この男、猥褻につき

夜の連続ブログ小説(ほぼ完全ノンフィクション)

第百二話「攻め」

time 2016/03/11

第百二話「攻め」
 楽しい新婚生活だ。俺が気を使って夜遊びを控えめにしていたら、サエコから「ちゃんと夜の付き合いも大切にするように。」と言われた。まぁ、夜の付き合いって言っても、スキャンダルで女の子のおっぱいを揉むようにと言ってるわけじゃないだろうけど。
 
「結婚して、面白くない男になったって言われたくないし。」
「クソ真面目な男になるかもしれんで。」
「そんなヒロキさん、嫌やわ。」
「分かった。不真面目に頑張るわ。」
「なにそれ、ちょっと違う気がするけど。」
 
 こんな調子で、サエコとの日常生活が始まった。俺がどんな仕事をしているのかは、もちろん知っているけど、それでもシズエのように嫉妬するわけでもなく、ただ俺の好きにさせてくれる感じ。めっちゃ良い女やわ。
 
「山下さん、派閥争いのやつ、どうですか?」
「今は、ちょっと落ち着いてるかな。」
「でも、やっぱり、続いてるんですね。」
「そら、そうや。無くなれへんよ。」
 
 俺がハワイに行って不在の間に、ひと悶着あったらしく、女の子のシフト表にいくつもの変更があったりして、相変わらず、山下店長は苦労しているらしい。俺は俺で、いわゆる店長派と呼ばれているミヨちゃんグループとも、オーナー派と呼ばれているケイちゃんグループとも、均等に話をするように心がけている。この絶妙なバランスの舵取り、面倒くさい。
 
 店内の派閥といえば、俺が初めて行った歌舞伎町のファッションヘルスでも、古株のグループと、少し若そうなグループが明らかに分かれていて、客の立場から見て、かなり違和感を感じたものだ。そうそう、俺のマイは、どちらのグループにも属することなく、ただ下を向いて読書していた。
 
「ちょっと、山下さん。」
「はい。」
「あのな、どっちにも属してない女の子っておるん?」
「もちろん、いますよ。」
 
 店内の二大派閥にばかり気を取られて、どちらにも属していない女の子が肩身の狭い思いをしていないかと、ふと心配になった。マイの場合、争いごとには我関せずで、淡々と仕事をこなしていたけど、もしかしたら、険悪な雰囲気に耐えかねて、店を辞めてしまう女の子が出てくるかもしれない。本当にケアするべきなのは、そんな子たちじゃないかと思った。
 
「分かった。ちょっと気にしてみるわ。」
「お願いします。山下さん。」
 
 このところ、女の子たちの派閥争いに触発されたわけでもないけど、山下さんとの関係が少し良くない。だから、オーナーと店長の関係を再構築するためにも、二人で中立派の女の子たちを盛り上げてみるもの良いかもと思った。ちょっとした思いつきだけど。
 
 あと、もうひとつ、やってみたい思いつきがある。ピンサロの営業としては、絶対に許されないんだけど、店内にお客さんが使えるシャワーをつけたい。山崎先生からは「内装をイジったらアカンで。」と厳しく言われているけど、まぁ大丈夫やろ。シャワーひとつくらいバレるわけないやん。
 
「田附さん、やめといた方がいいんちゃいます?」
「大丈夫やって。」
「そうですかね。」
 
 オープン当初は、あれだけ元気だった山下さんに覇気がない。今のままでも十分に売上が上がっているのは分かるけど、まだまだ一年も経っていないんだから、もっと攻める姿勢が欲しい。いや、店長が守りに入るんなら、オーナーの俺がガンガン突っ走ったんねん。
 
 思いついたが吉日、すぐに吉江から知り合いの業者を紹介してもらって、夜間工事で二階にシャワー室を作った。僅か二週間足らずで出来たから、吉江は自慢げだけど、あいつは別に何もやってないやん。
 
「昨日、めっちゃ評判良かったよ、田附さん。」
「そうやろ、シャワーがあったら気持ちええもん。」
「そうですね。」
 
 シャワー設置初日の営業で、お客様からの反応を確認した山下さんが、嬉しそうに報告してくれた。俺は、お客様からの良い反応に喜んでいる山下さんを見て、とても嬉しい。そう、俺たち風俗業界の人間は、お客様が満足してくれる姿を見て、素直に喜ばんなアカンねん。
 
「田附さん、あのう。」
「どないしたん。」
「警察が来ました。シャワー付けたやろって。」
『猥褻』連載100回記念Tシャツ
40644294

※この物語は、主人公の回想に基づき、だいたい8割くらい真実のフィクションであり、実在の人物とは一切関係ありません!とは言い切れません。

※夜の連続ブログ小説ということで、毎週月曜日から金曜日の夜8時(日本時間)に、最新話をアップいたします。毎晩読んでいただくのもよし、ある程度まとめて読んでいただくもよし、ご自由にお楽しみください。


sponsored link