長い。こんな子に夢中になるお客さんも、いっぱい居そう。たぶん、スグに辞めてしまう気がするけど、折角だから採用。なんか、めっちゃ良い子が続いてるやん。順調、順調。
三十七人目は、モトコちゃん。友達のサヤカちゃんを連れてきて、一緒に面接して欲しいとのこと。本当は別々に面接したかったけど、次の予定が詰まってるから、二人同時に面接した。正直なところ、サヤカちゃんだけなら採用したんだけど、二人一緒じゃないとダメだと言うので、諦めた。モトコちゃんも、おそらく性格は悪くないんだろうけど、話の途中で顔をしかめるクセがあって、これがかなり見苦しい。なんか話をする気がなくなる顔やねん。ということで、三十七人目、三十八人目、合わせて不採用。
ザウルスの経営者が使っていたままの状態で、ほとんど何もイジってないオフィスだから、殺風景ではあるけど、やっぱり自分の借りている物件で面接するのは、気持ちが良い。女の子に対しても、ちゃんと店がオープンするってことを信じてもらえるから、喫茶店で面接するのとは大違いだ。 あと、俺、ここで面接しながら、またひとつ、新しい女の子の募集方法を思いついてん。
さて、今晩も、もちろん出会い系の女の子と待ち合わせ。かわいい子やったら良いなぁ。話の面白い子やったら良いなぁ。ついでに、うちの店で働いてくれる子やったら、もっと良いなぁ。楽しみやわ。

出会い系のシングルマザーたち―欲望と貧困のはざまで
鈴木 大介
朝日新聞出版
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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。