この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第八十六話「続・面接」

time 2016/02/18

第八十六話「続・面接」
 やっと冬の寒さも落ち着いて、春の陽気が感じられるようになってきた。朝夕は冷え込むから、何を着て出れば良いのか迷うけど、今日はコートは必要なさそうだ。朝から、昨日と同じ喫茶店で、昨日の朝と同じ席に座って、面接の女の子が来るのを待つ。
 
 九人目は、アイちゃん。厚手のセーターの上からでも分かる明らかに巨乳の女の子。滋賀県の琵琶湖のほとりに実家があり、京都で働きたくて仕事を探しているとのこと。昨日の女の子は留学したいと言ってたけど、この子は高校時代に留学していた経験があるらしい。良く言えば、明るくて積極的な子なんだけど、俺の話を全く聞かずに、ずっと自分のことを話している。こういう子は、俺の店には要らないな。不採用。

 十人目は、ヨウコちゃん。昨日のヨウコちゃんは、洋子ちゃんだったけど、今日のヨウコちゃんは、陽子ちゃん。まぁ、どうでも良いけど。この子は、ファッションヘルスで働いたことがある子。昨日のヨウコちゃんと同じく、条件が合わず、面接終了。不採用。風俗に対して、男を騙して金を巻き上げる仕事だと考えているフシがあり、言葉の端々からそれが感じられたから、そもそも採用できないけど。 

 移動するのも面倒だから、昼飯も、ここの喫茶店で食べる。とはいえ、ひとりで食べるのも味気ないので、どうせ暇している吉江を呼び出した。
 
「女の子の面接、俺もやらせてくださいよ。」
「お前に、何が分かんねん。」
「酷いなぁ、ヒロ兄。俺も女の見る目は・・・。」
「はい、不採用。」
「そんなぁ。」
 
 持つべきものは、かわいい後輩。こういう何気ない会話をしていると、気持ちが休まる。女の子の面接って、ただ若い女の子とオシャベリしてるだけに見えるけど、ちょっとした細かな仕草とか、表情とかを見逃さないように集中しているから、結構、精神的には疲れるねん。さて、午後も、頑張ろ。
 
 十一人目は、マキコちゃんなんだけど、木屋町に来るのが初めてらしく、この喫茶店まで辿り着けず、何度も電話をしてきた。電話口で「申し訳ございません。」と繰り返す声は、めっちゃ可愛かったけど、横綱の曙みたいな容姿の子が現れたから、「もう次の子が来ちゃうから。」と言って、お引き取り願った。実際、もう次の子が来る時間だし。
 
 十二人目は、二十八歳の元OLのクミコちゃん。残業続きの職場に嫌気がさして、新卒で入った会社を辞めたらしい。どうして風俗で働こうと思ったのかと聞くと、自分の可能性を試してみたいと、就職活動みたいな返答をする。でも、俺、この子を、風俗雑誌の広告で見たことがあるねん。他店の探りなのか、この子が店を替えようと思ってるのか分からないけど、面接で嘘をつく子は、不採用。
 
 十三人目は、サチコちゃん。俺の偏見かもしれんけど、サチコって名前の女の子って、不幸そうな子が多い気がする。このサチコちゃんも、まさに俺の想像通りのサチコちゃんで、貧乏神の恋人みたいな顔と雰囲気で、開店早々に店が潰れそうやから、不採用。顔は可愛いねんけど、どうしてもこの子は採用したらアカンって、俺の直感が囁くから、ごめんな。
 
 十四人目は、リョウコちゃんと、その友達。店舗ではなくて、喫茶店で面接と言うのが怪しいと思って、友達を連れて来たらしい。緊張しているのか何なのか、やたらと風俗業界に対する偏見と、男は馬鹿だってことばかり熱弁する。こんな子に接客されたくないわ。もしも自分が客だった場合に、初対面でどう感じるかと言うのが、とても重要な判断基準。不採用。
 
 十五人目は、大阪生まれ大阪育ちのマイちゃん。生命保険会社に就職したけど、営業が辛くて三カ月で辞めたらしい。さすが営業職として採用されただけあって、話が面白い。前のリョウコちゃんとは対照的に、この子と一緒に過ごす時間は楽しそう。会社を辞めたことを親に内緒にしているから、自分の生活費を稼がないとマズいんだって。ええやん、採用。俺、やっぱりマイって名前に弱いんかも。
 
 よし、今日の面接は、これで終了。七人面接して、採用は一人だけか。辛い。昨日と合わせても、まだ三人やで。開店までには、三十人は集めたい。このペースで行ったら、百五十人以上も面接せんなアカンやん。求人広告の掲載も増やして、面接の数を増やすしかないな。まぁ、疲れたし、飲みに行こ。

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