この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第八十三話「三千万」

time 2016/02/15

第八十三話「三千万」
 やると決めたら、突き進むしかない。早く店を開店させて、最初のお客を迎え入れたい。アルバイトから始まったピチピチホームでの経験を、自分の店で活かせる日が来るなんて、本当に夢のようだ。でも、俺の気持ちとは裏腹に、開店までの準備は思いのほか大変で、まだ開店日のメドさえ立っていない。

「ほんまに、これでええねんね。」
「はい、先生。」
「こんなんで儲かるんかいな。」
「はい、先生。これでいきます。」

 吉江のオヤジさんから紹介してもらった行政書士の先生との打ち合わせも、これで五回目になる。山崎先生という、この界隈では有名な先生で、風俗営業の店舗のみを専門にしている行政書士だ。店舗の名義変更などの手続きや、警察に申請する店舗内装の図面作成などの一切を、先生に依頼している。

 トイレやキッチンなどの設備のほか、ソファやテーブルの大きさ、高さも、警察への届け出の対象となる。実際にソファを並べてから、不備を指摘されて許可が下りなければ、やり直しになってしまうから、この事前の打ち合わせが重要なのは分かっているんだけど、早く開店したいという思いが俺を焦らせる。

「もっとソファを詰め込んだ方がええんちゃうの?」
「いや、先生、これで良いんです。」
「あとで変更したら時間の無駄やで。」
「わかってます、先生。」

 先生が心配そうに何度も確認しているのは、店のソファの数だ。この物件で前に営業していたザウルスでは、ニ階と地下にそれぞれ十二のボックス席を作っていたのに対して、俺の店では、フラットタイプのソファを合わせて十一席しか置かない。本当にこんなので利益が上がるのかと、先生は訝しげだ。

「まぁ、ワシは手続きをするだけやからな。」
「心配してもらって、ありがとうございます。」
「ほんなら、これで手続きを進めるからな。」
「よろしくお願いいたします。」
「よっしゃ。ほな、また連絡するわ。」

 店をやろうと決めた日から、俺の見た目にも変化があるようで、サエコからは「ヒロキさん、仕事を始めてからカッコ良くなったわ。」と言われている。カッコ良いなんて言ってもらえたら、めっちゃ嬉しいやん。しかも、三ヶ月連続でナンバーワンのキャバ嬢から言われるんやから、なおさら嬉しい。

「ほんま喋りが上手なったなぁ、お前。」
「ヒロキさんのおかげですよ。」
「また、上手いこと言うて。」
「いや、ほんま、ヒロキさんに色々と教えてもらったおかげやもん。」
「まぁ、金もめっちゃ使ったしなぁ。」
「今日も、ドンペリお願いします!」

 自分の飲み代をちゃんと覚えてるわけでもないけど、たぶん仕事を休んでいた一年半で、三千万円くらいは飲んだ。我ながら、良くもこれだけ飲めたものだ。有森裕子じゃないけど、自分で自分を褒めたい。これからも、ずっと飲み続けられるように、俺の店を成功させなければ。

「そろそろ帰るわ。」
「うそぉ。ヒロキさん、飲み足りない。」
「また、来週、来るから。」

 仕事を始めたら、もうバカ騒ぎして遅くまで飲んでられへんから、早めに家に帰る。いや、嘘。つい二日前、近況の報告と商売繁盛のお願いで伏見稲荷大社に行った時に、東京から観光で来ていた女の子をナンパしたら、さっき「一緒に飲みませんか?」って電話がかかってきてん。やっぱり、サエコの言うた通り、俺、カッコ良くなってるんかもしれんな。

「ノブコちゃん、連絡くれてメッチャ嬉しいわ。」
「わたし、マナミですけど。」
「あ、ごめん。マナミちゃん。」
「もう、ひどいよ。」
「ごめん、ごめん。」

 俺としたことが、女の子の名前を間違えるなんて、大失態だ。ナンパしたとき、二人連れだったから、名前を勘違いしてケータイの番号を登録してた。正直なところ、二人のうちのどっちから誘われたのかも分からんかったんだけど、可愛い方の子だったからラッキー。さぁ、今日も飲むで!

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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 


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