この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第七十八話「サエコ」

time 2016/02/08

第七十八話「サエコ」
 いつも通りの一番奥の半個室になったソファ席に座って、気分が良い。オープンから毎日、一日も欠かさずに来ているのに、「今日は他のお客様のご予約がありまして・・・。」なんて言うもんだから、ちょっとムカついたけど、「あの席がアカンのやったら帰るで。」と軽くゴネたら、ちゃんと席を開けてくれた。

 シャンパンでも、ワインでも、ウイスキーでも、ブランデーでも、店から薦められるままに、酒を高いやつから順番に注文したってんねんから、座りたいところに座らせてくれっていうワガママくらいは言わしてもらうで。

 祇園の“すえよし”で肉の塊をほおばってるときはセーターとデニムのミニスカートだったサエコが、ドレスに着替えて来た。黄ばんだような白の薄っぺらいドレスがみすぼらしかったから俺が買ってあげたドレスは、純白に綺麗な細工が施されていて、サエコの美脚を一層際立たせる。めっちゃいい感じやん。

「ヒロキさん、今日も飲もう!」
「おう、飲め飲め。店の酒を飲み尽くそ。」
「景気づけにシャンパンええかな?」

 ピチピチホームを辞めて、シズエとの離婚も成立した俺は、相変わらず、昼はビリヤード、夜は祇園という生活を送っている。学生時代に戻ったかのような日々は、めっちゃ楽しい。もう約一年くらい、なんも仕事してへんけど、別に無理してヤル気を出す必要もないなぁと、最近では仕事のことを考えるのを止めた。俺、エンジンかかるのメッチャ遅いねん。

「なぁ、サエコ、やらせてよ。」
「おーい、飲みが足らんとちゃうの!」
「なぁ、頼むわ。」
「わたし、シュワシュワするやつ、もっと飲みたい!」
「はいはい。ええよ。」

 俺のホームグランドは、やっぱり祇園のラウンジだから、鳴り物入りでオープンしたキャバクラ“ル・シャネル”にも、特に関心はなかった。とはいえ、新しいもの好きだから、とりあえず見に行ってみようかと、克己と一緒に冷やかしに来たら、最初に付いてくれためっちゃ美人で盛り上げ上手なサエコと意気投合してしまって、そのまま店内指名。次の日からは、斎藤からのスキャンダルの誘いも断って、同伴からの本指名を六日連続で繰り返している。

「ヒロ兄、もう顔が真っ赤やんか。」
「お前ら、来るの遅いねん。」
「みんな仕事してんねんから、そんな早ようから来られへんって。」

 不動産屋の吉江と、何の仕事をしているのか分からないけど常にスーツ姿の石井が来た。斎藤も誘ったけど、ボックスゴーゴーしてから合流すると言っていたから、もう少し後になりそうだ。石井についた女の子が、タレ目でエロそうな顔をしてて気になるけど、やっぱりサエコの方が、格段にかわいいな。

「ヒロキさーん。私、酔っぱらいました。」
「お前、ペース考えて飲めや。」
「ごめんなさい。」

 飲み屋で働いた経験がなくて、この”ル・シャネル”で初めてキャバ嬢になったサエコに、色んなことを教えてあげるのが面白い。これまで、仕事は別として、プライベートで飲みに行く店で、俺についた女の子を育ててあげようなんて思ったことは無かった。俺も、オッサンになったんやなぁ。もう三十路やし。

「あ、そう言えば、吉江。あれ、どうなったん?」
「ちょっと待ってて。今、詳しいこと調べてるから。」
「ええよ、暇なときで。急いでないから。」

 これも別に、サエコとか他の女の子に聞かれても大丈夫な話なんだけど、何となく仕事の話を、あれこれと隠し事のように話した方がそれっぽい気がして、ただカッコつけてるだけだ。

「ほら、飲むぞー!ヒロキさん、カンパーイ!」
「もう、サエコ、無理すんなって。」
「楽しいから、イイでしょ!カンパーイ!」
「よっしゃ、飲もう!乾杯!」
「ごめん、吐きそう。失礼します。」

 なんやねん、こいつ。めっちゃオモロイやん。

 

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※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。
 


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