この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第八十八話「寂しがり」

time 2016/02/22

第八十八話「寂しがり」

朝から晩まで面接をしながら、応募の電話にも対応するのって、思っていた以上に大変だ。店の営業用の小物も買い揃え始めないといけないし、広告の打ち合わせもしないといけないし、オープンイベントみたいなものも考えたほうが良いかもしれない。まさに、猫の手も借りたい状態だけど、すぐに頭に浮かぶのは吉江だけやし。

吉江と言えば、あの横浜の女の子、最高やった。シズエと一緒に何回か行ったことがある北山の開晴亭でフレンチを楽しんでから、木屋町のバーで飲んでいたら、吉江が気に入った方の女の子と語り始めたから、俺はもうひとりの女の子を連れ出して、そのまま、ラブホテルに直行した。吉江くん、ありがとう。

それにしても、出会い系サイトって、凄いな。吉江に教えてもらって、携帯電話をイジってみたら、不倫相手を募集している主婦とか、旅先のワンナイトラブを求める女の子とか、援助交際したいっていう金銭目的の女の子とか、欲求むき出しの書き込みが、ずらっと並んでるやん。伝言ダイヤルを思い出すわ。時代が違えど、やっぱり男の方は、下手な書き込みばっかりやし。あ、面接の子が来た。

二十三人目は、広島県出身のアイちゃん。大阪の有名な芸術大学を卒業したバイオリン奏者の子。イベントに呼ばれて演奏しているそうだけど、件数が多くないから収入が少ないので、夜の仕事で稼ぎたいと考えて、うちに応募したらしい。昼間の活動の拠点が大阪なので、顔がバレないように京都で仕事を探しているとのこと。さすがバイオリン奏者だけあって、おっとりとしてて、話のテンポが心地いい。採用。

二十四人目は、アツコちゃん。俺、良く分からんねんけど、キンキなんとかっていう男性アイドルユニットが大好きで、全国のコンサートに出掛けて、追っかけをしてるらしい。宿代をケチって野宿したり、出来るだけ新幹線に乗るのは避けたり、会員価格で買ったチケットを転売して小銭を稼いだり、追っかけも大変らしい。俺もヘビメタが好きやし、気持ちは分かるねんけど、この子、全く話が噛み合えへんねん。不採用。

面接中、めっちゃ携帯電話が鳴ってるなと思っていたら、さっき出会い系サイトに書き込んだやつを見た女の子からのメッセージばっかりやん。軽い気持ちで「今晩OKな子、連絡ください。寂しがりの三十一歳、会社経営者より。」って書いただけやのに、八件もメッセージが来てる。どの子にしようかと選んでたら、次の子が来た。

二十五人目は、ハナエちゃん。この子は、何日か前に面接したリョウコちゃんの友達で、面接に一緒について来ていた女の子なんだけど、話を聞いているうちに働いてみたいと思ったらしい。わざわざ友達の面接に付き添いで来てただけあって、めっちゃ性格の良い子。一応、リョウコちゃんは不採用だと伝えたけど、その辺はドライに対応するらしい。あと、別の友達をひとり紹介したいと言って帰った。どんな子が来るか楽しみやな。とりあえず、ハナエちゃんは、採用。

二十六人目は、ピンサロで働いた経験があるというシノブちゃん。電話の段階から、かなり押しが強くて、とにかく自分を売り込むのに必死そうな感じで、実際に喫茶店で面と向かってみても、やはりメッチャ押しが強い。二十二歳やねんけど、すでに関西のオバちゃんらしい貫禄がある。以前に働いていたピンサロでは、店長と喧嘩して辞めたらしいけど、こういう子は使いようによっては活きるかもなぁと思う。俺なら、活かすことが出来るはず。採用。

二十七人目は、ミチコちゃん。海外旅行が大好きで、正月にもグアムに行ったんだけど、今年はヨーロッパにも行きたくて、お金を貯めるために風俗でアルバイトしようと考えているらしい。ハキハキと受け答えが出来るし、ニコッとした時に見える八重歯がかわいいねんけど、さっきから周りの視線が、この子に集中してんねん。ミチコちゃん、肌を焼きすぎて真っ黒やん。ちょっと俺の考えてる店のイメージからは、かけ離れてる。不採用。

二十八人目は、ミヨ☆リン。いや、違う違う。この子は、面接の合間にコソコソと携帯電話でメッセージ交換をしてた出会い系サイトの女の子。今晩、京都駅で待ち合わせすることになってる。たぶん、大阪か滋賀の子で、京都の街は詳しくないみたい。十五時過ぎに「今から家を出ます。」ってメッセージで、待ち合わせが十九時だから、もしかしたら、もっと遠いところの子かも。

さて、本当の二十八人目は、サチエちゃん。二十歳。超美人。もしかしたら良家の娘さんなのかもしれない雰囲気をまとっていて、常に伏し目がち。もう十五分くらい話しているだけど、目が合ったのは、最初にテーブルまで来て、挨拶をした一瞬だけ。いや、人見知りなんかもしれんけど、こんな子、ピンサロで働かれへんやろ。不採用。

結局、今日も採用は三人か。まだ、十人も採用できてない。女の子の質は落としたくないし、かといって量が足りないと営業が出来ないし、悩ましい。斉藤から「スキャンダル新幹線、まもなく発車です!」って電話が来たけど、「ごめん、やめとくわ。」と断った。もうちょっと気の利いたことを言えば良かったかな。

でもな、俺、もう先約があるし、忙しいねん。

※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。